第10話 課題

「疲れた」


「ですね」


帰りの輸送機の中で私達は疲労で倒れていた。


「なかなかヘビーな任務だったな」


「僕もう動けませんよ」


「スースー」


びっくりなことにこれでまだお昼すぎくらいなんだよね。行動開始が早かったせいかもう夕方とかでも信じるよ。


「でも私達のチームは特に何かあった訳ではないですし、みんな無事で良かったですね」


「その代わり俺らは何も出来てなかったけどな」


「ちょっと私は活躍したよ」


「僕たちチーム単位で何も出来てないんですよ」


確かに今回の任務で私たちのチームは私が最初に腕を叩き斬っただけでそれ以外は何もしてないよね。どちらかと言うとサポート方向に動いていた気がする。白なんて前線をキープ出来てなかったし、奏の氷はすぐに壊されるし。一番活躍してたのが渚くんや陽菜ちゃんだと思う思うくらいには私達は特に何も出来なかった。


「ちょっと傷つくよな」


「防御を渚くんに任せ気味なのがいけないと思う」


「私達の異能力は小春さんのように便利ではないのですよ」


《そうだよ小春、みんな貴方のように自在に異能を扱えないのだから》


いつの間にかイフリータも自然と会話に入ってくるようになってるし、てかみんなには聞こえてないみたいだから会話しずらい。


〈まもなく着陸体制に移ります、座席にご着席をお願いします〉



無事に帰ってこれたがとてつもなく疲労が襲ってきて私達はその日は自室でみんな休んだ。


翌日


「おはよぉ...」


「おはようございます小春さん。ですがこの時間帯だとこんにちはが正しいですよ」


寝室からリビングに出ると奏だけが紅茶を嗜んでいた。


「他のみんなは?」


「まだ寝ています」


「寝すぎなんじゃないの?」


「小春さんが言いますか」


ココアを作り奏の隣に座って時計を見ると11時を指し示していた。私の疲労はなんとか回復して今では体の調子は良いくらいだ。


「奏は早起きだね。すごいや」


「私は先日の作戦では何も出来ませんでしたから」


あれ?なんか雲行きが怪しいぞ。確かに昨日は奏が異能力を使ってるところをあまり見なかったけど別に貢献してなかった訳ではなかったと思うけど。


「まぁ前回は主役が04Dの人達だったしね。しょうがないよ」


「主役?何を言ってますの?」


「何言ってんだろ私?」


とりあえず前回の任務で各々課題があったと思うから克服していこうか。チーム全体としては防御力の強化かな、ある程度の攻撃は自分で防げるようにしないと。渚くんに全てを任せていると完全に攻撃に踏み切れない時が多々あったしのんとかしないと。


「奏は氷で壁とか生成出来ないの?」


「私の力は何も無い所から氷は生成しずらいのです。基本的には植物を氷らせる能力だと思っていただければ」


そういや奏は氷に華で【氷華】なんだっけ?植物を氷らせる能力か、それなら陽菜ちゃんと相性が良いのかな?


「陽菜ちゃんとは何度か連携の練習をするのですが、どうしても氷が彼女をおおってしまいそうになるのです」


「それは奏が制御できそうなの?」


その問いかけには奏は答えずに俯いたまま少し静かな時間が流れた。これはなんだか難しい話になりそう。


「なんだお前らそんな深刻そうな顔して」


白が部屋から出てきた、でも寝間着ではなくジャージを着ていてどこか行くのだろうか?


「どこ行くの?」


「どこでもいいだろ」


そのまま出掛けようとしているので少し引き止める


「ご飯食べてないでしょ。食べないと」


「外で何か食べるよ。それじゃ」


そのままどこかへ行ってしまった。う〜ん、帰ってからみんなの様子が少し変だ。もしかして活躍出来なかったのが結構きてるのかな?


「私も、少し外の空気を吸ってきます」


「あっ、うん、行ってらっしゃい」


どうしたものかな?


