第12話 この初めてのデートに祝福を!4

「カズマカズマこの服なんてどうですか?」

「いやいや、そんなゴテゴテの服着るわけ無いだろ。」

現在俺たちは、まさにデート!といった感じでデートしていた。

勿論どちゃくそ緊張している。しかし、クールな俺は表情には出さない。只今めぐみんが俺の服を選んでくれていた。めぐみんいわく自分の好きな人がダサい格好をしていつと悲しいし、自分の選んだ服を着てくれていると嬉しいから、だそうだ。おそらくダサい格好というのはジャージのことだろう。自分でも思うよ。なんで異世界にまで来てジャージ着てんだろうって。でもあれは日本からこの世界に持ってこれた唯一のものだからな。これからも大切にしないと…

「カズマカズマ!今度はこれなんてどうですか?」

「……言っておくが、次また変にごてごてしたやつ持ってきたら、スティール食らわせるからな。」

「………やっぱりちょっと待ってください。」

「おい。」

紅魔族のセンスはやはり壊滅的だ。なんだよその服。黒くてキラキラしてんだけど。そんなの着るやついないだろ。そういや、前にバニルが…適当に中二っぽい商品に適当に魔王とか伝説とかつけておけば通須賀利の紅魔族が買っていってくれる。とかなんとか言ってたっけ。なんとゆう狙い撃ち。紅魔族だけを的確に狙った商売が成り立っているのか…

「カズマこれです。これは完璧ですよ。」

そう言いながら手に持っている服を自分の体に押し当て、嬉々として告げてくるめぐみん。

「ほう…」

確かにいい感じだ。緑一色のパーカーみたいなやつだ。おそらく俺より以前に来た。日本人が伝えたものなのだろう。

「いい感じじゃないか。最初からそうゆうのにしてくれよ。」

そう伝えると、めぐみんはふふんとない胸を張って、

「そうでしょう。そうでしょう。なかなかいいセンスだと思いませんか。一色で派手ではないのが残念ですが、カズマに似合うと思うんですよ。ちょっとそこで試着して来てくださいよ。」

「おいおい。押すなよ。理解った理解った。着替えてくるからちょっと待ってろよ。」

グイグイと試着室に半ば強引に詰め込まれ、俺は仕方なく着替え始めた。

「ぴったりだな。」

試着室に取り付けられた鏡を見て思わずそうつぶやいてしまった。

サイズもそうだが、驚くほど自分に似合っている。正直おしゃれには無頓着だったため自分に似合う服なんてないと思い、普段から適当に親が買ってきたものを着ていた俺でもわかるくらいには俺に似合っている。紅魔族としてのセンスが終わっているだけで、めぐみん本人のセンスは悔しいが素晴らしいと認めざる終えない。というか、今まで母親以外の女性からまともにものを見繕ってもらったことなんてなかったよな。やばっ。大事にしよ。

そう心に決めた俺は試着室からでる。

「………………。」

「…………なんか言えよ。不安になるだろ。」

試着室を出るなりこちらを無言で見てきためぐみんに話しかける。それを聞き、はっとしながらニコリと笑うと、

「すいません。思わず見惚れてしまいました。とっても似合っていますよ。」

やばい。笑顔でそんな事言われると本当にやばい。何だこれ。付き合いたてのバカップルみたいじゃないですか。これはついに俺もリア充の仲間入りを果たしたと言って過言ではないのではないだろうか。よしっ。さよなら非リア生活。こんにちはリア充たち。これで毎年、クリスマスやバレンタインに恋人を呪わなくて済みそうだ。お父さん、お母さん。元の世界では女っ気の一つもなかったけど、俺こっちの世界で楽しくやっていけそうだ。そこから、めぐみんは俺用のジーンズやら、コートやらを見繕い始める。ある程度終わったところでようやくこちらにくるりと視線を向けると、

