第7話 化物討伐
〈総員、配置についたか?〉
〈04D、問題ありません〉
〈Eも大丈夫です〉
日が昇る前から行動を開始して現在午前6時を回った頃だ。私達は目標から50m程離れたところで待機中だ。地平線から太陽が顔を出してきて周囲が明るくなってきても化物はまだ活動を開始していない様子らしい。同時に奇襲して雑魚が出てくる前に仕留めたいようだ。猿型の化物は仮想戦闘で何度も戦ってきたから特に問題は無いと思いたい。
〈目標はまだ寝てるよ。随分と寝坊助な化物だね〉
〈翔渡、攻撃隊を発進させろ。俺の合図と共に全員で叩くぞ〉
〈了解、じゃ後は頼んだよ。俺はここから動けないから〉
5分もしない内に空には大量の航空機で埋め尽くされてレシプロ機特有の音でめちゃくちゃうるさい。
「あれ一体何機出してんだろ?」
「分かりませんね。とりあえず沢山ってことで今は集中しましょう」
白の問いかけをあっさり切り捨てる奏さん流石っす!
〈全チーム突撃準備、突撃まであと5...4...3...〉
武器を構えて異能力発動の準備をする。ゼロと共に焼斬ってやる。
〈2...1...Go!!〉
異能力【火炎】『炎閃』!
森の中を私の最速で直進する。邪魔になる木は容赦なく焼き尽くしてひたすらに進む。
「目標捕捉!その左腕を焼斬る!」
猿型の脅威は強大な腕力、そして他の化物呼ぶのにも腕を使うんだってね!をなら腕を落とせば確実に有利をとれる!そして私の炎ならその厚い毛ごと焼斬れる!
「ぶった斬れろ!」
私の刀はちゃんと化物の左腕にクリティカルヒットしそのまま斬り裂いた。
「浅かったか、完全に落とせなかった。けどその腕じゃもう使い物にならないだろ」
化物の左腕は落ちずに肩から垂れ下がっている。もう使えないのは火を見るより明らかだ。このまま右も———
「ガァァァ!」
今まで聞いたことの無い咆哮と共に化物が暴れだした。あまりの音量と振動で私が動けずにいると化物が私に巨大な拳を向けてきた。
『炎壁』!
(ヤバっ!これ間に合わ)
異能力【鬼】 【虎】
「鬼人化!!」 「ガオォォ!」
頭に角が付いてる炎髪の人が拳を拳で弾き返すと虎が化物に爪を立てて顔に爪痕をつけるとすぐに上空から無数の飛行機が急降下して化物に爆弾を落としていく。九鬼さんと虎子さん、それに翔渡先輩の攻撃機が来てくれたようだ。
「---------」
「------」
何言ってるのだろうか?口は動いているのに何も聞こえない。何も聞こえない?声だけじゃなくて、化物が倒れる音も拳のぶつかり合う音も聞こえなかったのか?
「--------」
「------」
他の人達も追いついてきて倒れた化物を取り囲むように並ぶ。私も参加しようと立ち上がろうとしたが後ろから頭を掴まれてそのまま後ろに倒れてしまった。
異能力【生命誕生】
「---る?---をして。聞こえたら返事をしてね」
「ふぁい」
陽菜ちゃんが私の耳を抑えて異能力を使って私の鼓膜を治してくれた。
「お前ら良くやってくれた!一旦俺らに任せろ!」
後から来た人達が三谷先輩の指揮の下統制のとれた動きで手負いの化物を叩く。もうこれで終わるんじゃ...とも思ったけどそう簡単にはいかないらしい。
「あっこら!逃げるな!」
白が叫ぶように化物が逃げ始めた。
異能力【虎】【鬼】【風】【火炎】【身体強化】
『虎化』『鬼人化』『追風』『炎閃』『集中強化』
機動力のある異能力を全て使って追いかける。この人たち以外は風丸くんの追風を使って加速している。みんなが想像するささやかな風じゃなくてもう人が浮かんでるもん。上空からは無数の航空機が化物を追っているし相手は恐怖でしかないよね。
しばらく追いかけていると化物の背中が見えるようになってきた。どうやら今は立ち止まっているらしい。
「見つけたぞ!今度こそ奴を仕留める!」
異能力【危機感知】
「全員警戒!なにか来るぞ!!」
真人先輩が叫ぶと皆足を止めて構えると化物が大量の細かい岩を投げてきた。私の周囲はお得意の炎壁で岩を灰にしたからなんとも無かったけど、他のところは割と損害が多い。まず先頭でタンク役の音綺先輩が複数の岩を受けて血だらけで倒れていて、虎子さんも白い毛並みが所々赤い斑点をつくって座り込んでいるし九鬼さんも忍さんと藤野さんを庇う形で背中がボロボロになっていた。前衛をやってる人がほとんど戦闘不能になってしまった。
〈おい!どうした!?状況を説明しろ!〉
翔渡さんが航空機を介して通信を繋いできた。
「攻撃を受けて負傷者が出ています。時間を稼いでください!」
〈了解!4番から10番隊まで急降下爆撃を開始する!その後は低空で旋回、注意を引き付けろ〉
沢山の航空機が化物めがけて突入していく。爆弾が炸裂する音が鳴り響く中で負傷者を治療をしようとしたら
異能力【血液操作】
「あっ、危なかったです」
音綺先輩の血溜まりが吸収されたかと思うと本人は何事も無かったように立ち上がった、しかもそれだけじゃなくて
異能力【虎】『解除』
「やっぱり岩は痛いですね」
虎の姿から人に戻った虎子さんは身体は何ともなくて傷一つ無かったし
異能力【治療体】
【鬼】『人喰』
「九鬼、私の右腕をあげるので早くその背中を治してください」
「ありがとな忍」
「忍!早く傷口を見せなさい!再生させるわよ」
信じられない光景を目の当たりにした気がする。ある程度異能力とかは聞いていたけどこれ程とは。てか九鬼さんの食うってそっちだっんだ、私てっきり....って何考えてるのよ。今は戦闘に集中!
