第3話 悪夢と覚悟

今朝もいつも通り、5時30分に目覚める。

これまでは早朝起きることに暗示をかけながら

眠りについていたが、今はアラームなしでも

自然に覚醒するようになっていた。


今日は待ち望んでいたファンとの

交流イベントだ。

あれから事務所に所属したとはいえ

まだデビューもしておらず

アイドルでも何者でもない自分に

会いにきてくれる人なんているんだろうか。


応援してくれるファンがいることも

頭ではわかっていても不安が募るばかりだ。


最近は、夢の中で自分の握手の列だけが

すぐに人が途切れ、必死に声をかけるところで

目が覚める。

全身で汗を掻き、瞳からはスッと涙が溢れ

そして夢と知って安堵する。


最年長として。デビューを目指しているが、

本当に自分のニーズはあるのだろうか。


デビューした先はどうなるのか。

常に自問自答の毎日だった。


それでも、もう二度と、

自分を信じてくれたファンを

悲しませるようなことはしない。

所属が決まったあの日、

どんなことでも全力でやると誓ったのだ。


『よし、準備するか』


少し気だるい気持ちを奮い起こして

両手で両頬をパンっと叩いて、

マキは立ち上がった。


その瞳には、自分の夢を叶えようとする

断固たる決意が宿っていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る