第14話 この初めてのデートに祝福を!6
クリスとの一見が終わったあと、やはり後ろを気にしているめぐみんを連れて、カフェのテラス席に腰を掛けた。
「ごゆっくりどうぞ。」
そう言って立ち去る店員。
きれいな人だったな。ダクネスとまではいかないが、そこそこ大きかったし……
「何見てるんですか。」
店員の後姿を目で追っている俺に質問のはずなのに疑問符のつかない、もはや脅迫に近い疑問を浴びせてくるめぐみん。
「い、いや〜。別になんでもないよ〜。本当になんでもないから。……………すいません。目移りしてました。本当にすいません。」
瞳の色が変わった、めぐみんがこちらを睨んできていたため咄嗟に謝罪をする。
怖い。本当に怖い。目と表情が本気なんだよな。割と本気でまずい。早いとこ、この空気を入れ替えないと…
「そ、それよりほら。見てみろよ。色んなメニューがあるだろ。」
話をそらしだした俺に向け、めぐみんが深くため息を吐くと
「はあ、もういいです。あなたのこういった行動に関しては、もう諦めがついたといいますか…」
なんというか気まずい。いやどう考えても俺が悪いんだけどね。でもしょうがないじゃん。生理現象みたいなもんじゃん。
「お客さん。迷っているようでしたら、こちらなんていかがですか?」
男性店員が俺達の前に置かれたメニューのある一点を指差す。そこを覗くと……
「今カップル割をしてるんですよ。個々の店はパンケーキが有名ですから。期間限定のブルーベリー風味のものとプレーンのものをセットでお出ししているんですが、カップルだと更にパフェまでつくんですよ。お二人はお似合いのカップルのようですから、おすすめですよ。」
なるほど。カップルではないが、周りから見ればそうであって当然だしな。
「だってよめぐみん。俺はこれがいいけどお前は………」
どうしたい?と聞こうと、めぐみんの方に目線を向ける。
……顔真っ赤じゃん。こいつ普段積極的な癖して、こういうときだけ初心な反応見せるんだよな。待てよ。こいつはお似合いとかカップルとかそんな単語でいちいち照れるようなやつだったか?なんか違うような気がするが………。
「………あっ。すいません。ええ〜とこれでしたよね。私もこれでいいですよ。なんて言ったて【お似合い】の【カップル】ですからね。ええ、そうですとも、そうですとも。」
あからさまに、お似合いとカップルの部分を強調するめぐみん。それほど嬉しかったのだろうか?なんだか異性にそこまで想われていると思うと、なんだかこそばゆいと同時に、相手に好きだとか言ってあげられない自分が腹立たしい。どうして俺はわからないんだろう。もっと異性と交流があればよかったのだろうか。まあ、そんなこと前世で引きこもりの俺に言われてもどうしようもない話なんだが……。というか普段散々めぐみんを魔性だの、悪女だの言っているが、俺のやってることも大概じゃないか?めぐみんから見れば、好きだと言っても、わからないだのなんだの言って空回りだからな…なんか申し訳ないことしてたな。もう魔性呼ばわりはやめよう。嬉々として注文をしているめぐみんを横目にそんな事を考えていると…
「………。」
「………あの〜何でしょうか。なぜこちらをずっと見ているんですか?見ているだけでずっと無言でいられると気不味いのですが…」
おっと、つい見つめてしまった。
「……もしかして、カ、カップルだとか…お似合いだとか言われて……その…嫌…でしたか?」
不安気な表情で小さく尋ねてくる。
「い、いやそんなことない。そんなことないからやめてくれ。そういう表情されると、罪悪感が凄いんだよ。ちょっと考え事してただけだから。なっ。」
本当に不味い。年下の少女にそんな顔されているのは周りから見て非常に不味い。めぐみんを安心させようと声を掛ける俺に対し、めぐみんは少し期待したような声色で、顔を上げずに聞いてきた。
「……なら、嬉しかったんですか?」
………へっ?いやいやちょと待て。どうしてそうなる。やばっ。なんか泣きそうな感じで肩震えてるんですけど。ああ〜もうしょうがない。別に嬉しくなかったわけじゃないしな。
「…ま、まあ、どちらかと言えば…その…嬉しかったかな。」
