第28話 この女神の商売に祝福を!
あれから俺達はギルドで昼食を済ませたあと、街をぶらついていた。行き先はウィズの店である。
「ねえねえ。今からウィズの店に行くらしいけど、何しに行くのよ?あの胡散臭い悪魔のところなんてあんまり行きたくないんですけど。」
俺の雇ったサクラで機嫌を直したアクアが声をかけてくる。
「用事があるんだよ。というかお前、暇なときはだいたいあの店に入り浸ってるだろうが。バニルがこの前来るだけ来て何も買わずに買える文無し女神が鬱陶しいからって、わざわざ苦情を言いに来たんだぞ。」
「この前、なんだか悪魔臭いと思ったらそういうことなのね。というか、文無し女神って何よ。ギルドのみんなから慕われて頼りにされてる私に対してなんて言うものいいなの。あのダサ仮面今度あったら浄化してやるわ!」
「ダサ仮面とは何だ。この疫病神め。この我輩をそう簡単に浄化できると思わない方がいいぞ。」
いつの間にかウィズの店の前についていたらしく、店の前を掃除していた仮面の悪魔ことバニルが声をかけてくる。
「出たわね、クソ悪魔!今まではウィズが悲しむから手加減してあげてただけなのに、私と肩を並べただなんて調子に乗ってられるのも今のうちよ。セイクリッドエクソシズム!!」
「ふん、そんなへなちょこ魔法になんざあたるか。華麗に脱皮!」
バニルの身体が崩れると、すぐさま新しい身体が地面から生え、アクアの攻撃を避ける。
「フハハハハハ。お前なんぞと同列になったところで嬉しくもないわ。そもそもご近所からの評判も最高、そこの成り上がり小僧との契約によって潤っている我輩と、サクラに褒められおだてられただけの、酒場や小僧にツケのあるような借金女神なんぞとは比べるまでも無かろうに!」
「ちょっと難しい言葉を使ったからって、頭が良さそうに見えると思ったのかしら。プークスクス。その土でできた脳みそじゃ、どれだけ頑張っても無駄よ。」
「おっと、これは失礼。汝の水のように中身のない脳みそでは我輩の簡単な言葉ですら難儀に感じてしまうようだ。これは配慮が足りなかった。能無し女神のことを甘く見ておったわ。」
「セイクリッドハイネスエクソシズム!!」
「フハハハハハ。何度やっても結果は同じであるぞ能無し女が…おい、こらっ!仮面を引き剥がそうとするなっ!!」
生え変わる隙を見て、仮面を引き剥がそうとするアクアをバニルは必死の抵抗で押しのける。
「まあいい。この女神で遊ぶのもこの辺にして、今回は小僧の方に要件があるみたいだな。」
あれで遊びだったのかよ。大悪魔と女神の戦いは割と本気で殺し合ってると思ったんだけど……ん?というか待てよ。
「今回はって言ったけど、今回以外でこいつらなんか買いに来たのか?」
「ふむ、一月ほど前にそこの女神が売りに来たな。確か、なんとかフィギュア第1弾リメイクスケスケ人形エロティーナお嬢様DXとか言う、水に濡らすと服が透ける人形を……」
「おい、バニル。そいつはまだ売ってるか?売ってるなら定価の3倍出すから譲ってくれ。」
「おいカズマ!?それは私の尊厳にかかわる。バニル!5倍出すから私に譲ってくれ!」
「毎度あり!」
「お、お前ついに自分のフィギュアに対しても欲情するようになったのかよ。」
「ち、ちがっ。ちょっと待て。距離を置くな。話を話しをしよう。」
ドン引きして引いているまわりに涙目のダクネスが必死に声を張り上げている。
そんな中俺はアクアのそばに忍び寄ると、静かに声を掛ける。
「おい、アクア。金なら出すから、ああいうのを俺に作ってくれ。めぐみんとダクネスのだ。」
「ふふふ。わかったわ。でもいいのかしらカズマさん?私のフィギュアは高く着くわよ。」
「構わない。いくらでもだそう。」
二人して下衆な声をあげながら、これまた下衆な笑みを作る。
俺の言葉に、どんな人形を作るのかうなりながら考え始めるアクア。考えてもこいつの知力じゃ焼け石に水だと思うが、こいつのものづくりの腕に関してはそれはもう目を見張る物がある。今から完成が楽しみだ。
「カズマ〜?一体何をしているんですか?なんだか、私とダクネスの人形がどうたら聞こえましたけど。」
ちっ。こんなときに限って邪魔ばっかりしやがって。
耳ざとく聞きつけためぐみんに俺は弁明する。
「めぐみん。これは俺達の思い出を残すために作ってもらうんだ。そこにやましい気持ちなんて一ミリも一切合切これっぽっちも持ってない。」
俺の言葉にめぐみんは訝しむような表情を作ったが、少し申し訳無さそうに口を開く。
「なんだかそこまで言われると逆に怪しい気がしますが……そうですね。いきなり疑うのも良くないですからね。」
「カズマさん。めぐみんフィギュアの方はパンツ見えたほうがいい?ついでに言うとパンツも脱がさられる方がいい?」
「是非お願いします。」
「カズマ!?本当にやましい気持ちはないんですよね!?」
即答する俺に向けめぐみんが叫ぶ。
「パンツだって思い出だろうが!」
「そんなところ一々覚えてなくていいですから!というかそんなにパンツがみたいなら言ってくれれば綺麗に洗ったやつを見せてあげますから。何ならあげますから!
」
「馬鹿野郎!洗ったら意味ないと以前言っただろが!というか、履いていたものを脱がせるという行為に背徳感を感じるんだ!」
「そ、そんな事を熱弁されても困りますよ。」
言い合う二人に向けて、アクアが声を掛ける。
「そんなに言うなら、めぐみんにも作ってあげましょうか?」
「ええ!?いや、私は別に……ちょっと欲しいかもです。みんなのやつをお願いします。」
途中少し恥ずかしそうに声量を下げるめぐみんを見て、今しかないと思った俺はその光景を尻目にウィズの店に滑り込むように入る。
まあ、時間が経てばめぐみんもこのことを忘れるだろう。今度、アクアとはこのことについて入念な話し合いが必用そうだ。
俺はワクワクとムラムラを抱えながらそんなことを思うのだった。
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