第5話 防衛隊員の休日

ここに来て一ヶ月が経過した

私は一応は隊律違反なので謹慎を言い渡されたが01Aの皆さんのおかげで一日程度で済んだ、小早川先生にはめっちゃ怒られたけどね

チームメイトの仲も良好、戦闘の方も並程度の化物なら個々人で対処可能まで向上した

それに加えてチームでの連携攻撃も磨きがかかって都市部周辺の防衛任務なら参加の許可がおりるようになった

都市部周辺は災害級以上の裂け目は発生しないように機関の技術によって抑制されている

なので都市部の裂け目は稀にしか出来ないし、できたとしても小さい化物が二、三匹出てくる程度のものだ

この装置は各県庁舎在地や政府の指定する都市、発電所等のインフラ施設に設置されている

なので都市部に裂け目が発生する事自体ちょっと問題だったりもするのでメディアからは厳しく追求されたが、犠牲者が出なかったので向こうもあまり強くは出れない様子、世間の評価は元々異能力者が善い印象を持たれていないので否定的なものが多いが少なからず私達を善く思ってくれている人もいるので7:3ってところだ


「やっぱり俺らは一般人から見たら化物と同じなのかもな」


テレビを見ながら白が呟く

手にはホットミルクが入ったカップが握れられて湯気がたっている


「そうですわね。まぁよく分からないものが怖いのは人間の本能のようなものですし」


紅茶を飲みながら奏が一言

続けて渚がコーラをテーブルに置いて


「僕達も訳の分からない力を使って化物と対峙しているので同じモノとして見られるのは今に始まった話ではないですよ」


最もらしい言葉だ、でも私達は化物のように危害を加えるつもりは毛頭ないし、護るために力を使っているのにこの評価は少々癪に障る


まぁ、そんな事は置いておいて今日は休日です

今までも何回か休みはあったけど交流が浅かったり、そもそもお金がなかったりでみんな気をつかってあまり外出とか出来なかったけどこれだけみんな打ち解けて、給料も貰ったから遊びに行けるよね


「まぁまぁ、世間からの評価なんて気にしないでさ!遊びに行こうよ」


そうして私からの突然の提案で私達は外出する事になりました


「本当に隊服じゃなくていいのですか?先週、私達のが完成して届きましたよね」


可愛い白のワンピースを着た奏が聞いてくるけどそんな事はどうでもいい!

それよりも奏の可愛さの方が重要だ!

私も驚くレベルの白い肌にちゃんと手入れされた腰くらいまである銀色の髪に青くて吸い込まれそうな程綺麗な瞳で悔しいけど美少女って単語は奏のためにあるようなものだね


「武器は持てないけど別に元々休みなんだし、関係ないよ」


休日くらい異能力者である事を忘れたいよね

という訳で各々私服で外へ行く


白は紺のジーンズに白いシャツで真ん中に“漢”と書かれている...隣で歩きたくないかも

渚くんは黒の半袖にベージュの半ズボンで左胸あたりに小さくロゴが入っていた...白よりもいいかも

陽菜ちゃんは黄色のシャツにフリフリのスカートで頭にお花のカチューシャをつけてとてもプリティ

私は和装っぽいけど現代味のある服で黒に赤のラインが入っているものにした


「しゅっぱーつ!」


「「おー!」」


機関を出て、日比谷公園を抜けるとそこには!


「来たよ!銀座!」


そう!銀座だ!

東京に来たら絶対行こうと思っていた所の一つでお金のある今ならここで買い物だってでき......


「さっ、三万円.....こっちは五万円...あれは十万!?」


「大丈夫ですか?」


「小春ねぇ、どこか悪いの?」


高すぎる、都会ってこんなに高いの?服も靴も食べ物も何もかもがとんでもない値段が書かれている

私が甘かった都会にはもう慣れたと思っていたけど、そんなことは無かった

けど、ここが踏ん張り所だよ小春!

