第5話 原点回帰

ステージ本番まであと数分。

マキは青空を見上げながら想いに耽っていた。


ずっと準備してきたステージパフォーマンスを

今日ファンのみんなの前でお披露目する。


自分にとってのファンとは何か。


自分を信じて待っていてくれた

オーディション当時からのファン、

最近SNSを通じて知ってくれたファン。

応援してくれるタイミングは違えど、

どちらも大切な存在だ。


感謝の気持ちと共に、

少しでも成長したことを伝えたい。

特典会は、わずか数秒かもしれないが、

私という存在をもっともっと知ってほしい。


そのためにはどうするかを考え抜いた。

ど素人だったオーディションの時とは違い

今はデビュー前とはいえタレントではある。

SNSの発信や立ち振舞いには気をつけている。

ファンサも偏りすぎないように平等に。

自分の魅せ方も工夫した。

ファンが撮ってくれた数々の写真も

SNSにアップしてモチベーションをあげる。


それでも。

他のメンバーにはない、

自分だけの武器が欲しい。

常に自問自答しながら日々もがいていた。


『私の原点…』


迷った時は、池袋サンシャインでの

最後の120秒アピールの動画を見ていた。


他の子たちと違い、

自分にはインパクトのある特技もない。


最年長であること、

夢を諦めないということ、

誰かに希望や勇気を与えること、

そのそれぞれを、衆人環視での緊張の中

必死に言葉に乗せて語っていた。


今現在でも、ここはブレていないはず。

言葉を声に出して発信続けることで、

その未来を現実を引き寄せると

ファンの誰かが言ってたっけ。


自分を信じてくれるファンや

何より自分が自分を信じなきゃ始まらない。


マキは、しっかりとその言葉を声に乗せて

ファンの待つステージへと向かったのだった。


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まだ名前のないアイドル あきゅお@430 @aquo_b

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