第18話 この初めてのデートに祝福を!10

その後は、特に何か起きるわけでもなく。俺たちは普通にデートを楽しんでいた。一緒に食べ歩きをしたり、買い物に行ったり。そんな普通のデートなわけなのだが、これが意外と楽しいもんだ。正直ラノベのデートシーンを読んでいても、デートに行ってみたいといった思い半分、本当に楽しいのか?という疑問半分だったが、うまく言い表せないが心地よい雰囲気がして、なぜかわからないがすごく楽しい。相手がめぐみんだったからこそ気を使わないくてよかった。というのも理由に入ってくるのだろう。まあ、同じ屋根の下で長く暮らしてきた仲だ。さらに言えば、爆裂散歩では基本二人きりのため、こうして二人でどこかを歩くというのは珍しくない。そんなことをぼんやり考えているうちに空は黄金色に染まりつつあった。

「……もうそろそろ王城に戻るとするか。」

俺が声を掛けると、

「……そうですね。」

と気のない返事が返ってくる。

めぐみんはといえば、俺が買ってやった紅いブレスレットを大事そうにさすっている。大して高い代物でもないが、決して安物というわけでもないそれは、めぐみんの輝く紅い瞳と相まって非常に似合っていた。

めぐみんはずっと手の中においておいたそれを俺の方に突き出すと、

「……付けてください。」

と一言。

「…たく。しょうがないな。」

俺を苦笑しながらも、彼女の細い腕とブレスレットを手に取るとその白い腕にブレスレットとつけた。

「ほらよ。」

端的言ったその一言で、めぐみんはぱっと顔を輝かせ、自分の腕を紅い瞳でじっくりと見たあと、ちょっと照れたように目線を下に向けると自分の胸元にその腕を掲げ、

「…似合ってますか?」

と問いかけてきた。

ああ。もう。こいつはいつも飄々としてる癖して、こういうときだけ乙女みたいな反応をしてくるから調子が狂う。

「お、おう。そ…そうだな。とっても…似合ってると思うよ。」

少し照れながら顔をそらした俺に、めぐみんはぱっと顔を輝かせ、俺の腕に抱きついてくる。

「…それでは帰りましょうか。」

「……この状態で?」

「当たり前ではないですか。」

「……わかったよ。」

俺のその一言にますます強く腕を抱くめぐみん。痛くなるほど強く抱いているわけじゃない。例えるならばそう、ずっとこのままがいいとしがみつくような感じだ。俺だって正直ずっとこのままがいい。だが、デートは終わりだ。明日からはまた、こいつらと一緒に馴れ親しんだアクセルの街の屋敷で暮らすのだ。だからこそ俺は冗談交じりに言った。

「おいおい。そんなに強く抱きつかれると痛いだろ。お前は馬鹿力なんだから。」

「…そういうことを女性に言うのは良くないですよ。」

少し怒ったように言っためぐみんだったが、その表情を見れば、俺の言葉が冗談だと気づいているようだ。俺達は顔を見合わせると、ふっと二人で笑った。

なんだかんだ、こういう雰囲気が俺も好きなのかもな。ちょっと冗談を言い合って、笑いあえる。そんな雰囲気が……。ずっとこのままの関係がいい。ただめぐみんたちはきっとそうではないのだろう。もっと深く、近く、親しい関係になろうとしているのだ。転生する以前の俺に、こんな美少女たちに好かれると言ってもきっと信じなかっただろうな。これからどうなるのかという期待を籠めながら明日からの自分たちの生活を想像する。ラノベみたいな展開やハーレム的な感じになるのだろうか?………いや、きっといつも通り、めぐみんが爆裂して、ダクネスは変態で、アクアが問題を起こして……そんな未来を考えながら、苦労ばかりの今までの生活を思い返し、俺は心の中でため息を吐く。

「どうしたのですか?」

少し心配そうに聞いてくるめぐみん。

「いや何でも。そんじゃ帰るとするか。」

俺は適当にはぐらかし、めぐみんに呼びかけた。そして俺達はそのままの足取りで王城へと向かうのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る