第21話 オッサン齢53歳にしてためらう。
自宅に戻って来てから色々探したが、条件に合うような装備が見つからない。
すぐに困る事ではないが、なんかジワジワと俺の探索者の活動期限が近づいてくる感じで嫌な気持ちになる。
焦ってどうにかなるような事でもないので、今は放置しておこう。
まぁ、考えてみれば俺のスキルの運用がおかしいだけで、回復量が増えるのは普通は悪い事じゃない。
クラスの説明でも耐える職業ってなってたし、おそらく耐えて耐えて、成長させて回復量が多くなって回復しながら時間をかけて戦う
っていうのが、正規ルートなんだと思う。
俺のはシステムの穴を突いたような裏技的な運用だもんな
どちらにしろ、どうにも出来ない事で悩んでも仕方がない、本格的にヤバくなるまでに稼げるだけ稼いでおこう。
いいアイテム見つかっても買えないんじゃ意味がないしな。
稼げない時期が続くかもしれない。
生活費大事。
それよりも、次の階層だ。
調べてみたら、めちゃくちゃ厄介だ。
特に俺にとって。
ジャイアントラットは複数で出るんだが、5匹群が1単位で経験値的にもこれを1体と計算するらしい。
なので、今までの階での3匹はここでは15匹になる。
俺のスキルは複数には対応出来ない。
しかもコイツら、低確率だけど絶対回避っていう1度の攻撃を100%回避出来るスキルと救援信号っていう仲間を呼ぶスキルを発動するらしい。
ベテランの上位探索者も救援信号を使われすぎて対処しきれなくなって撤退なんて事があるらしい。
しかも、ボスになると使用頻度が増えて、自分らで戦わないで呼び出した奴らをけしかけてくるらしい。
「どうしたもんかなぁ」
「どうしたんですか?」
俺の独り言に千紗が反応した。
「いやぁ、10階なんだけどさぁ」
せっかくだから、相談にのってもらおう。
ジャイアントラットの特性と俺の相性の悪さを説明した。
「同時攻撃出来るなら、手にいっぱいの石持って投げつければ何とかなりそうなんだけどね、俺のスキルはそこまで便利に出来てないみたいでね」
「そうですねぇ、私がロックスプレッド覚えたので、それメインで攻略します?」
「そればっかり使うとスキルが偏ってしまうんじゃないかい?
せっかく魔法も全属性覚えられそうなんだから、今のうちにに出来るだけ沢山覚えてほしいんだよね。
だんだんレベルも上げづらくなってくるから、上がりやすい今のうちに」
「じゃあ、救援呼ばれたら、救援に来たのに使うのでどうですか?」
「そうだなぁ、そうしようか?
でもなぁ、なんかこう、攻略にもうひとつ何かほしいんだよねぇ」
「どんな物ですか?」
「ネズミを貼り付ける粘着テープ見たいのあるでしょ、アレのモンスター版があったんだけど、高くてね。
割に合わないんだよね、それをもっと手軽に安く出来ないかなぁって」
「「うーん」」
2人で小一時間、ネット情報を漁る。
「剣崎さん、これなんかどうですか?」
「ん?どれどれ」
それはダンジョン系チューバーと呼ばれる配信者の一本の動画だった。
『スライム液で最強装備作ったった!』
内容としては、お金にならないスライム液を何とか有効活用しようって内容だった。
スライムは物理攻撃に強く、魔法攻撃に弱い。
強いと言っても大したことないので、どっちも弱いとも言えるけど、この際それは置いといて。
その特性が弱いながらもスライム液にも反映されている。
面白いのは、物理耐性に強いって部分ではなく、魔法攻撃に弱いという部分をうまく活用出来ないか?
という検証動画になっていた。
スライムは単純に魔法攻撃に弱いというだけでなく、属性ごとに反応が違う。
火属性ならカラカラに乾いてみたり、風属性なら千切れたように分離してしまったり。
そういうのを安い各属性の魔導具を利用して色々検証していたのである。
その中で、盾に見立てたベニア板にスライム液を塗って水属性を使った『とりもちシールド』と丸めた新聞紙に染み込ませて光属性で固めたコチコチソードが紹介されていた。
「面白いけどシールドにネズミ張り付くにはなぁ」
「うーんダメですよね、残念です」
「あ、いや待てよ
こっちの新聞紙染み込ませたやつ大量に作って、現地で水属性でベタベラにしてばら撒けば、良い感じにトラップとして使えるんじゃないか?」
「あ、面白そうですね!魔法もほんの少しで反応するみたいですし!」
「でもうち新聞とってないんだよなぁ…大家さんに相談してゴミに出される新聞紙分けて貰おうかな」
「それが良いですね、勝手にゴミ収集場から持ってきてご近所トラブルとかあると、面倒ですし」
「うん、明日はスライム液の回収と新聞紙に染み込ませる作業で良いかな」
「はい!」
「そして良いようなら、早めにここ抜けよう数はいるけど、魔石が安いんだよね1個30円、ドロップ品のネズミの尻尾が10円らしいから、よっぽど数稼がないと収入的に厳しそうで」
「分かりました!」
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