第19話 この初めてのデートに終焉を!1
王城に帰った後、めぐみんは用事があると言ってどこかへ行ってしまった。外に行くことはないと行っていたのでそこまで心配する必要はないだろう。
「腹減ったな。」
昼間あんだけ食べたが、それでもその分歩いたのだから腹が減って仕方がない。ひとまず俺は食堂で夕食を取ることにした。食堂に続く廊下をテケテケと歩いていると、真正面からくるクレアの姿が目に入った。
「よう、クレア。アイリスたちはもういいのか?てかあいつらあれからどうなったんだ?」
「この国でアイリス様やダスティネス卿をあいつら呼ばわりするのはお前くらいだぞ。ダスティネス卿はパーティーに出席しておられる。今日中には帰られないだろう。アイリス様は今は公務の真っ最中だ。終わるのは日付が変わる頃になるかもしれないな。」
「まじか。そんなに働きっぱなしで大丈夫なのかよ。」
「昼間サボられていた分が回ってきたのだ。こればかりは仕方がない。」
ふーん。まあ、軽く3時間くらい無駄にしたわけだからな。仕方ないといえば仕方のないことなのかもしれない。あっ、そういえば………
そこでふと思いついたことを口にする。それを聞き終えたクレアが、
「別にそれくらいは構わないが、一体何のために…」
「まあ、あっちに帰ってからも色々やることがあるってだけだ。ただ、できるようで良かったよ。ありがとな。」
「当たり前だ。カズマ殿は勇者なのだし、アイリス様のことについて恩もある。貴殿が魔王を倒さなければ今ごろこの国は滅んでいたかもしれないのだからな。」
魔王はその力で魔物を強化する。俺が魔王を倒さなければ、王都に攻め込んできた魔王の娘によって壊滅させられてもおかしくなかったということだ。
「まあ、ひとまずありがと。だけど、そのカズマ殿とか貴殿とか呼ぶのはやめてくれよ。俺もクレアって呼んでんだから、俺もカズマでいいよ。」
「そ、そうか。まず私のことを呼び捨てしている事自体がおかしいのだが……まあ、分かった今度からはそうしよう。」
「OK。それじゃ、また。」
別れを告げて上機嫌で食堂に向かう俺。いやあ、儲かったな。普通ならこんなことできないのだが、色々と恩を売っておいて正解だったというわけだ。ダクネスといいクレアといい、大貴族のコネというものはつくづく便利だ。さて何に使おうかな。
俺はこれからのことを想像しながら食堂に入る。その瞬間。
「カズマじゃないの。おかーえり。お城を探してもどこにもいなかったけど、どこ行ってたの?それに嫌にニヤニヤしてるけど、なんかいいことあったの?」
「アクアか。いや、別になんかあったわけじゃない。」
俺のその答えに、一応は納得したのかふーんと適当に返事をするアクア。
「お待たせしました。こちら最高級ジャイアントトードの唐揚げでございます。」
眼の前に置かれた定食を見て、目を輝かせながらお礼をいうアクア。なんで定食が王城の食堂にあるんだよ。とか、最高級のジャイアントトードってなんだよ。あのモンスターに高級もクソもあるかよ。とか色々突っ込みたいことはあるが、気にしたら負けみたいなところがあるので特に反応はしない。俺はアクアの料理を持ってきた人に俺の分の夕食を作ってくれと伝えると、その人はわかったと了承し、食堂の奥に引っ込んでいった。
「ほへへ。へっほふほうはほほひっへはほ?」
「飲み込め。飲み込んでから喋れ。」
リスみたいに頬を膨らませたアクアが、なにか話しかけてくるわけだが、何言ってるかさっぱりわからない。俺のその言葉にアクアはごくんと口の中のものを飲み込もうとして…………
喉につまらせた。
「うぐッ!うぐうぐ!み、みず…」
「おい、大丈夫かよアクア!ほら水だ!もう少し落ち着いて食べろよな。」
俺の差し出した水を一気に飲み干すと、アクアはふうと息をつき俺に質問を始めた。
こいつは本当にいつもいつも問題ばかり起こして、何をするにも騒がしいやつだ。
「それで。結局今日はどこに行ってたの?」
「…どこって。少し出かけてきただけだよ。」
デートのことは一応は言わない。俺は知られても構わないわけだが、めぐみんがどう思うのかわからないからだ。俺は紳士な男だから、女性の嫌がるようなことはしない。セクハラはどうかって?世の中聞いて良いことと悪いことがある。つまりそういうことだ。
「そういえば今日、めぐみんも昼間見てないのよね。さっき、メイドさんたちになにか頼んでいるのは見たんだけども。昼間は一度も見てないのよね。あっ!あんたたちもしかして……」
まずいバレたか。こいつは変に鋭いところがあるからな。
「もしかして、また爆裂魔法でも撃ちに行ったの?王都で魔法を使うなって、守衛さんに怒られてたじゃない。やめてよ。私までまた牢屋に入れられるのはもう嫌なの!」
違った。やっぱりこいつは馬鹿だったのだ。
「そうか。怒られてたっていうんなら今度からはやめたほうが………おい、待ていままた牢屋に入れられるって行ったよな。もうすでに厄介になってるのかよ。」
「……言ってないし厄介にもなってないわよ。」
「そうか。そうか。やましいことがないのならちゃんとこっちを向け!おい、抵抗するな!俺の目を見てもう一度言ってみろ!」
こっちを向くまいと、必死に首に力を込め抵抗するアクア。俺はアクアをこっちに向かせるのに疲れたので、眼の前に運ばれてきた。夕食を食べ始める。
「そういえば。エリス様がたまにはこっちに来て働けってさ。」
「あの子が?どうやってカズマと会ったのか知らないけど。分かったわ。行けたら行くって言っておいて。」
それってどう考えても来ないやつじゃん。そう心のなかでツッコむ俺をよそにアクアは食べ終わった定食をみて、満足げにため息を吐くと
「それじゃあ。今からパーティーでお酒を飲んで芸を披露してくるから。またね。」
流石は芸と飲酒を司る女神様。王城でもいつも通りですね。言い残して走り去るアクアの背中を見送った後、俺は夕食を食べながら、廊下のどこかで聞こえた、どこかのドジな女神が転んだ音を聞きながら、これからのことについてぼんやりと考えていた。
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