第3話 異変

 あれから、約二年の年月が経ち、私は七つになった。ここの成人は十四才であるらしく、その半分の年を迎えたことで、彼が贈り物で、自作らしい、木剣をくれた。


 彼から借りていた剣は身体の大きさに合わない物で、鍛錬の時振りずらかったので助かった。


 また、彼は今年で四十四才になるらしく、年のせいか狩りに行く頻度が随分と減っていた。


 ……まだまだ、戦えると思うのだが。単純に体力が落ちたのと、思い込みだろうか。


「アルチュール、今日は狩りに行かないのか?」

「いや、今日はさすがに行くぞ」

「そうか。じゃあ準備をする」


 二年前からしている随分と慣れた準備をし、出発する。


 ここへ来てもう、七年経ったというのだ。妙に感慨深い。


 私はこれからも、彼と一緒に暮らしていくのだろう。しかし――、彼が居なくなったらどうするのだ。私一人でここで暮らせるのか?


 いや、技術面では大丈夫だろうが、生きていくにはそれ以外にも――精神的にもできていなければいけない気がする。


 そのできているとはどんなものかは分からないが、きっと、私には足りないものだ。


 考え事をしながら弓を打つ。獲物の首に当たったようだ。


「リアム、よくやった。――それにしても、本当に上手いな、最初は多少ぎこちなかったが今はもう百発百中といっていい精度だ。剣に関してもそうだ。もう、とっくに俺を超えてるぜ。やっぱ、こういう奴を天才って言うんだろうな」


 彼がそう言い、かか笑いをする。


 何だろう、天才と言われるのは釈然としない。褒め言葉のはずなのだが。


「それより、この足跡?一つ一つが大きく、一歩の幅も非常に大きい」


 草原の草が十メートル毎に丸く倒れている。


「んー、何だ。ッ――、こんなんみたことない大きさだ。遭遇したら堪ったもんじゃぁない!獲物を捨ててでも、すぐ家に戻るぞ」


 彼は真面目かつ真剣な顔をしていた。


「分かった」


 彼の言葉にしたがい最短距離で家へ向かう。


 歩いて走ってを繰り返し、半分くらい進んだとき、急に陰が降ってきた。

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