第13話 オッサン齢53歳にしてドヤる。
ダンジョンに向かう道すがら、俺の戦闘方法を説明する。
「というわけで、装備頼みの戦闘なので一切応用が効かないのだよ。
手加減とか時間稼ぎみたいな事は全くできないし、どんなに戦っても武器スキルを取得する事も無いと思う」
「凄い!私なんてパーソナルスキル見て絶望してすぐ他の方法考えたのに、剣崎さんはちゃんと自分のスキルをどう活かすか考えて実践してるんですね!
尊敬します!」
「いやぁ、それほどでもぉ」
やばい、めっちゃ気分が良くなる。
これはヤバい、良い意味でも悪い意味でもヤバい。
クセになる。
「それに比べて私は、本当に何も出来なくて…」
昨日の会話の時にも少し感じたけど、この子自己評価が低い。
言葉の端々に「こんな私」とか「私なんて」みたいな自分を卑下する言葉が入ってくる。
かなりの可愛らしい顔立ちなのに自分の容姿もあまり良いと思ってないようだ。
もっと、自信もって欲しいんだけど、俺が褒めるとただのエロジジィのセクハラになりかねない。
うーん、どうしたものか。
「いやいや、逢真さんだって頑張ればきっと出来るよ、俺も一緒に協力するし!
そうそう、今から行く所の職員が笹かまって奴なんだけど、結構頼りになるから、色々アドバイス受けよう!」
とりあえず、無難な励ましの言葉をかけておく。
これ以上の言葉をかけるには、エロオヤジ認定との危険なチキンレースになってしまう。
俺にそんな勇気は無い。
「ありがとうございます!
優しいんですね」
日頃褒められ慣れていないから、ただの社交辞令だろう言葉にもついつい反応してしまう。
絶対今の俺の顔ニヤけているよなぁ。
その後もたわいの無い話をしながら協会のプレハブまでやってきた。
「こんにちわぁ、笹かま君パーティメンバー連れてきたよー」
「えぇぇぇ!マジ可愛いじゃ無いっすか!何してんすか!今から通報して良いっすか?」
「良いわけないだろうが!それより少し相談に乗って欲しいんだけど、彼女の今後の成長プランだけどどうしたら良いと思う?」
「とりあえず、剣崎さんと別れて近寄らないようにするのが良いと思うっイテッ!」
「笹かま君良い加減しつこいよ、真面目な質問してる時は真面目に答えようね」
本当はゲンコツかましたかったけど、今のご時世すぐモラハラとかパワハラって言われるから、手の甲を強めにつねるだけにした。
「ちょ!やめてくださいよう!千切れるかと思いましたよ!あ、先に情報聞いてたので少し調べたんですけど、パーティですからステータス共有しますね」
笹かまの言葉使いが変わった。
なんだこいつ、ちゃんとビジネスモードになれるんだ。
あれ?もしかしてこっちが素で今までのがキャラとか無いよな?
剣崎鉄也 レベル6
クラス 堪忍者
クラス解説 ▽
強さ 11 物理的攻撃力
器用 12 命中率
素早さ 7回避率、移動速度
知性 9 魔法的攻撃力
耐久力43 物理防御
賢さ 25 魔法防御
HP 430
MP 250
パーソナルスキル 堪忍
HP50%以下の時に発動、戦闘中敵に攻撃した時にHPを1回復
能力上昇値 5レベル毎 強さ5 器用5 素早さ3 知性4 耐久力23 賢さ10
俺のステータスはレベルが6になっただけで前回確認した時と変わっていない。
結局、講習ではスキル獲得は出来ず、ダンジョンでの実践で獲得を目指すことになった。
逢真千紗 レベル1
クラス 鏢師
クラス解説 ▽
強さ 8 物理的攻撃力
器用 8 命中率
素早さ 8回避率、移動速度
知性 8 魔法的攻撃力
耐久力8 物理防御
賢さ 8 魔法防御
HP 80
MP 80
パーソナルスキル 鏢車
自身の強さの100倍の重さまで収納可能。
能力上昇値 5レベル毎 強さ8 器用8 素早さ8 知性8 耐久力8 賢さ8
ものの見事に全部8だ。
「これだけ平均なのも珍しいっすね」
あ、口調が戻った。
やっぱりこっちこっちが素なんだろうな。
「平均じゃ無いです…劣ってます。
目安は10が最低ラインって聞きました。
それに能力も上昇値も普通は合計50になるっていうのに、私は48しかないですし…」
「あぁ、それなんっすけど、能力の上昇が少ない人ッて、スキルの習得や上達が早くなる傾向があるらしいんすよ。
一応協会でのデータでは1点少ない人で2倍、2点少ない人で4倍って言われてるんす。
ただ、その恩恵がレベル上昇時にしか無いらしいんで、割と考えてスキル取っていかないと能力不足カバー出来なくて詰むって話っす」
「でも、それって逆に言えば計画的にスキル獲得していけば物凄く強くなるんじゃ無いか?」
後ろ向きな内容に聞こえたんで、慌ててフォローした。
自己肯定が低い人にマイナス面から説明とか、こいつ1回説教だな。
ほらぁ、彼女下向いて落ち込んでるじゃねぇか!
「あ、あああ、そっすねスキルをちゃんと取っていけば、優秀な探索者になれるっすよ!」
目配せと表情でなんとか俺の言いたいことを読み取ってもらう。
「当然オススメのスキルとかあるよね!」
「もちろんっす!」
あるんだ、良かったー。
「まずはコレ!」
コレ?
えっと洗濯を干す物干し竿?
「これは中層のバンブートレントがドロップする竹で作った竹槍っす!
軽くて丈夫で何より安い!
これ使って槍術覚えましょう!」
「あーなんだ、また変なギャグに走ったのかと思った」
「心外っす、わざわざ札幌の倉庫まで行ってきて持ってきたのに!
あと、これがアイテム図鑑っす、これでドロップ品調べると鑑定が取れるって噂っす」
「スマホのアプリで調べちゃダメなのか?」
「そういう楽をするとスキル生えてこないらしいっすよ」
「さらにこっからが凄いっすよ!倉庫にホコリ被って転がってたスクロール持ってきたっす!」
「おいおい、スクロールは使わない方が良いって言ってたじゃないか」
「ふっふっふ、これは全部魔法スキルのスクロールっす!
弱くて使えないって倉庫に放置されていたの片っ端から持ってきたっすよ」
「使えないんじゃしょうがなく無いか?」
「いやいや、通常の4倍っすよ!効果なくても使っていけば上達していろんな魔法覚えるはずっす!」
そう言って見せてきたスクロールは
火魔法 バーン 使用者が火傷する
水魔法 ティアドロップ 水を指先から一滴だけ出す
土魔法 グレイン 砂つぶを1粒飛ばせる
風魔法 カーム 風が少し弱まる
光魔法 ティンクル 指先が点滅する
闇魔法 ディム 薄暗くなる
聖魔法 リフレッシュ 気持ちが晴れやかになる
ものの見事に全部使いもんにならないな。
「全部やります!可能性があるならなんでもします!」
健気すぎる。
「よし、俺も協力する!早速ダンジョンに行ってれべるあげだ!」
俺は火傷用に軟膏タイプのポーションを笹かまにせびった。
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