夜のこと

 少し頭が痛かった。いつもは癒してくれる音楽や文章も入ってこなかった。もう身体の中がそういうものでいっぱいになって飽和していた。それでもまだ脳の隙間になにか入れたがっている。情報の過食症だった。胃もたれしながら、それでもまだ足りないというのは脳がバグっているからで、糖質依存とまったく同じ原理だった。

 Twitterのタイムラインをずっとたぐっていた。眼球も痛くなってきた。

 自分を壊し続けて、そうやって何時間たっただろうか。少し眠っていたかもしれない。どれくらい寝ていたのかは分からない。目を開けて、つけっぱなしだった勉強机の明かりが眩しいと思った。深夜三時を回った。地震が起きた。布団に潜るまでもないような、いつも通りの暇つぶしの戯れ言みたいな地震で、どうせならすべて壊してくれればいいのにと思った。一瞬だけ、震度四にさしかかるくらいに揺れた。甘い期待の震動はすぐに止む。ただそのときだけは違って、部屋の隅にあったラジオを落っことした。ほこりを被っていたそれは地震の置き土産。ラジオの電源を入れてみた。僕は日本語を聴きたくなかったのでいつも洋楽と英語のニュースを交互に垂れ流している曲に合わせた。昔よく聴いていた。ドラムに合わせて膝を揺らした。背中のあたりが音に反応して、ひくついた。少し眠ったせいか、脳は音楽を許容した。頭の痛みも少しの間忘れた。


 目を閉じて、あいた唇の隙間に空白の音楽を流した。LoveとIとyouだけ聞き取れて愛の歌なのだなと思った。ただ異国の言葉で紡がれたそれはまったく自分の琴線には触れずに、らぶとあいなのか陳腐だななんて半分馬鹿にしていた。馬鹿な歌の方が詩としては悪くても音楽としては優れているんじゃないかなんて思ってもみた。

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