第60話 オッサン齢53歳にしておかしな依頼を受ける。

 翌朝いつもにように受付に行くと笹かまと白い3兄弟が揉めていた。


「だからぁ、何でそっちの都合に合わせなきゃならないんすか!

 そんなに行きたいなら恵庭から手下呼んで勝手にやればいいじゃ無いっすか!」


「何だその態度は!落ちこぼれの協会員風情のくせして!俺たちに意見するのか!」

 顔が似ていて昨日話してた奴なのか別の奴が言ったのかは分からないが、2人もそれを止めようとしない所を見ると、こいつらって全員選民思考強いようだな。


「おはよう」

 笹かまと目があったので挨拶だけはしておく。

 この3人には出来るだけ関わりたく無い。


「おー!お前ら指名依頼してやるから、今からダンジョン潜るぞ」


 ???

 話が見えなすぎる。

 思わず笹かまを見てしまった。


「あー、こいつら「誰がこいつらだ!」うるさい!今説明してるんだから黙っとけ!」

 なんか、話が長くなりそうだな。


「時間かかりそうだから、戻ってきてからで良いか?」


「何を言ってるんだ!我々からの依頼を先に終わらせるのがスジだろう!」

 いや、受けてないんだが。


「じゃあ、その指名依頼は断ります。

 では失礼」


「おい!待て!そんな事が許されると思ってるのか!」

「あれ?指名依頼って拒否権なかったっけ?」

 笹かまを話を振ってみた。


「有るっすけど、内容は聞かないとダメっすね」


「そうなんだ、じゃあ聞くよ」


「たいした話じゃ無いっす、21階でレイス出たんで、慌てて戻って来てモンスターリスト確認したら自分達で突破出来なさそうだからキャリーしてくれって話しっす」


「あれ?対策アイテム用意するって言ってなかったか?」


「謎の妨害が入って、再来月まで来ないっすね。

 緊急で何処かのダンジョンで必要になったらしいっすよ」

 笹かまがニヤニヤしてる。

 あーそう言うことね。


「自分で自分の首絞めたって事か?」


「まーそんなとこっす。

 だから、恵庭から手下呼べって言ってるんすけど、向こう的にも緊急で集めたアイテムを他に回すってのは流石に誤魔化せ無くなるんでやれないみたいっすよ」


「でも、魔法戦士って魔法使えるんじゃ無いの?」


「使えるっすけど、基本戦士よりなんでMPそんなに多く無いっす。

 あと全員火属性の魔法所得してるっす」


「それは全員火属性しか取れなかったって事か?」


「違うっすよ魔法が使えるクラスは特殊な奴は別っすけど、クラススキルとして、好きな属性1個選んでその魔法使えるっすよ。

 クラススキルなんでクラス辞めたら成長しなくなるっすけど、それで魔法使ってる人もいるっす」


「てことは、全員火を選んだってことか?」


「そっすね」


「雷は選ばなかったんだ」


「混合魔法は基本選べないっす」


「なるほど、でも同じ属性ばかりなのは対応力落ちるんじゃ無いか?」


「植物系に強いんで、植物ばっかり狩ってたんじゃ無いっすか?」


「あれ?結構レベル高くなかったか?」

 中層であそこまでレベル上げられないと思うんだが。


「2年前にレベル成長薬っていうクッソ高いアイテムの紛失事件があったっす。

 しかし公に出来ないとかで、うやむやになったんすけど、そのすぐ後っすね急にこの3人が台頭してきたの」


「何だ!俺たちが何かしたっていうのか!証拠はあるのか!」


「無いっすよ、別になんかしたとか言ってないっすよ。

 たまたま、薬が紛失した時期と同じ頃に3人が活躍しだしたってだけっす。

 そもそも、薬を盗むにしても協会側の人間じゃなきゃ無理なんで、探索者側に犯人は居ないと思うっすよ」


「そうか、疑って無いなら良いんだ」


「バカっすねー」

 俺にだけ聞こえるくらいの声量で、ボソっと呟いた。


「MP低いだけならMPの回復ポーションで何とかならないのか?」


「ウィルオーウィプスとファントムが無理っすね。

 あと、イビルアイも無理じゃないっすか?」


「空飛んでるもんなぁ」

 他は浮いてるって感じだけど、イビルアイだけは明確に飛んでる。

 しかも攻撃も遠距離メインでそれほど頻繁に噛みつきしてこないからなぁ。


「依頼料はいくらなんだ?」


「さぁ?それ以前の段階で話止まってるんで、分からないっす。

 いくらなんすか?」

 3兄弟のどれかに笹かまが聞いた。

 顔が似てるし、興味なさすぎて覚える気がないせいか、どれがどれだったかすぐ分からなくなる。


「30万くらいで充分だろ?」


「寝言は寝てから言って欲しいっす。

 あのモンスター等のキャリーの相場は1フロア100万、ボス討伐までするなら別途200万っすよ。

 そもそものアイテムが使い捨てなのに1個10万するんすよ、30万なら3体まで倒したらそこからは自力で倒すっていうならそれで良いっすよ」


「じゃあ、価格は100万として、レイスとワイトは自分達で倒す。

 そこから、3フロアだけの依頼なら安く済むだろ」


「普通はそういうやり方はマナー違反っすよ。

 キャリーしてくれる人に失礼です」

 ヘラヘラ笑いながら、これみよがしに笹かまが言う。

 やられた方はムカつくだろうなぁ。


「グッ…うるさい!さっさとそれで依頼受けさせろ!」


「こんな事言ってるんすけど、そうするっすか?」


「こちらの用事が全て済んでからなら別に受けても良いぞ」

 ちょっと、アンデッドのいる所歩くだけでお金貰えるならやるに越した事ない。

どのみち、今の段階でそこで動き止まってるなら、どう足掻いても俺たちを妨害するのには間に合わないだろうし、笹かまの態度が受けておけって言ってるように見える。


「それなら遅いと言ってるだろうが!」


「うーん、じゃあボスだけ倒させてくれたら受けても良い。

 その代わり、参加してるみんなに今は8000円相当のアイテム渡してるから、1人8000円補填して欲しい」


「うむ、わかった!さっさと倒してこい!」

 ボス倒すのを妨害するために来てるのに、さっさとボス倒してこいって。

 もう目的見失ってるな。


「じゃあ、3フロア分で1100万請求するっすね」


「ちょっと待て!100万じゃなかったのか!」


「何言ってるんすか、1人100万に決まってるじゃ無いっすか、もうサイン貰ってるっすよ?」


「ちょっちょっちょっと待て!無しだ!もう一回金額下げて契約しなおせ!」


「契約締結後のクレームは完全にルール違反っすよ?

 明確にペナルティ与えるっすけど良いっすか?」


「く…分かった…そのままで良い」

 笹かまがめちゃくちゃ悪い顔で笑ってた。

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