「さて、カズマの分はだいたい終わりましたから、今度は私の方も手伝ってくださいね。」

「ちょっとまて。自分で言うのも何だが、俺は別にセンスがいいわけじゃないぞ。どういう服がいいのかとか。流行っているのだとか。こういうのが似合ってるとか。そんなことすらわからないんだぞ。それに俺はめぐみんの好みすらあんまり知らないんだ。俺が選ぶよりめぐみんが選んだほうが絶対いいだろ。」

そう。俺なんかが選ぶより100倍いいだろう。

そういうと、めぐみんはなぜかシュンとしながら上目遣いで、

「…ダメですか?私はカズマに選んでほしいんです。デザインとかはカズマの好みのやつでいいですから。」

そんな事言われて断れるはずもなく。俺はめぐみんの服を選ぶことになった。

しかし、俺好みの服ね〜。ぱっと思いつくもんでもないわけだが…ん、あれは……

俺はふと視線の先に止まったある衣服に手を伸ばし……

直ぐ引っ込めた。

後ろの視線が怖い。さっきまでニコニコしてたのに。

「そんなに、そうゆうのを着てほしいんですか?」

そうして、俺が手に取ろうとしたものを見る。俺はふらっとその場から逃げる。今のことはなかったことにしよう。ここで書くのもはばかられる。

「そんなに着てほしいなら着てあげますよ。メイド服くらい。」

せっかく俺が隠そうとした事実だというのに、なんて空気の読めないやつだ。

「いや、流石にやめておく。初めてのデートで初めて買ってあげたものが丈の短い露出多めのメイド服とか、一生もんの黒歴史になる。」

今度はもう少し、めぐみんの好みについて考えてみようか。普段の格好や下着、ドレスなどからめぐみんの好きな色はおそらく赤や黒のものだろう。また普段からワンピースばかり着ていることから、あまりズボンとかを履いているところは見たことないな。めぐみんに似合いそうなものか………

真剣に考えながら、チラッと後ろのめぐみんを見ると。今度はまた笑顔で、ニコニコしながらこちらの様子を眺めていた。そこで少し前まで立っていた。とある衣類のコーナーが目に留まる。俺がそちらに歩きだすと、めぐみんもぴったり後ろについてくる。俺は赤いパーカーとそのとなりのジーンズを手に取る。

「ほう。ペアルックですか。カズマもなかなか乙なことをしますね。」

ニヤニヤしながらからかい口調でいってくるめぐみん。まあ、正直にいうか…

「真面目に正直にいうと、俺なりに真剣に考えた結果なんだよ。俺ですら似合うんだから。お前くらいの美少女なら、さぞ絵になるだろうって。」

いきなりの美少女呼ばわりに照れたのか、顔をバッと赤くしながらうつむくめぐみん。

「…そうですか……ありがとう…ございます。」

もじもじしながら顔もあげずに礼をいってくるめぐみん。

「どうした?そんなモジモジして?照れてんのか?可愛いとこあるじゃん。」

「か、かわ…」

からかってくる俺の一言に対し、ますます、顔を赤くする。こいつがこんなにも照れてるところを見たのは初めてで、ついまじまじと見てしまう。その間にも、めぐみんはチラチラとこちらを見ては直ぐにうつむくのを繰り返している。といか、こういうのを見ると……

「……かわいいな……」

「…ッッッ…!?」

あっ。無意識のうちに声に出してた。

………いつも強気なこいつがこんだけ照れてるところを見ると、なんというかギャップってやつ?よくわからないがなんかいい感じだな。

「いつも強気なお前が珍しいな。照れまくってんじゃん。まあ、俺としては美少女がモジモジしながら照れてるのを見るのもやぶさかではないが……」

「…ッッッ…!?」

てかよく見ると……

「よく見るとお前ってやっぱ美人だな。顔も綺麗で整ってるし。スタイルもいいし。かわいいし。目も大きくて綺麗な色してるし。髪もサラサラで。性格に関しても、爆裂狂であることを差し置いてたとしても、優しいし。仲間想いだし。気遣いもできるし。まあ正直問題ばかり起こすのはどうかと思うが……まあだとしても、生活力もちゃんとある。凄まじい器量良しの優良物件だな。」