そこまで言って自分の顔が思わず熱くなるのを感じる。恥ずかし!あまりの恥ずかしさに思わず悶えながらめぐみんの様子をうかがう。するとそこには肩を震わせためぐみんの姿が……
「え、あっちょ。ごめん。嬉しかった。すごく嬉しかった。そりゃお前だって美少女だし、俺も誰かとお似合いだとか言われたことないからな。だから……」
早口で捲し立てる。続きを言おうとしたその時、めぐみんから聞こえたのは泣き声……ではなく笑い声だった。めぐみんは肩を震わせクスクスと笑うと、その光景を見て思わず唖然としていた俺に向かってこう言い放った。
「本当にカズマはからかいがいがありますね。大丈夫ですよ。私はダクネスみたいなそんな面倒臭い女はありませんから。でも嬉しいですよ。そう言ってもらえて。」
こっこいつ…前言撤回。やっぱこいつ悪女だわ。ピュアな童貞を虐める悪女だ。
「そんなに怒らないでくださいよ。そうですね。私も少し意地悪が過ぎましたから、なにかしてあげても良いですよ。」
「何かって言うのは具体的にどこまでセーフか詳しく。」
「そ、即答ですね。まあ機嫌が直っただけいいとしましょう。まあ、何でもというわけにはいきませんが、ある程度のことならやってあげますよ。」
だから、そのある程度がどの程度なのかが知りたいんだよ。これで下手なこと言って、それはちょっとライン超えてる…とか言われたらもう終わりじゃん。
「わかった。考えとく。」
嘘です。なんにもわかりません。わかるわけなくない?無理じゃん。
「お待たせしました。こちら期間限定ブルーベリー風味とプレーン味でございます。」
運ばれて来た料理を見て、
「めぐみんが好きな方選べよ。俺はどっちでもいいから。」
ここで、譲るというのができる男と言うものだ。
「そうですか。ではお言葉に甘えて…」
そう言ってプレーン味の方に手を伸ばす。俺ももう片方に手を伸ばし、二人でそのまま口に運ぶ。
「…うまい。」
「…美味しいですね。」
いや想像以上だ。フワッフワッの生地に滑らかな舌触り味もしっかりしていて、それでいて調和の取れた味。料理スキルを持ってしてもこれだけのクオリティは中々出せない。流石は本場のシェフといったところだろうか。
しばらく、夢中になって食べ進めたあと
「そちらの方も美味しそうですね。ちょっともらいますよ。」
そう言って俺の切取ってあった一欠片にフォークを刺し、そのまま自分のことに運ぶ。
「あっ。お前…」
「…うーん。こっちもやはり美味しいですね。ここの料理はどれも絶品ですよ。」
「…そうじゃなくて、勝手に取るなよ。」
講義する俺に対し、めぐみんは少し考えるかのように顎に手を添えると、やがて何か思いついたかのようにポンっと手を打ち、先程俺のパンケーキを刺したフォークで自分のパンケーキを一欠片刺すと、こちらにニヤけ顔で差し出してきた。
「ほらカズマも食べていいですよ。はい。あ~ん。」
あ~んされる展開。めぐみん的にはからかっているつもりのようだ。そんな中俺は…
「そうか。むぐっ…こっちもうまいな。」
なにの躊躇もなくそれを口にした。
「えっ。あっその……なんで…」
「なんで、そんな躊躇いもなくできるのか?だって?」
めぐみんの言葉を読んだ俺にめぐみんは赤い顔をしながらコクコクと頷き、
「はい。もう少し…なんというか…その…てっきりもうちょっと…あの…恥ずかしがったりするもんだとばかり……」
「なんで俺がそんな王道展開に付き合わなきゃいけないんだ。てか、今更関節キスくらいでなにうろたえてんだ。キスだってしたことあるだろ。」
「それはそう。それがそうなのですが…なんというか、いざ躊躇なくそんなことされるとなんだか複雑です…」
うーむ。よくわからん。やっぱり乙女心って難しいね。
そのまま少しの間駄弁りながら。パンケーキを食べ終えると、めぐみんが皿を片付けに来た店員に向け、パフェを持って来るよう頼むと、先程のやんわかした雰囲気はどこえやら。めぐみんはこっちに真剣な眼差しを向け一言。
「……カズマはダクネスやアイリスのことをどう思っているのですか?」
………はい?
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