第65話 笹かま齢17歳でパーティを組む
翌日から、篠塚さんと合流してパーティを組むことになった。
篠塚さん以外に2人いる。
「紹介しよう、飯田君と坂間さんだ」
「飯田です!よろしく」
そう言って握手を求めてきた男は篠塚さんと同じくらいの30代前半に見えた。
白い歯がキラリと光そうな雰囲気で、今も白のスーツ姿にボルサリーノの帽子をかぶっている。
絶対にダンジョンに入るのには間違った格好だ。
だがそれが似合っている。
ジェームスボンドに憧れている人みたいに見える。
「あ、さ、坂間です、よろしくお願いします」
そう言ってペコペコ挨拶する、しょぼくれたオッサン。
背も小さいし、頭頂部も禿げてる。
いくつだろう?40代?50代?
「しばらくは4階でコボルドを狩るぞ、そして仲間の数を増やしたら、5階だ」
「人数が多ければ、向こうもハイエナを諦めるだろうからね」
篠塚さんの言葉に飯田さんが補足する。
こうして数日が経った。
篠塚さんと飯田さんがリーダー、サブリーダーのような立ち位置で休憩中などは頻繁に話し合いをしているので、自然と俺は坂間のオッサンと話をするようになった。
「オッサンっていくつなんすか?」
「あ、うん、37だよ」
「ひゃー、もっと上かと思ってたっす」
「あ、うん、よく言われる」
どこか媚びたように感じる笑いかたをするオッサンだった。
「やっぱ、家族はいないんすか?」
「あ、いや、一応姪がね、1人いるんだけど、それだけかな」
「いくつなんすか?その姪って」
「2つ上だから39かな」
「姪なのに歳上なんすか?」
「歳の離れた異母兄のね、娘なんだ」
「そうなんすね」
こんな世間話ばかりしていた。
飯田さんはコミュニティ能力がめちゃくちゃ高く、あちこちから人を集めてきてあっという間に、俺たちは15人もパーティになった。
そうして、5階のヴァルチャーでレベル上げしていると、先行組がついにボスを破って下の階に移動したという情報が入った。
ハイエナが出来ないと判断した先行組が、階を移動してアドバンテージを確保しようと動き出したらしい。
「俺たちも続くぞ」
対抗するかのように俺たちも下の階に移動することにした。
だが当時は碌な装備もない時代だ、ボスを突破するに2人死んだ。
それでも、2人犠牲になったくらいでボスを抜けれたとみんな思っていた。
ボスを抜けて少し経った頃に、スマホが支給されアプリを起動して中に入るように国から言われた。
伝達者の知識を転用して開発したアプリらしい。
そのアプリには、自分のクラス、スキルが載っていた。
「へー、パーソナルクラスって、パーソナルクラスのなんとかみたいに皆んな違うんっすね」
「あーそうだ、ダンジョンのプレートも何か干渉して、ちゃんと俺たちが理解できる文字で名前が出るようになったらしいぞ」
篠塚さんがどこからか仕入れてきた情報を共有してくれる。
俺たちはこのパーティの幹部のようになっていて、基本的に俺たち4人とそれ以外で分かれて話をする。
上下関係を明確にした方が良いという飯田さんの案だった。
「あー、あの訳の分からない模様って文字だったんすね!連れていかれて、パーソナルか?コモンか?って説明してもらうとかじゃ無くなるんすね」
「え、あ、私の時は何も聞かれずここ押せって言われましたよ」
坂間のオッサンは完全に舐められてたな。
「オッサンはクラスなんて書いてあるんすか?」
「あ、えーと、オールドワンだね」
「オールドマンって古い男ってことっすか、まんまオッサンじゃないっすか!」
まんま過ぎて俺は爆笑した。
「え、あ、マンじゃなくてワン…」
オッサンが何か小声で言ってる。
「え?なんすか?」
「あ、いや、そうだね、私にピッタリだね」
ちょっと困った感じにオッサンは笑った。
「飯田さんはなんだったんすか?」
「…」
「飯田さん?」
「あ、あぁ、弁論者だな」
「飯田さんっぽいっすねぇ」
「そうだな」
「篠塚さんはなんすか?」
「求道者だな、仏教とかで悟りを開く修行してる人なんかに使う言葉だな」
「あーなんか雰囲気あるっすね」
「そういうお前はなんだったんだ?」
「饗談っすね、さっぱり意味わからんす」
「確か忍者の別名だったはずだぞ」
飯田さんがそう教えくれた。
「え!じゃあ俺も水遁の術!とか使えるようになるっすかね?」
「んー確か、饗は饗宴の饗で宴会のこと、談はそのままおしゃべりのことで、宴会して楽しく会話する忍者で、何か戦闘するようなのじゃなかったはずだ」
「へ?歌って踊れる陽気な忍者って事っすか?」
「そんな感じだな」
「なんか強そうじゃないっすね」
「強いっていうより便利ってイメージだな」
「ま、何でも良いっす、ほどほどに頑張るっすよ」
この後も俺たちは順調に成長し、ダンジョンを攻略していった。
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