第57話 オッサン齢53歳で辟易する。

「中田さん、とりあえず当事者の大畑さんが居ないとどうにも出来ないんで、改めてもらって良いですか?」

 ビジネス笹かまが厄介者に提案する。


「ん、あぁ、そうか、とりあえず今日はこれくらいにしてやるから、明日ちゃんとした答え用意しとけよ!」

 そう言って、中田は帰っていった。


 まぁ、バカだから最初の恫喝と勢いで押し切れないと、次がないんだよなあいつ。

 気が弱いとか立場が弱い奴には有効だけど、そうじゃないと途端に大人しくなる。


「剣崎さん、ナカダニと知り合いなんすか?」


「中学の同級生ってだけだよ、卒業後にあったのだって2回くらいだし、まぁある意味有名人だから地元から色々聞かされれてるからそれなりに知ってはいるけど」


「そうなんすか?どういう性格なんすか?」


「見栄っ張り、努力はしない、短気、アホ、嘘つき、すけべ、空気読まない、汚い、金にも汚い、あとあったかなぁ」


「良いとこ無いっすね」


「無いね、ところで東北海道探索組合ってどんな組織なんだ?地元の友人に聞いた時は、協会の下部組織で特例としてダンジョンを1つ管理運営してるって言ってたらしいんだけど」


「んな訳ないじゃないっすか自称管理っすよ、元山師で中春別って所でHランクのダンジョン発見したんすよ、それを俺のだ言い出して協会と揉めたんすから。

 僻地のHランクダンジョン1つで無駄な労力使いたくないからって好きに言わせて放置してるだけっす。

 協会としては東北海道探索組合って名前のパーティ扱いっすよ。

 ここのダンジョン見つからなかったら俺行ってたかもしれないんでヤバかったっす」


「そういえば、ナカダじゃなくてナカダニって呼んでなかった」


「あー、協会と揉めた時にそう呼ばれてて、俺も知ってただけっす。

 ダニって食いつくと血吸うし運悪いとウィルス感染するしで迷惑じゃないっすか、でも無理やり取ろうとすると頭だけ残って傷口悪化するし、あの人規模こそ小さいっすけど道東地区でチョイチョイ問題起こしてるんすよ。

 で、そういう時にどこそこのダンジョンがナカダニに喰われたってよって言ってたんす」

 あいつらしくて笑う。


「明日あいつら来たらどうするんだ?」


「あー、あいつらのドロップ品倍額で買い取るっす」


「え、そんな甘い対応するの?」


「ただし、ナカダニ含めて全員参加限定っす。

 元高レベル探索者中田大先生がいれば、いくらでも下に降りれるっすね!

 ズルしないように俺もそっちについて行くんで、しばらく一緒に参加出来ないっす」


「それは良いけど…」

 元高レベル探索者?

 別海町は北海道で1番ダンジョンが発見されている町だ。

 全部で7箇所発見されている。

 ただ、それはここにダンジョンが集中している訳ではなく、単純に平野部が多くて広いだけだ。

 愛媛県とほぼ同じ広さの町で酪農用に牧草地が開拓されているため、探しやすいだけだ。

 県と同じ広さなんだから、県と同じくらいの見つかって当たり前だ。

 これだけ広いのだから、中春別地区も普通の市町村レベルで広い。

 歩いてどうこう出来る広さじゃない。


 なので、山師やってて、そんな簡単にダンジョンが見つかるもんじゃない。(即日見つけた俺が言うなって話だが)

 揉めたって聞いたの確か2年前だったな。


「中田って2年前に揉めてそのまま現役引退したのか?」


「山師からダンジョンクラスのハーミットってクラスと戦士と偵察者と治癒士取ってその後すぐ揉めて出禁くらって、そのままダンジョンには潜ってないっすね」

 奴らしいクラスの取り方だな、昔からなんでも出来るって自慢したい奴だしな。


「ハーミットってどんなクラスなんだ?」


「デバフ系の魔法使いっすね、ソロじゃかなり難しいし、探索者ではマイナーなクラスっすね」

 人とは違うってしたい奴が選びそうなクラスだな。

 こうやって見ると、クラス獲得って性格出るな。


「これってどのタイミングでレベル上げたんだろう?」


「山師になる前じゃないっすか?」


「え?クラス取ってレベル上げて山師になるのか?

 あり得るのか?そんな事?」


「普通ないんじゃないんすか?」

 笹かまが悪い顔で笑ってる。


「お前分かっててやるつもりだろ」


「協会には全部記録残ってるっすからね」

 笹かま、恐ろしい子!


 ー翌日ー

 俺たちが受付まで行くと、中田がいた。

「おう!てつー!待ってたんぞ!」

 いい笑顔でこっち来るけど、嫌な予感しかない。


「どうだ!俺たちと一緒にいかねぇか!稼がせてやるぞ!どうせレベルも大して上げられてないんだろ?

 俺たちはな、倍だぞ、倍!通常の買取価格の倍なんだぞ!

 俺たち東北海道探索組合は他奴らと違って直系の組織だからな!」

 こいつは大畑から何も聞いてないんだろうか?


「いや、人待たせてるし、今日する事も決まってるし」


「なんだ、お前せっかくお前の為に言ってやってるのに随分態度悪いなぁ」


「あー中田さん、剣崎さんレッサーだけどドラゴン狩れてるんで今日行くとこよりだいぶ下っすよ」


「…なんだ、レッサードラゴンくらい、あんなもん誰でも狩れるだろ!

 あんなのちょっとやり方覚えれば、単独で狩れるぞ!

 後でお前らにもどう狩るか教えてやるからよ!」

 始まったよ…俺なら余裕で出来るマウント。

 こいつ中学から全然変わらんな。


「あーその時になったらお願いするっす、とりあえず1階から順に攻略しないと下いけないんで、さっさと行くっすよ」

 大畑と笹かまを含めた6人組で中田達をダンジョンに連れて行く。


「俺たちも行こうか」

 やっと中田から解放されたので、いつものボス狩りを始める。


 どこまで降りるつもりかは知らないが、笹かま絶対あいつどこかに放置してくるつもりな。

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