〈ねぇもう上昇していいかな?そろそろ限界なんだけど〉
「良くやった翔渡、こっちは大丈夫だ」
〈よし、じゃあ一旦上昇させるぞ。あいつも疲れて地面に手を着いてるし〉
【危機感知】
「ダメだ!翔渡!」
再び化物が投石を始めた、しかしそれは私達ではなく上空に向けて放たれていった。そして空に大量の閃光がはしる。それと共に鉄片が落ちてきた。
「まずいな」
「翔渡!大丈夫か!?返事をしろ!おい!翔渡!」
何をされた?身体が動かない。
〈返事をしろ!翔渡!〉
通信は繋がっているから観測機は無事のようだあとは隊長機も無事だな俺が今生きているから。けど大量の攻撃機が撃墜された。この感じだと200機程度か?だいたい3分の2か...油断した...全機上昇しろ、これ以上一気に減らされたら俺の身体がもたない
「まだ生きてるよみんな、俺はまだ生きてるから、奴を早く倒して」
残りの航空機は爆装機20、銃装機が70くらいか、帰還中の機体もあるし、戦場はもっと少ないか。100機もあれば十分って?俺の航空機は実物よりも小さいから量が必要なんだよ!
綺麗とは言えない花火大会が開催されている中私達は化物に向かって突撃しているがこれが近づけない、右腕だけのはずなのになぎ払いの時の風で吹き飛ばされるし、進行方向から岩が飛んでくるのだ。
「皆さんタイミングを合わせて突撃ましょう。突風攻撃は僕の風が何とかします」
風丸くんの風がどうにか出来るとは思わないけど対抗手段がこれだけしかないし...もっともな提案だけど。
「お前が防ぐために現在の防御力を下げないといけないのはわかるよな?全力で異能を使えるように障害物を減らさないといけないからな。それで防ぎきれなかったら?成功したとしてもお前の身体はどうなる?最悪死ぬぞ」
三谷先輩ちょっと怖いっす。でも言っていることは間違ってはいないと思う。流石に相手が悪すぎる、無駄死にするだけのような気もする
「三谷先輩!私が盾になるから!風丸をいかせてやってくれ」
「私の体はどんな怪我でも即座に治せます!だから!」
「九鬼や忍だけじゃなくて04Dで守りますのでどうか」
仲間って良いね。こんな時に頼れる人がいるのはどれだけ心強いか。あのチームは生存力の高さでこの地に来たんだ。そのチームが防御に専念したら大丈夫でしょ。
「風丸、覚悟はあるか?この戦いの命運を握る覚悟が」
「あります。何があっても皆さんを無事に届けてみせます!」
命を賭ける覚悟が風丸くんには出来ているらしい。
「全員俺の異能効果範囲内に来い、固まって突撃だ」
異能力【統制】
三谷先輩に近づくにつれて自分以外の人がどう動くのか分かるようになっていった。そして自分が次にどう動くべきかも。
「みんな集まったな。それじゃあ、行くぞ!」
一斉に突撃していくと同時に投石が再開されて正面から無数の岩が飛んでくる。私は同じようにして岩を灰にしていく、先頭を走るのは虎子さんでその上に風丸くんが乗っていて九鬼さんが守るように横を走って、忍さんは刃物で自分の指を切り離して時折九鬼さんに食べさせて藤野さんがそれを再生させると。はたから見たら軽く恐怖映像なのかもしれない。
「くるぞ!風丸、頼んだぞ!」
異能力【風】『旋風陣』
空気同士のぶつかり合いなのでめには見えないが、音や感覚でわかる、凄まじい戦いが目の前で繰り広げられているのだって。それでもそんな長くは続かずにすぐに風は弱くなって次第に何も感じれなくなった。私達はその場に留まれて、静寂さだけが残った。
「突撃ー!」
三谷先輩の叫びで私達は化物へ攻撃を仕掛けるが04Dは九鬼さんしか来れてなかった。急いで振り返ると風丸くんが血を流して倒れている。その治療のために藤野さんと忍さん、そして守るように虎子さんが見えた。
「振り返るな小春!目の前の敵に集中しろ!」
「うるさいね!白には言われたくないね!」
「仲がいいのですね」
「僕達のチームはなんでこうなんだろ」
「でも楽しいね!」
いつも通りの会話を交わしてさぁ戦闘再開だ
〈俺の攻撃隊も参加させてもらうぜ〉
翔渡先輩も復帰したし、早く終わらせて風丸くんの様子をみてあげないと。
特異個体であっても手負いの状態なら大して強敵にならずに風丸くんから少しずつ距離を離しながら追い詰めていった
「奴はもう瀕死だ!ここで決めるぞ!」
「はい!」
息をいれなおして再び構えると化物の様子が何か変だ、瀕死だから全体的に項垂れているように見えるがそうではない気がする。
「またなにか来る!全員離れ——」
真人先輩が注意した途端化物が叫び、空気が揺れた。
(またこれ、脳が揺れる感じがして嫌なんだよな。でももう既にくらってるなら対処は出来る)
叫び終わった瞬間に斬り捨ててやろうと思ったが化物は攻撃はせずに走っていった。
「待って!そっちは!」
化物が走っていく方向には風丸くん達が!