「小春さんどうしたのですか?」


「渚くん、おはよう」


「小春ねぇ、おはよう」


「陽菜ちゃんもおはよう」


深く考えてもしょうがないからとりあえず朝ごはん兼昼ごはんを作ろうか。お得意の目玉焼きを作って食べさせた。ここのコンロは電気タイプで使い方が分からなかったので異能力を使って調理しました。


《私の力を調理に使うのはやめて欲しい》


「文句があるならこのコンロに言いなさい」


洗い物をしているとイフリータが愚痴をこぼすがそんなの知らないよ、使えるなら使うのが私よ。


「そういえば白さんと奏さんはどこにいるのですか?」


「知らない。二人とも外に出ていったよ」


「陽菜も遊びに行きたい!」


多分遊びには行ってないと思うよ。でもこのままずっと部屋に籠ってるのも良くないよね。でもどこに行こうか?


「それでは僕、行きたいところがあるのですが」


「ん?どこに行きたいの?」


「それはですね....」



「まさか図書館とは思わなかったよ」


機関内にある図書館に私達は向かった。私と陽菜ちゃんにとっては少し退屈だけど渚くんはそうでもないみたいで目を輝かせてビシッと並べられた本に興味津々って顔に書いてある。


「私達はあそこの児童コーナーで遊んでようか」


「うん」


角にある児童向けの本と遊び場があるところで暇をつぶすことにした。


「ここの立地どうなってるのよ。児童コーナーの窓から筋トレジムが見えるんだけど」


図書館は2階にあってジムは1階だけど上から少し見えてしまう。少なくとも幼い子供が見えていいものではない気がする。みんな半裸でバキバキの筋肉を露出しているし、教育に悪いと思う。そんなこと思いながらジムの様子を見ていると1人見覚えのある人が目に入った。


「あれ白じゃん。あんな所に行ってたのね」


白の筋肉は他の人と比べてゴツくはない。むしろあの身体でどうやって普段あのパワーを出してんだろって思うレベル。


「アイツも何か思うところがあるのね」


そこからは特に何かある訳でもなく二人で積み木とかで遊んで、渚くんは高校の数学の参考書を借りて終わった


「渚くんそれ分かるの?」


「はい、分かります」


「うっそー...」


私達が廊下を歩いていると見覚えのある人達とすれ違った。高身長の炎髪のロングと相対的にもっと小さく見える紫髪の女の子達。


「よぉ!小春じゃねえか」


「それとおチビ達ですね...」


「やぁ二人とも、なんだか嬉しそうだね」


九鬼と忍が私服で歩いてきた。外にでも行ってきたのだろうか?


「九鬼さんと忍さん、こんにちは」


「こんにちはー」


流石小さい子は礼儀正しいな。にしても二人の服装が気合入ってる気がする特に忍の服が。いつもよりも顔の血色もいい気がするし微かに香水かな?いい匂いがする。


「4Dの方は様子どうなの?」


「様子ってのは風丸とかのことか?あいつらは寝てるよ」


「君達が行動しているのに?正直一番疲れてたんじゃないの?」


「私達は別にそこまで疲れていませんね。どちらかと言うとスクナとかの方が疲れてますよ」


《いい迷惑ですよ本当に》


《俺たちが暴走したばかりにすまんなスクナ》


《あんたらも大変だな》


イフリータがサラッと会話に参加してるんだけど誰と話してるのだろうか、スクナ?


「ちょっと待て今誰が喋った?」


「知らない第三者がいましたね」


「えっ?二人とも聞こえるの?」


「あの〜みなさんどうしました?」


話について来れてない人が二人いるので一旦場所を変えよう


「ごめん二人とも、先に部屋に戻っててくれない?直ぐに私も戻るから」


そうしてジュースを買って外のベンチに腰を下ろした。


「話を整理しようか。まず私のが酒呑童子と茨木童子でしょ?」


「そして私にはスクナがいて」


「私にはイフリータがいると」


《なに混乱しているのですか》


《いきなり登場して当たり前かのようにいるけど私達は一応異物なのよスクナ》


《そうだよ、俺達の世じゃないってお前が言ったんだろ》


イフリータ達がうるさいせいで全然話が進まない。これから書かなくていいかな?特に重要な話をしてる訳じゃないし。


「いいんじゃない?」


「どうした小春?」


「なんの肯定ですか?」


「いやっ!なんでもないよ」


今日は天からの声がよく聞こえる気がする。私も幻聴が聞こえるくらいには疲れてるのかな?


