第76話 オッサン齢53歳にして掌返しを知る 2

 翌日からテレビでの報道が一変した。

 突然探索者側に立った擁護報道ばかりになったのだ。

「こんなに変わるもんか?」

「剣崎さん達探索者が取ってくる素材って、何処が買い取ってるっすか?」


「そりゃ、協会が全部買い取ってるだろ」

「そっすね、その素材はありとあらゆる分野の企業に提供されてるっす。

 テレビ局のスポンサーやってる企業に探索者批判する番組のスポンサーするなら素材供給はやめるって話したところ、番組のほぼ全てのスポンサーが降りるって話になったっす。

 間に入ってる広告代理店が口から泡飛ばして怒鳴り付けたらしいっすよ」


「あぁ、それはやばいな」


「あと、今のテレビ局って不動産収入が全体の収入の5割以上あるんすけど、探索者協会は今回の番組での扱いを受けて、今後氾濫その他のトラブルがあってもテレビ局が関連してる地域では一切の活動をしないって表明するって通達したらしいっす。

 専門家の試算では不動産の資産価値が3分の1以下に下落するだろうって話っす」


「それはテレビ局も全面降伏するしかないな」


「その代わりのターゲットとして、雑誌社と地域住民代表に矛先が変わったわけっすね」


「ワイドショーでのゲスと低能発言もだいぶ問題になったしな」


「急遽出演者変更になったらしいっすよ。

 あれで視聴者の意見もだいぶこっち寄りになったみたいっす」


「チューバーの方も突然謝罪動画出たけどどうしてなんだ?」


「あー、アレはあいつの知り合いの探索者にめちゃくちゃ怒れたのと、虚偽の動画を流した事で配信アカウントの停止するって警告文が届いたのと、損害賠償請求するっていう手紙を協会が送ったからっすね」


「個人でそれだけやられれば、大人しくなるか」


「ネットで騒いでた奴らも片っ端から開示請求出して、ゴリゴリな奴らがお話しに行ってるっす」


「開示請求ってそんな簡単に取れるのか?」


「費用気にしないなら余裕っすよ、今の人ってほとんどがスマホで書き込むから、どこで書き込んだかまで簡単に調べられるっす」


「え、俺位置情報オフにしてるけど、それでも分かるもんなのか?」


「電波受発信した時点で位置は把握されるっすよ、じゃなきゃ電話出来ないっす」


「そうなんだ」


「ただ、ナカダニだけがノーダメージらしいのが不思議なんすよね」


「あぁ、あいつは文明の機器使えない男だからな。

 聞いた話だが、20年くらい前になるが母親のキャッシュカード盗んで金おろそうとしたが、ATMの使い方分からなくて銀行から親に連絡入って親にヤキいれられたからな、今でもATMは女房に操作させてるらしいぞ。

 もちろんスマホもまともに使えないし、SNSも掲示板も一切見れない。

 だからネットの世界で何言われてもノーダメージだし、元々嫌われ者だから周りに環境も何も変わらないんじゃないか?」


「ある意味最強っすね、しかし、20年前言われて子供の姿でイメージしたっすけど、よくよく考えたら剣崎さんと同い年だから30過ぎでの話じゃないっすか!」


「ある意味有名人だからな、エピソードには事かかない男だよ」


「なんか、あの人だけは何しても死なない気がするっす。

 あ、そうだ、雑誌の件なんですけど大々的に謝罪広告出させるのと、お金貰うのどっちが良いっすか?」


「そりゃあ、お金だろう、いつも思うんだが謝罪広告って意味あるのか?

 どんなに謝罪広告だしたって、雑誌側にはノーダメージだろ?」


「今回は各新聞社と北海道の地方誌とJRの中吊り広告全部で謝罪させるらしいんでノーダメージではないらしいっすよ」


「うーん、それだとしても1円の得にならないしなぁ、借金返し切りたいし」


「千紗さんの借金1億切ってるっすけど、いっそ2億全部雑誌社に払わせるっすか?」


「差額はこっちに返して貰えるのか?」


「そっす」


「それは嬉しいけど、そんな簡単に2億も払うのか?」


「あーそれなんすけど、ちょっと別口でクエスト受けてもらえれば、2億は問題ないっす」


「なんか嫌な予感するな」


「日当は参加者全員1日10万、確保した魔石は全て買取50%増し!さらに食事代移動代は全て協会負担!」


「で?」


「雑誌の取材クルーとテレビ局に取材クルー「却下!」


「待つっす、待つっす、このクルー達は今回騒動の原因になった奴っす」


「余計ダメじゃねぇか!」


「違うっす、この契約にクルーの人命保護の契約入ってないっす」


「いやぁ、流石に殺すのはなぁ、こいつら殺すのに3バカ生かすのか?って話じゃないか?」


「あ、殺さないで良いんすよ、保護の義務が無いだけっす。

 死にそうな目にあわせてお灸すえるのがメインで間違って死んじゃっても文句言われないよって話っす」


「部位欠損どうする?」


「あー、しゃーないんじゃないっすか?」


「んーせめてクラス取得させて耐久力上げてくれないと厳しいなぁ」


「一緒にレベル上げたら一気にレベル上がって、前みたく調子乗るかもっすよ」


「流石に氾濫の中に突っ込むのに、そんな事したら見捨てるよ。

 あ、氾濫の鎮圧に行くんだよな?」


「そっすね、じゃあ、探索者のクラス取得させてクルー連れていくで良いっすか?」


「うーん、まぁ、それで借金無くなら」


「あ、そうだ!全員にパーソナルクラス取らせるのどうっすか?」


「正規の手続きで?」


「まさか、協会の負担なんか無しっすよ、全員2億の借金背負ってもらうっす」

 笹かまがめちゃくちゃ悪い顔してた。


【後書き】

お読み頂き、ありがとうございます。

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