第11話 この初めてのデートに祝福を!3

俺がめぐみんに告白?まがいなものをしたあと。俺達は何事もなかったかのように、デートの続きをしていた。正直言って助かる。これで妙な反応されたりでもすれば、さすがの俺も恥ずかしくてならない。てか、今も十分恥ずかしいんですけど…

「な、なあめぐみん?いつまでくっついてるつもりなの?」

「いつまでって、少なくともデート中はずっとこのままのつもりでしたが……」

…さ、さいですか。さっきの出来事があってからめぐみんはずっと俺の腕に抱きついたままである。

「…もしかして……嫌…でしたか……」

「い、いや、そんなことはない。全然嫌じゃない。むしろ、嬉しいんだけどね。ただ…なんというか…その……ちょっと…恥ずかしい……な…って……」

心配そうに恐る恐る尋ねてくるめぐみんに即答したはいいものの、だんだんと声が小さくなっていく。

すると、先程の表情が嘘だったかのように、パアッと明るい表情でめぐみんが

「そうですか。それなら良かったです。」

そう言って、ますます強く俺の腕を抱く。

勿論、そんなに密着されたら、俺の腕に柔らかい感触が……感触が……感触…感…

や、やめろよ。…そんな目で睨むの…。しょうがないだろ。期待しちゃうもんなんだよ。

そのまましばらく街道を歩く。ちらほら人が見え始めた。もうそろそろでつくと思い

「もうちょっとでつくぞ。こっから先は、色んな店があるんだ。」

隣りにいるめぐみんに視線を下ろし、そう告げると。めぐみんが感心したような顔で

「そうなんですか?カズマは王都の地形に詳しいのですね。」

「ま、まあ、伊達に数週間王城で暮らしてたわけじゃないからな。アイリスが勉強とかでいないときは、こうやってよく街に繰り出していたもんさ。」

そうゆうと、めぐみんは少しだけ表情をかげらせ。一瞬後ろの方に目をやった気がした。

あれっ。地雷踏んだ?まずい。さっきまでの雰囲気がぶち壊しだ。確かに王城に暮らしている間。こいつらには心配かけさせたし。こいつらとアイリスを比べて、王城に残ったこともあったし。

そんなふうに、俺が内心オロオロしていると…見知った顔が視界に入ってきた。

どうやら、やはり俺の運は良かったらしい。俺と同じようにその人に気づいたのか。めぐみんも少し表情を変える。ただ、その後何事もなかったかのように表情を戻し…

「カズマは私をどんな店に連れて行ってくれるんですか?」

期待混じりな声でそう聞いてくる。そのままその人の眼の前まで来たが……

そのまま、その人には目もくれず通り過ぎると…

「私これまでの人生であんまり、アクセサリーとかに気を使ったことがないんですよ。ですから……」

そう、当たり前のように話を続ける。

えっ、なんで…

「ちょ、ちょっと。なんで無視するのよ!?ねえ、めぐみん聞いてるの?」

俺の疑問をそのまま口に出したのは、紅魔族次期族長のゆんゆんだった。

俺もそう思い、めぐみんの方に視線を戻すと…一度はそれを聞いてフリーズしていためぐみんが、やはり何事もなかったかのように話を続けた。

「ですから……今日はそういったお店に言ってみたいです。眼帯だって、貰い物ですし…自分でも選んでみたいんです。それと……」

「ねえってば!?めぐみん聞こえてるんでしょ!?無視しないでよ!」

今度は肩を揺らしながら、再び口を挟むゆんゆん。そこでめぐみんはゆんゆんを突き飛ばし、その方にバッと振り向くと、

「全くあなたは何なんですか!?いつもは変に気をつかって話しかけるのを躊躇う癖して、どうしてこんなときばっかり空気を読まないんですか!?今私はカズマとデートしているんです!見ればわかるでよう!?なんですか。その紅魔族の特有の紅い瞳は飾りなんですか!?そんなんだから、友達もいなくてぼっちで、今だパーティーメンバーすら集まらなければ、彼氏もいないんですよ。はっきりいいます。今あなたと話している時間はないんです!そんなにも、私達のデートを邪魔したいんですか!?独り身だからって、足を引っ張るのはやめてくださいよ。それともなんですか?魔王城で対して活躍できなかったことへの腹いせですか!?そんなに人の恋路を邪魔して楽しいですか!?あなたは勝手に紅魔の里にでも帰って、族長族長ともてはやされてくればいいでしょう。そこまでして何がしたいんですか!?これで勝負だとか子供みたいなこと言ったらぶっ飛ばしますからね!」

早口で、ゼイゼイ吐息を切らしながらそんなことを捲し立てると。めぐみんは一度息を整えてから、フンっと軽く鼻で笑い、また俺の腕に抱き着いてきた。めぐみんの言葉によって、不幸にも硬直していた幸薄い一人の紅魔族がようやく口を開く。

「ちょ、ちょっと流石にひどくないかしら?そんなに強く言われるとちょっと、いや結構傷つくわよ。あと、ボッチじゃないからね。ちゃんと友だちもいるんだから。ほ、本当よ!それに、勝負しに来たわけじゃないわ。ちょっと話があるのよ。」