「待ちやがれ!」
九鬼が直ぐに追いかけていき、私も後を追う。
「虎子!そいつを近づけさせるな!」
〈ガルル!〉
虎子が交戦するが、虎子さん自体にあまり攻撃力などはないためすぐに弾かれてしまった。非常に良くない状況になりました。今化物の目の前にいるのは戦闘向きでは無い二人とと現在意識の無い風丸くん。私達もまだ距離がある。突進系の技でもまだ届かないし他の人を巻き込んでしまう。
「間に合え!」
心の声が漏れてしまうほど必死になって後を追うと前から藤野さんが飛んできてその先から声が聞こえてきた。
「何するの!離して!」
「忍!」
忍が化物の手の中にて必死に暴れているが全く歯が立たないようで足をジタバタしているだけであった。そんなこと気にせずに化物は忍を顔に近づけて口を大きく開け始めた。
「ちょっと!何してるのさ!やめて!」
今すごく残酷な事が行われそうになっている。止めないといけないのに、今私の手札にはそんなものが無い!忍の下半身が口の中に入れられて口が閉じていき、忍の腰下あたりに歯が当たる。
「やめろー!!!!」
横から聞こえる九鬼の悲痛な叫びを聞いて私も泣きそうになる。
(誰か、助けて...)
今までで一番強く願ったかもしれない、けど神様はなんにも応えてくれないんだよね。現実はなんとも非情だね、けど何かは応えてくれたようだ。
…
……
………
《汝、我の助けが欲しいか?あの者を助けるための》
「ええ、助けてくれるのか?」
《汝が望むのなら我は助けてやろう》
「ありがとう、そういやアンタこの前の奴よね」
《アンタでも奴でもない、我の名は———》
………
……
…
「私に力を貸せ!イフリータ!!」
異能力【獄炎】『爆石』
落ちていた石を拾って思いっきり投げる。石は炎を纏ってものすごい勢いで化物の横腹に命中し、そのまま爆散した。化物は忍を放したがまだ動く。そしてまだ忍を食べようと腕を伸ばして足を掴む。
異能力【風】『風刃』
いきなり忍の掴まれていた足が切断された。そして忍が宙を舞って私達の方へきた。
「すみません。僕の力では切断する以外に方法はありませんでした。早く藤野に治してもらいましょう」
空から風丸くんが降臨した。そんな表現が似合うようにゆっくり降りてきた。
《あの子ももうすぐに目覚めるかもね》
「イフリータ?それってどういう?」
「小春さん、どなたと話しているのですか?」
いつの間にか奏達も追い付いてきていた。
「九...鬼....」
忍が口を開く、傷口が開くから喋るなと言っても喋り続ける
「私の.....体が..アイツに.....食べ..られた...という事は」
その言葉を聞いて頭に想像したくない事態を思い浮かべてしまった。忍の体はなんでも治す薬のようなものだ。そんなものを体内に取り込んだやつはどうなる?いや、もしかしたら化物には効果なしかもしれない、でも私達は元々裂け目の影響でこの力を手にした。それじゃ裂け目から出てきたコイツらにも同じようになるんのでは?
「ガァァァ!!」
予想通り化物は元気100倍と言わんばかりの元気さを見せつけてくれる。しかもゴリラのように胸を叩いて次々と雑魚どもを呼び出している
「すみま...せん。私の...せいで」
「喋らないで!今治してるでしょ!」
「じっとしててね」
相当責任を感じているようで涙を浮かべて血を吐きながら喋る忍はかなり痛々しい
「気にするなよ忍、お前をこんなんにしたアイツは私が潰してやるから」
九鬼さんが出会ってから一番冷たい声で言い放つ。雰囲気も変わってなんだか少し怖い。
《小春!ソイツを抑えろ!面倒臭いのが出てくる前に!》
「えっ!?」
突然の命令に困惑していると九鬼さんが異能力を発動させた
異能力【鬼】『鬼化』
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