「まぁ深くは聞かないよ。とりあえず今は情報を集めよう。それしかできることがない」


「先輩に聞いてみるとかしてみる?」


「それはいい案ですね。機会があったら聞いてみましょう」


これからはイフリータ達のことの調査も課題だな。そうして私達のミニ会議はもう日も暮れてきたので解散して部屋に戻った。部屋に戻ると白が夕食の準備を進めていた。奏はまだ帰ってきてないようだ。こんな遅くまで何してるんだろ?そして夕食が終わっても奏は帰ってこなかった


「もう7時だっていうのにまだ帰ってこないのかよ」


「私心配だから探してくる」


「僕も行きます」


私たちが席を立った瞬間玄関のドアが開いた。開いたと同時に部屋の気温が一気に低くなった。


「奏!こんな時間まで何をって冷た!」


奏の手を握るとまるで生きているとは思えない程冷えきっていた。顔色も良くない


「ちょっと!早くお風呂のドアを開けて!奏!とりあえずお風呂入ろ!話はそれから!」


火傷しない程度に私も異能力で暖めながらお風呂に連れて行って服を脱がせて湯船に浸からせる。ドライアイスを水につけたように白い煙がモクモクと出てくる。


「温かかったお湯が一瞬でぬるま湯に....」


「ありがとうございます小春さん」


奏がか細い声でつぶやく。これは結構詳しく話を聞いた方がいいような気がするがまずはゆっくりさせよう。ぬるま湯に手を入れてまた温度を上げる。だんだん髪が湯船に浮くようになってきた。もしかしなくても髪の毛が凍ってたようだ、なんてこったい。


奏の体温が戻ったところでベットに寝かせてあげた。見た感じだと大丈夫そうだ。


「あいつ、一体何をしてたんだ?」


「さぁ?私は知らない」


「後で本人から直接聞きます?」


「カナねぇ大丈夫なの?」


これは一旦みんなで話し合おうか


次の日...


「おはようございます。昨日は申し訳ございませんでした」


「おはよう奏。体はもう大丈夫なの?」


「えぇ、お陰様で体はもう問題ないです」


「奏も回復したみたいだし話し合いを始めようか」


そうして第一回4Eチーム会議が始まった


………

……

チーム会議中....

……

………


「なるほどねやっぱりみんな、特に白と奏が前回のことを気にしてるんだ」


「早く強くならいとまた何も出来ないなんて事はないようにしないと」


「そうです!私達は一般人を守るためにここいにるのです!」


二人の言う事は正しいけど間違ってもいそうな気もする


「活躍するしないは敵を倒すだけでは測れないよ。敵を誘導したり仲間を守ったりすることも十分活躍しているよ。それと私達もただの人だ、一般人だ、ただ少し不思議な力が使えるだけで他の人と変わらないよ。失敗だってするし、間違いだってあるよ」


「でも私達は異能力者で!普通の人とは違います!だから!完璧でないと!」


「だから言ってるでしょ、一般人と変わらないって。最初から完璧な人間が居ないように。最初から完璧な異能力者は居ないんだよ!私達が異能力を授かってどれくらい経つ?多くても3年程度だよ。何十年かけても完璧な人間が居ないのに。数年程度でなれる訳ないじゃん」


「じゃあ私は何も出来ないのですか?」


「出来るでしょ?短期的には今ある手札で自分の完璧を目指すの。手札を増やすのはもっと長く、少しずつ増やしていくの」


私が教えてもらったことをそのまま言っただけだけど今の状況だとこれ以上ない解答だと思う。頼む!通ってくれ!


「わかりました、小春さんが言うなら」


どこか納得いってない様子だけどなんとか了承してくれたようでひと安心する。あー疲れた。こんな時は


「それじゃあみんなで出掛けようか」


「えっ!?俺筋トレに...」


「筋トレに一日使う気?午前中くらいいいでしょ。奏も異能力の強化は午後からね!」


私達は東京の街に繰り出した。東京スカイツリーとか浅草とかに行って十分楽しんだ

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