「なんですか。とっとと話してくださいよ。」

「そ、その…あのね…えーと、その…つまり…だからね…」

言葉を詰まらすゆんゆん。

「なんですか。特に話がないなら行きますから。」

そういってくるりと背を向けようとするめぐみん。

「わかったわよ。ちゃんと話すから聞いて!実は…」

実は…なんだろうか。というかこの話って俺が聞いていいやつなの?二人だけにしたほうがいいんじゃないか。そう思い離れようとするが、めぐみんは相変わらず、俺から手を離さない。どうやら俺もここにいていいらしい。

「実は…私、そろそろ紅魔の里に帰ろうと思ってるの。」

「なんですか。そんなことのためにわざわざ引き止めたんですか?紅魔の里へでもどこにでも勝手に行けばいいじゃないですか。」

「違うわよ。そうじゃなくて……わかったわ。もう単刀直入に聞くわね。」

そうして一呼吸おいてから…

「めぐみん。私と一緒に紅魔の里に帰らない?これから私は族長になる。そのときに私を補佐してくれる人がほしいの。それでね。どうせならライバルであり、親友であるあなたに……私は…隣にいてほしいの。だから…」

つまり…めぐみんは故郷に帰ることになるのだろうか。そりゃあそうだ。俺だって日本に帰れるのであれば帰りたい。帰ると言っても帰省するだけになるだろうが…ただこの感じからいって、ゆんゆんはこのまま紅魔の里で暮らさないかと提案している。いや、まだ行くと決まったわけじゃ…

「お断りします。」

俺の心配は心配に終わった。

よ、良かった……。

ほっと胸をなでおろす。

「私は紅魔の里で暮らすよりも、みんなと一緒に…カズマたちと一緒に暮らしたいんです。さらに言えば、私があなたの補佐なんて務まるわけがないでしょう。成績も魔力量もレベルも肩書もあなたより上ですから。そんなことすれば私が族長になってしまいますよ。それに…」

それに…なんだ?

めぐみんは少し恥ずかしそうにはにかむと…

「それに、私この人とずっと一緒に……一生この人の隣りにい

居たいですから。」

ちょっ。まじでめぐみんはたまにこうやって剛速球を投げてくるから油断ならない。

「……そうね。わかったわ。めぐみんにだって生活や考えがあるものね。」

「わかってくれて嬉しいです。ボッチで男っ気のない独り身紅魔族ゆんゆん。」

本当に油断も隙もないロリっ娘だ。

笑顔で毒づいためぐみんを見てついにゆんゆんが口を開く

「…さっきからぼっちだちか、独り身だとか、彼氏いないとか強調してるけど。結局めぐみんはカズマさんとどういう関係ないの!?本当は見栄張ってるだけなんでしょ。」

よほど悔しいのか、いつになく感情的になるゆんゆん。

「私とカズマがどの程度の関係か…ですか………」

そう言うと普段あまり見せないような。そんな照れた表情をしながら俯くと小さく、

「カズマとは、夜中カズマの部屋に遊びに行って、深い方のキスをしたり、日常的に2人きりで出かけたり、好きだと伝えたり、あとは一線を越えかけたりと…まあ、その程度の関係ですよ…。」

そうつぶやいた。

まあ、嘘はついてないけど…

「う、嘘よね?いつも子供っぽかっためぐみんがまさかそんな大人なことしてるわけないもんね。」

そこまで言って俺たち二人の表情から、嘘ではないことを察したらしい。一歩後ずさると、そこでめぐみんがトドメの一言を放った。

「それではゆんゆん。また、今度2人で実家に報告とかに行くと思いますので、その時また会いましょう。」

笑顔で手を振る。

「…べ、別に負けたなんて思ってないから〜!」

そう捨てセリフを残しどこかに走り去って行ってしまった。

「いいのか?もうなかなか会えなくなりそうだけど。」

「大丈夫ですよ。どうせ寂しくなったらまたアクセルに帰ってくるでしょうから。」

やはり長年一緒にいただけあって、ゆんゆんの考え方は筒抜けらしい。

「それに…私がカズマと付き合う時や結婚するときも、どうやったって実家には帰らないといけないですからね。」

「ちょっ、おま。」

照れる俺の反応を見てクスクスと笑うと、

「私はいつだっていいですからね。カズマが私のことが好きか確証が持てないのであれば。私が惚れさせてあげますから。どうやったって逃しませんから。」

そんな嬉しいような。怖いようなセリフを告げる。

ドキドキする。どうしてこんな恥ずかしい事を平然と言ってのけるのだろう。そこで俺は更に自分の顔が熱くなるのを感じる。そんな俺の顔を見て…

「顔…真っ赤ですよ。」

「う、うるせぇ。」

再びクスクスと笑うめぐみんといっしょに俺たちはまた、街道を歩き出すのであった。

…その時、めぐみんがちらっと勝ち誇ったかのような顔で後ろを見ていたが、もう見えなくなったゆんゆんへの当てつけなのだろう。そう結論付けた。ようやくデートは、本格的に始まる。

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