第20話 この初めてのデートに終焉を!2

風呂上がり。さっぱりとした気分の俺は、文字通り心も体もぽかぽかだった。やはり、風呂はいい。屋敷の風呂も十分大きいのだが、ここのはそれとは対象比べ物にならない。思わず長風呂してしまったわけだが、こればかりは風呂好きの日本人の性というものだ。

ふとそこで俺の前から、タオルと袋を持っためぐみんが歩いてきた。

「よう。これから風呂か?」

「ええ、そうしようかと思いまして。カズマはどこに行くんですか?確かカズマの寝室はこっちではないと思うのですが…」

「ん、ああ。クレアに頼んで、色々な人にスキルを教えてもらうんだよ。幸い、魔王を倒してスキルポイントも余ってることだしな。」

冒険者カードを見せながら、言った俺を見て不思議そうな表情を浮かべるめぐみん。

「一体何のために、なんのスキルを取得するんですか?」

「それはもちろん、後でのお楽しみというやつだ。…おっと、そろそろ行かないと。それじゃあめぐみん、またな。」

「あっ………」

なにか言いたげなめぐみんを残して俺は、約束した場所へと向かうのだった。


こっからはめぐみん視点


体を洗い終え、ゆっくりと広々とした湯船に肩まで浸かる。私はお風呂が嫌いだし、好きだ。実家では、狭い風呂しかなかったもので、こうして全身をゆっくり伸ばし、肩まで浸かることなど、とてもじゃないができなかった。だからこうして大きな湯船に入るのは好きだ。体の芯から温められるこの感じが心地が良い。なんだか満たされるようなそんな気持ちがふつふつと湧き出てくるこの感じが好きだ。屋敷でも私はそこそこ長風呂な方なのだが、カズマには敵わない。カズマもお風呂に入ることが好きで、よく長風呂をしている。なんでもカズマの国……つまりは異世界の……ニホン?だとかいうところでは、温泉が有名で、風呂に入る文化がとても発達していたらしい。いつか、みんなでその温泉に入ってみたいものだ。

そんな事をぼんやりと考えながら私はふと息をつく。そのまま深く体を沈め、寝転がるような体制で湯船の淵に頭を乗せ、上を見つめながら考える。

カズマはお風呂が好き。私もお風呂が好き。なんだかそんなな単純なことだけでも、顔がにやけてしまいそうだ。もっと、彼のことを知りたい。もっと私のことを知ってほしい。カズマについて私が知っていることといえば……優しくも意地悪でもなく、正義にも悪にも属さない、スケベでヘタレでサボりがちで更には浮気性の本当にどうしようもない人で……ただ…ただそれでも、最後にはなんだかんだ頼りになって、いつもいつも、最後にはカズマが解決してくれる。本当は優しい人で……そして私の大好きな人……そうして最後には魔王までも討伐してしまったのだ。数々の強敵たちと戦い抜いた彼はまさしく勇者にふさわしい。普通はそんなことになればおごり被ったりするものだが、カズマは違う。確かに、少し自慢したり、調子に乗ることはあっても。それを口実に何かができるほど胆の座った人間ではない。本当になぜ彼のことを好きになったんだろうか?客観的に見れば、どうしようもないダメ人間。でも、関わっていくうちに………

私はそんな心の内にある想いを確かめるように、頭を上げ、自分の貧相な胸元に両手を組んで、腕を当てると。そのままはあとため息を吐いた。

私がお風呂が嫌いなのはこういう理由だ。どう頑張っても自分の体にコンプレックスを抱えてしまう。カズマはこんな私でも本当に好きになってくれるんだろうか……いや、こんな風に自信をなくすなんていつもの私らしくない。好きになってもらうのではなく、好きにさせるのだ。アイリスやダクネスにも負けない。カズマに私を好きになってもらえるように頑張らないといけないのだ。幸い、私は二人よりも一歩リードしている状態だ。ダクネスだって一緒にお風呂に入ったことや何度も添い寝したりはしていないだろうし、ディープキスだってまだのはず。それどころか部屋に誘ったりもできていないと思う。アイリスももちろんそうだろう。しかし、あの人ならエロネスに少し誘惑されればイチコロだろうし、なんだかんだ、アイリスに甘いところもある。ダクネスは体を、アイリスは妹という立場を、それぞれ持っている。私は何を持っているだろうか。少なくとも仲間以上恋人未満の関係ではある。そして二人よりも圧倒的にカズマとの関わりが多いし、深い。これを生かさない手はない。カズマを私に惚れさせる。そのためにも………

私はのぼせそうになり、湯船から体を起こすと、深く決意し風呂場を後にするのだった。

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