「…ッッッ…」

俺のセリフに口をパクパクさせながら。顔と瞳を真紅に染めためぐみんがようやく口を開く。

「……全く何なんですか!あなたという人は。いつもは言ってほしくても言ってくれない癖して。どうしても今だけこんなに褒めてくるんですか!急に美少女だとか。可愛いとか。優しいとか。なんですか。もう女の子のことを口説き慣れてるんですか!?甘い言葉を囁いて。何が冴えない男ですか!煽てたってなにもでませんよ。」

「お、おい。急に逆ギレすんなよ。それに俺は思ったことを素直に言っただけであってな。嘘吐いてるわけでもなきゃ、煽ててだってないからな。事実を言ってなにが悪いんだよ。」

「そういうところを言ってるんですよ!なんでいつもは三枚目になってヘタれる癖して。なんでこういうセリフを恥ずかしげも無く言えるんですか!そうですよ。別に悪くないですよ。普段から言って欲しいくらいですよ。」

そんな、キレてるのか。喜んでるのか。責めてるのか。頼んでいるのか。わからないような事を捲し立てるめぐみん。

というか。そういう事言われると……

「ちょっと。急になんで照れてるんですか。そっぽ向いてないでこっち向いてくださいよ。」

「いやだって。最初は感じたままのことを言ってただけだったけど。思い返せば結構恥ずかしいこと言ってたから……。」

「はあ。まあいいですけど。急にそうゆうこと言われるとこっちも照れてくるので、もうちょっと時と場合を考えていってください。褒められて嬉しいのですが、いきなりそんなにたくさん並べ立てられると、恥ずかしいのですよ。ですが…」

そこまで言って、急に言葉を切ると再び顔を真っ赤にしながら。

「その……ありがとう…ございます。褒めてくれて……嬉しかったですよ……。」

そんな事言われると…

「…かわいいな…」

「…ッッッ…!?」

おっと思わず心の声が…

「そういうところだと言っているんですよ。全く人の話を聞いていないのですか!?」

「ごめん。ごめんって。心の声が漏れちゃったんだよ。今度から思っても言わないようにするから。」

必死で弁明する。

「いや。…それはそれで嫌だと言いますか。褒めては欲しいですし、そういう事を言われて嬉しいのですが…」

どっちだよ。心中で思わずツッコむ。

「とりあえず。そういうことは時と場合を考えて言って下さい。」

「?時と場合ってどんな感じ?」

そんな乙女心を気遣えとか言われても困る。

「それは…、まあそうですね。私が言ってほしいときとか。カズマが伝えたい場合とかですかね。」

めっちゃむずいやん。後者はともかく前者はどうしようもなくね。

そんな苦悶の表情を見てめぐみんがクスクスと笑うと、

「そうですね。例えば、私がカズマに好きとかかっこいいとか伝えたときに、カズマが純粋に喜べる時とかですかね。」

「つまりいつでもってことか。」

なるほど了解。ツンデレ把握。

「えっ。いやまあそう思ってくれているのは嬉しいですが…いやそういうことじゃなくて…」

違うのかよ。女心はさっぱりわからん。

「もういいです。ほら服選びの続きをしましょう。」

呆れたような口調だが、その顔は確かに笑っていて…俺もつられて思わずフッと笑うと…

「今鼻で笑いましたか!?」

「そんなわけ無いだろ。つられて笑ちゃったんだよ。」

そんなくだらないやり取りをして。二人は顔を見合わせ……思わず吹き出してしまった。ひとしきり笑ったあと先程の雰囲気はどこへやら。再びめぐみんは俺の腕を抱いてきた。

そうして俺達はお互いのために服を選び終えると。そのままお揃いのパーカーを着て店を後にした。

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