第7話 絆
「流石、俺の仲間を倒しただけはある奴だ……」
彼は疲労混じりの声で言った。
彼の竜との戦いは、最初は彼の方が優勢だった。
しかし、竜と彼の体力では、竜の方が圧倒的に多い。
ここまでもう、十分も経っている。意外と少ないと思うかもしれないが、命をかけた戦い、しかも、最盛期と比べ体力は桁違いに落ちているし片腕がないのだ。
例え、技術力が上がっていたとしても、最盛期ほどの戦闘力まで補えるほどではない。
はぁ、仲間はこれを一時間も耐えたんだ。信じられないぜ。
「これで最後だな……。どうせなら最後にぶちまけるか!」
いわゆる、必殺技ってやつを。
通常、剣士は戦闘時、無自覚に魔力を身体全体と剣へ巡らせているらしい。その魔力を意図的に剣から外に出して斬撃を飛ばそうって技だ。
俺の仲間の一人がこれを使えた。
ぶっちゃけると、今まで成功したためしがない。だけど、今なら使えそうな気がする。
「ここで成功させてこそ、だよなぁ、お前ら!」
竜が三度目のブレスを吹こうと前屈みになろうとする。
……今だ!
「斬撃波!いいぃいっけけけぇええ!」
剣が折れた、仲間の剣が。
魔力の斬撃が竜の古傷の所に丁度ぶつかる。
「――――っ」
竜の古傷がえぐれた。今までとは比べものにならないダメージが入ったと分かる。
竜のブレスは未遂に終わった。途端に竜がよろめいた。
「やったか!?」
確認するに、竜はまだ生きている。
彼はすかさず攻撃しようとしたが、身体が思うように動かなかった。体力が限界を迎えたのだ。
「グォォオオオオオオオオオオオオオォォォォォオン」
竜の吠えた声が辺りに轟いた。
これは怒声だ。今までのは茶番で、竜は今、やっと本気になったのだ。
鼓膜が破れんばかりの轟音が聞いた者を畏怖させた。
「マジかよ、こんなんありか……」
それは、彼も例外ではなく。彼は、力を抜けて地べたに座り込んだ。
あれは、全く本気を出してなかった状態だったのか!?
別にもう、倒せるとは思ってなかった、仲間の仇討ちとかも。だけど、怯んで逃げてくれるかもとかそんなことを思ってた。楽観的すぎた。今まで、竜に遊ばれていたなんて――。
彼は死を覚悟して願いをつぶやく。
「――リアム、ちゃんと生きるんだぞ」
そのときだった。
「アルチュール、何情けないことを言ってるんだ。私は生きるし、君も生きるんだよ」
なんで。
「その顔、なんでいるんだって、思ってるん
だろう」
彼は晴れやかで不敵な笑みを浮かべてこう言った。
「助けられるのに、助けないのはおかしいだろう、君は私の大切な人なのだから」
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