第53話 オッサン齢53歳にして弟子入りを迫られる。
「はーい、午前中はこれで終わりっすー、午後1時まで自由時間になるんで探索とか自由にしてくださーい」
「よし!俺たちも行こうか?」
千紗に語りかけたつもりだったんだが…。
「兄貴!いつでも準備OKですぜ!」
いや、なんで!
思わず白目剥きそうになった。
唐辛子が付いてくる気マンマンで、腕ぶん回している。
「どう考えても、お前たちだけで適正階層周回した方がいいだろう?」
そう、お前たちなんだよね。
なぜか後ろに初期からいてくれたオッサン2人も居た。
「何言ってんでさぁ!兄貴は言わば俺たちの師匠!俺たちは兄貴の弟子みたいなもんですぜ!おそばで勉強させてもらうの筋ってものでさぁ!」
え?知らんけど?
「いつのまに弟子になった?あ、それ以前に兄貴って許可した覚えないけど」
「え!でも、兄貴と呼ばせて下さいって言った時にダメだって言われて無いですぜ」
「あーそっかぁ、ダメって言ってないもんなぁ」
じゃあ、仕方がないか。
「まぁ、それは良いとして弟子って、弟子にしてくれなんて言われても居ないし、流石にこれは俺が許可しないと無理じゃないか?」
「兄貴って事は師匠って事ですぜ!それに俺たちが勝手に心の師として仰ぐのは構わないでしょう?」
「え!あ、うーん確かに勝手に仰ぐの辞めろって言えないか」
「剣崎さんってあれっすよね、日頃ちょっと線引いて受け付けない感じなのに、懐かれたり、慕われたりすると、途端に緩くなるっすよね」
グヌヌ、弱いところを指摘された。
元々コミュニケーション得意じゃないから、好かれたり慕われたりとかしてきた人を拒否出来ないんだよなぁ。
「うん、まぁ、否定しない。
そういえば、俺2人の名前知らないや」
「あ、佐々木です。パーソナルクラスは摩伽羅です」
「摩伽羅って、インドの魚だったか?」
「はい、インド神話に出てくる神の乗り物になる魚ですね。
パーソナルスキルは水上戦闘だったんですが、今の所ダンジョンで水上で戦う機会が無くて意味のないスキルになってます」
「高橋です。パーソナルクラスは四不象です」
「封神演義の?」
「おそらく、俺の方は空中戦闘なんですが、空を飛ぶ手段が無いので、全く意味をなしてなくて」
「名前だけ聞いたら期待するよなぁ」
「「はい」」
「それで2人とも俺と一緒に行くで良いの?
経験値的にも美味しくないし、付いてきてもドロップ品の分配とかしないよ?」
「はい、それでも慣れておいた方が後々良いかなって思いますし、俺たち戦闘は正直からっきしなんで」
「唐辛子も来ても何も渡さないけど良いの?」
「俺は兄貴の生き様を心に刻みたいんで、全然構わないですぜ!」
なるほど、アツい、ウザい、考えた気配がない。
「まぁ、良いけど」
とりあえず、3人には投擲を覚えてもらうべく、接敵したら石を投げてもらい、千砂は今まで通り色々魔法を使ってもらう。
高橋君には空中機動の元になる立体機動を覚えてもらう。
笹かまいわく移動系のスキルはダッシュが獲得しやすいそうなので、それも伝えておいた。
そんな感じでここ数日順調にボス狩りをしていたのだが。
「剣崎さん、やられたっす。
今俺たちが狩ってるボスもアイテム全部半額にされたっす」
「半額!?」
「市場に潤沢に出回ったって理由っす」
「そんな俺たちが獲得した分くらいで値崩れるほど市場小さいの?」
「そんな事全然ないっすよ、せいぜい1割くらい減るくらいっす」
「じゃあ何故こんな事に?」
「あのババァが余計な事したに決まってるっす」
「証拠はあるのか?」
「無いんすけど、それしか考えられないっす!ピンポイントでウチが出してるアイテムだけ半額って異常っすから」
「証拠ないんじゃ、抗議しても無視されるな」
「悔しいけどそっすね」
「…ドラゴンのボス攻略するか…。
正直まだちょっと早いと思ってるんだが仕方がない」
「なんか気になる事あるんすか?」
「俺の堪忍スキルの回復量増えてるのは前にも言っただろ」
「はい」
「ボスのHP削り切れるか心配でね…」
「HP消費する装備使えば良いんじゃないっすか?」
「…え!あるの?」
「まぁまぁ良い値段するしレンタル出来ないっすけどあるっすよ」
「え!マジで!」
「てか、剣崎さんはどこ見てアイテム探してたんすか?普通そのスキルなら真っ先にHP消費系探すもんじゃ無いんすか?」
「地雷アイテムの所を主に…」
「なんでそうなるんすか?地雷は地雷っすよ」
「いや、俺の場合地雷の組み合わせでここまで来てるし、HP減るとか地雷かなって」
「HP減る系のアイテムは代償が大きいせいか効果も大きいのが多くて、HPが豊富なクラスには重宝がられるんでしっかり1ジャンル確立してるっす」
「そうなんだ」
「むしろ、剣崎さんが知らない方がびっくりっすわ、久しぶりそういう人だったって思い知らされましたっすわ」
「ん、なんかごめん」
「なんか探しておきましょか?」
「うん、よろしく頼む」
色々恐縮しながら今日もボス狩りから始める。
半額だからって狩らない選択肢は無い。
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