第5話 勇敢

「ハハッ、やっといったか」


 リアムが逃げたのを横目で確認する。


「ふふうぅー、やるっきゃないか」


 彼は最初こそ動揺していたが、今は全くしていない風に見える。流石は元熟練冒険者といったところか。勿論、全くしていない訳ではないだろう。


 しかし、元冒険者としてこのシチュエーションに燃えない訳が無かった。


 ――あの時は逆だった。


 俺が逃げる側だった。当時の俺は情けないことに逃げることしか出来なかった。


 だけど、今は違う。リアム、大切な、七年も共に暮らした仲間を守る力がある。


 リアムのことを最初は可笑しな奴だと思った。二歳足らずで言葉をしゃべるし、弓や剣を持てば大人顔負けアタオカの技術を見せるし、見た目は凄い美人だし。


 ……いや、今でも可笑しいとは思う。


 だけど、感情の読めない彼は俺の身を案じてくれていた!


 それを仲間といわず何っていうんだ!


 俺の命をかけて守る相手として全く不足はない!


 彼はいつも肌身離さず身に付けていた剣を片手で抜く。いつも手入れをしていたため、新品同様に輝いている。


 竜が前屈みになった後ブレスを吹いた。


 懐かしい高揚感を胸にし、竜が吹いたブレ

スをギリギリで躱し、鱗と鱗の間を狙い足を攻撃する。


「はぁああ!」


 当てることは出来たが、あまりダメージを与えられたようには見えない。


 やっぱ、弱点の首の所をやらなきゃダメか!けど高さ的に届きそうにない。なら、ブレスを吹いてる時に狙うか!


 次の瞬間、彼は勢いよく走り出した。

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