第17話 この初めてのデートに祝福を!9めぐみん視点
あの後、私はしばらくカズマのことを見つめていた。
しばらく見ていてつくづく思うが、私はなぜこの人のことを好きになったのだろう?
外見は普通。特別なにかの才能があるわけでもなければ、センスがいいわけでもない。正義の味方というわけでもなければ、悪人なんてお恐れたものになんかにもなれない小心者。その癖、セクハラが多い根っからのスケベで、だからといって一線を飛び越す勇気もないヘタレときた。ただ一緒に関わっていくうちに…………
そう私が思い出に浸りながら真剣に考察していると
「なあ、いい加減そうゆう感じでニヤケ顔でこっち見てくんのやめてくんない?」
「全く何なんですか!なんであなたは、私が思い出に浸ったているときに限って、そんなムードのかけらもないことを言ってくるんですか!?」
「お、おい、いきなり逆ギレすんなよ。それだからアクセルの街でも無法者だと…すいません調子に乗りました。だから目を光らせてこっちを睨むのはやめろください。」
カズマのそんな怖気づいたような態度に私はふんっと鼻を軽く鳴らすと。
「……いいですよ。もう…そんなこと。」
私が寛大な心で許してあげると、カズマはほっと息をついた後。不思議そうな表情で
「…ていうか。なんで今思い出なんかに浸ってたんだよ?」
なんというか。もう少しデリカシーというものを学ばないのだろうか。
「…なんであなたのことが好きになったのか考えてたんですよ。好きな人にああいうことを言われれば誰でも嬉しいものですからね。」
「ふぁっ!?」
ああ、あとこの人は急に好意を伝えると、たまにこんな風になる。
「な、なあ。なんか最近急にそういう事言われる機会が増えてない?そういうことするなら事前に言っておいてもらいたいんだけど。ドキドキすんだよ。いきなり言われたりすると。」
そんな意味のわからないことを言ってくるカズマ。この人はなんというか。たまにこんな風に理解に苦しむ発言をしてくることがある。事前に行ってから告白とか、ロマンチックさのかけらもないじゃないか。というか私が好きなときに思っているんことを伝えて何が悪いのだろうか?疑問に思った私はちょっとしたからかいも兼ねてカズマに尋ねる。
「私が思ったときに好きなように好きだと伝えることの何が悪いんですか?それとも、私に好きだと言われるのは嫌ですか?」
落ち込む素振りを見せながら小さくそう言うと、予想通りと言ったところだろうか。いつも通りの焦った声色で………
「おい。俺を学習能力が欠落しているどっかの駄女神と同じにすんなよ。いい加減わかるわ。」
「!?」
予想外の反応に驚きを隠せないでいると、カズマは勝ち誇ったニヤニヤとした表情を浮かべながら、
「ほら見ろ。やっぱりだ。」
といった。
悔しい。まさかこの私がこんなにも簡単に嘘を見破られてしまうとは、やはりカズマは案外侮れないところがある。私が一人悔しがっていると、お待たせしましたという声とともに、2つのパフェがトレーごとコトンと眼の前に置かれた。トレーにはおあつらえ向きにも、柄の長いスプーンが二本置かれている。
「ほら。好きな方選べよ。」
こんなときばかりレディーファーストをするあたり、カズマはズルいと思う。普段から、もっと私を優先してくれればいいのに……心のなかで不満をこぼしながら、いちご味のパフェの方を手に取る。ブルーベリー味の方も気になるのだが紅魔族の血が赤い方を選ばせてくる。まあ、別段そこにこだわりがあるわけではないのだが……
私が取ったことを確認して、カズマももう片方のパフェとスプーンを手に取ると、二人同時にそれを口に運んだ。
「おいしい。」
「うまいな。」
声を揃えてつぶやく。思わず顔を見合わせると、お互いふっと笑みがこぼれる。何でしょうか。これ、もしかしてバカップルというやつなのでは?天才と言われたこの私がバカ呼ばわりされるのはいただけないが、それでもなんというか。こんな風に恋人みたいなことをしてると、なんだか自然と顔がニヤけてしまう。そんな事を考えていると、私はこんなにも色ボケするようなやつだったのかと、自分を疑ってしまうくらいだ。しばらくニヤニヤしながらパフェを口に運んでいると、
「ニヤニヤしてどうしたんだよ。そんなにうまいのか?」
そんな的はずれなことを聞いてくるカズマ。そんなカズマに私は、手に持ったスプーンでパフェを大ぶりにひとすくいすると、それを突き出しながら
「食べます?」
と聞いた。せっかくのあ〜ん作戦だが、先程すでにこの作戦がカズマには通用しないことは学んでいる。
「ん、じゃあ、お言葉に甘えて…」
そういって、私の口をつけたスプーンになんの躊躇もなくかじりつくカズマ。もう少し遠慮してもいいと思う。本当にこの人はデリカシーがない。こういうところではいつもはっきりした態度をとるのに…こんな風に少しからかってあげれば…
「………なにしてんの?」
いきなり目をつぶり口を開けている私に対してそんな質問を投げかけてくるカズマ。
鈍感なカズマではこれがどういう意味をなしているのか理解できなかったらしい。仕方がないここは大人な私が少し、リードしてあげないと…私は右目だけ開けてカズマに返答を返す。
「なにって、食べさせてくれないのですか?私は二回もしてあげたのに。そのスプーンの柄がなんで長いのか知らないんですか?」
「……」
知らなかったらしい。なんてことを女の子に言わせるのだろうか。
「あ~んするためですよ。カップルがシェアしやすくするために長いんです。全く、このくらいは知っておいてくださいよ。」
少し起こったかのような口調で説明すると、カズマは呆然とした表情で固まっていた。
「ほら、食べさせてくれるんですか?くれないんですか?早くしてくださいよ。」
再び目を閉じて、口を開く。目を閉じているこの感じがなんだか凄くドキドキする。少し間をおいて、スプーンとカフェの食器がぶつかるカチャカチャとした音がなり、私の口元に何かが近づけられる。私はそれを口に含むと、
「美味しいですね。」
ブルーベリーの確かな酸味と、フレークのサクサク感、そしてアイスの程よい甘みが絡みついて、これまたなんとも言えない美味しさだった。
「だろ。」
ニヤニヤした顔を貼り付けながら、そう話しかけ来るカズマ。
自分が作ったわけでもないだろうになぜこんなにも自慢げなのだろう。時々こうやって不思議な行動を取るところも、一緒にいて楽しい理由のひとつなのだろう。こういう、カップルぽいことをするのは初めてで、少し照れくさい気もするが、その空気感がなんだか心地良い。学生時代、ゆんゆんたちに散々色ボケなど言ったりしてきた私だが、私自身も十分色ボケしているみたいです。
そんなことを考えながらこれからのデートについて考える。少し緊張するが、これも大切なことだ。
そうしてしばらく、お互いパフェを楽しんだ後、私達は再び、街へ繰り出すのであった。
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