第59話 オッサン齢53歳にしてやっかむ

 受付まで戻って来ると、20代〜30代前半くらいの若い男が3人が居た。

 悔しい事に全員イケメンだ。

 爆発すれば良いのに。

 それを見た笹かまが盛大にため息を吐く。


「あんのババァ、次から次へと!」

 笹かまが小声で呟いたが、俺にはしっかり聞こえた。

 笹かまがここまで感情的になるの久しぶりに見た気がする。


「やぁやぁやぁ、逢真さんこんな所に居たのかい?盾スキルさえ取れば囮としてくらいなら僕たちのパーティに入れてあげるって言ったじゃないか。

 お姉さんにもそう進言して、お姉さんからも同じ事言われただろう?

 それに盾スキル取れなくても僕たちの愛玩動物になるなら、それでも良いよって言ってあげたのに、何故こんなへんぴな所に居るんだい」


「貴方達より素敵な人に出会えたからです!

 そもそも盾で囮とか!愛玩動物とか!私の事同じ人間として見てなかった人達とパーティを組もうなんて思う訳ないじゃないですか!」


「いいかい、探索者には2種類居るんだよ。

 世のため人のためになる優秀な探索者と、生きているだけで水や空気そして食糧などを無駄に消費する無能な探索者。

 無能な探索者の君を僕たちが少しでも役に立ててあげようという優しさじゃないか、なぜ分からないかなぁ」

 なんだこの選民思考、お前ら上級市民かなんかなのか?


「そもそも僕たちより素敵な探索者なんか何処にも居ないじゃ無いか!」

 はっはっはって高笑いしてるが、イケメンのせいで似合ってやがる。

 クソ、イケメンなら何をしても良いのか!

『ただしイケメンに限る』は何処ででも有効なのか!


「貴方達より鉄也さんの方が何倍も素敵です!

 見た目で決めないでください!」

 うん、自覚してるけど、改めて俺の見た目の事言われるとちょっと泣ける。

 ダイエットしようかなぁ。


 とりあえず、俺も千紗の彼氏として、ひと言言ってやらないとな。

「あの…」

「恵庭のエース『白い雷電』がこんなところで何やってるんすか?」

 笹かまに遮られた…。


「久しぶりだね笹山君!いや、何ね我らがお姉さん坂間さんがね、随分とマナー違反してる探索者が居るのに協会の職員が全然指導出来てないと嘆いていてね、我々で指導しようとわざわざ来てあげたんだよ!」

 リーダーらしき男が芝居がかった言い方でこちらを見ながら言う。


「あーそっすか、実害が出ると言うなら申請してください。

 認めたら、以降しないように指導します」


「何言ってるんだ!マナー違反をそのまま放置するつもりか!」


「あのっすね、マナー違反とルール違反の違い分かるっすか?

 決められたルールを守って居ないなら、ルール違反で強制的に指導するっす。

 マナー違反はマナーが悪いだけで決められたルールは破って無いんす。

 他の人が、そのマナーを守らなかった人のせいで迷惑を被ったなら、他人の迷惑になるんで辞めろって言えるっすけど。

 誰も迷惑被って無いのにいちいちマナー違反だからなんて止めないっすよ」


「おかしいだろ!我々探索者は何も出来ない一般人を怖がらせて、無駄に囀らせ無いためにもルールを守るべきじゃないか!」

 こいつナチュラルに一般人下に見てるな。


「だから、ルールとマナーは別もんっす。

 1人で家で飯食べてる時にテーブルマナーできてないから飯食うなって言うんすか?

 そもそも、誰かに迷惑かけないためにあるのがマナーっす。

 誰にも迷惑かからないなら、それはマナー違反じゃ無いっすよ?

 あんたみたい人が自分で勝手に決めたローカルルールやネットで見かけたそれっぽいのを暗黙の了解だとか言って押しつけて、周りに迷惑かけるんすよ」


「何だと、このやろう!」


「恫喝するのはルール違反っすよ、別にマナー違反で問題起きたら言ってくれれば対処するって言ってるんだから、さっさとボス倒して下に行ったらどうっすか?

 あんたらが言いたいのは逆行してボス狩りしてるって話っすよね?

 それで迷惑になったって言ってきたら止めるように言うっすよ」


「すぐに下言って、徹底的に抗議してやるからな!覚えてろ!」

 そう言うとダンジョンに潜っていった。


「なぁ、あいつら誰なんだ?」

 話の流れでお姉さんの坂間ってのが恵庭の迷惑ババァってのは何となく分かったんだが。


「あぁ白井三兄弟っすよ。

 兄弟で『白い雷電』って名前のパーティ組んでるっすけど早くも無ければ、雷魔法も使えないっす。

 何となく字面がかっこいいからって付けた名前っすね。

 要するに三バカトリオっすね。

 面倒な事に見た目が良いから恵庭のババァが気に入って完全にルール違反で支援してるっす。

 そんな奴がどの面下げてマナー違反とか言ってるんだって話っすよ」


「そうなのか、それだけ支援入ってるなら強いのか?」


「恵庭ではトップっすね。

 元々のクラスは戦士、戦士、偵察者だったんすけど、いつのまにか恵庭のダンジョンクラスで1番高額の魔法戦士を3人とも取っていて、そこから一気に稼ぎ出したんすよね。

 多分、今レベル40くらいじゃないっすか…あぁ、37っすわ。

 うーん…思ったより上がって無いなぁ」

 協会のパソコンでデータを見ながらそう教えてくれた。


「しかし、そんなにレベル高いならすぐ攻略して下に来るんじゃ無いのか?」


「何度も言うっすけど、剣崎さん自分の実力過小評価し過ぎっすよ」


「まぁ、明日には泣きついて来ると思うっすよ、バカだからここのモンスターリスト持っていかないで降りていったし」


「上手くいかなかったら、上手くいかなかったで実力行使に出るんじゃ無いか?」


「それならそれで返り討ちにすれば良いっす」


「俺の装備は手加減出来ないんだって」


「え、別に良いんじゃ無いっすか?

 多分、アイツら来る時は剣崎さん殺しにくるっすよ、そういうの平気な奴らっすし。

 殺すって言うやつは、殺されても文句いえないっす。

 むしろ死ねって感じっす」

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