ここで一歩踏み出したら、都会人の仲間入りになれるかもしれない

それなら私は!————


「ありがとうございました」


「(お財布が)燃え尽きたよ、真っ白にね」


アクセサリー系の小物を三品買って私の財布は息を引き取った、享年5年....また息を吹き込んであげるから......来月くらいにね

私が空を仰いでいると大荷物を抱えた奏が店からでてきた


「小春さん、何を買われたのですか?」


「それはこっちのセリフよ、奏こそ何を買ったの?」


そうすると荷物を下ろして言う


「久しぶりに来たので少し買いすぎてしまいました。以前は月一で買い物をしに来たのですが、異能力が発現して以降来れていませんでしたので」


えっ、月一でこの値段の買い物を?しかもこんな沢山買ってたの?

奏への謎が深まりました


「そろそろお昼ですね、どこかで昼食をとりましょうか。黒服、私達の買ったものを機関まで届けてください。くれぐれも乱暴な扱いをしないように」


どこからともなく黒い服を着た人達が来て、私と奏が買ったものを運んでいく


「それではこんな所に興味の無い人達と合流しましょうか」


そうして少し南へ行き、浜離宮恩賜庭園の花畑へ足を運んだ

到着するとそこにはコスモスが咲いていてとても綺麗な風景で言葉が出てこなかった


「買い物は終わりか?」


目の前の絶景に見とれていると白に声をかけられた


「うん!終わったよ」


「何も買わなかったんだな」


不思議そうに私を見てくるが、私がそんなに計画なしにお金を使うタイプの人間だと思うなよ!

ちゃんと使い切ったからね!


「いえ、私達の買ったものは黒服の皆さんに運んでもらいました」


「お前やっぱりどこかの令嬢とかだろ絶対、そしてお前の苗字は黒崎だろ?もう確定だろ」


奏の家が気になるけどまた今度にしてとりあえずお腹が減ったので昼食を食べに行くことになりました

なるべく機関から離れないようにまた北の方へ行くがなかなかお昼のタイミングで営業中のお店が見つからない


「ほとんど夜からなんだな」


「そうですね、ここら辺は夕食に来るのがほとんどでしたが、お昼だとこんなに少ないのですね」


雑談しながら歩いているとお昼でも営業しているお店を発見


「なんのお店だろう?」


外観からはなんのお店かは想像出来ない、けどやっと見つけたお店なので昼食はここにした


..選択を間違えたかもしれないと席に着いてから思う

明らかにそこら辺のお店とは違う!

お寿司屋さんのようだけど私の知らない場所だ

そう回っていないのだ、何が?とか言わずともわかるであろう

絶対にそんじょそこらのお店とは格が違う

これは確実にお高いお店だ

そして今の私のお財布は氷河期に入ったばかりだ

この事から導き出される結論は!


「入るお店間違えたかも〜」


ガックリとうなだれていると渚くんが話しかけてくれた


「ここ、そこそこ有名なお店で結構高級な御店ですけど、もしかして知らなかったのですか?」


知ってたなら教えて欲しかったかも~

涙を堪えてメニューを見ると横に書いてある数字にまた涙が出てくる

横ではメニューを見ながら冷や汗かく白ととっても笑顔の陽菜ちゃんと楽しみでしょうがないって感じの渚くんといつもと変わらずに優雅に振る舞う奏が目に映る


「それでは今回は全て私が会計を持ちましょう」


奏が驚愕の一言を言い放つ

このクソ高いものを一人で!?

私と給料一緒だよね?さっき私よりも沢山買ってたのにまだ使えるの!?


「いや待て、俺は自分で払う。先月のように奢られはしないぞ」


心配になるほどの顔色で白が言う

奏が反論するがそれでも自分で払うと意思が揺らぐことは無かった


「僕も自分で....」


渚くんも便乗しようとしていたが年少二人は私達よりも貰っている額が少ないし、小学生は年上に甘えろとのことで即却下された


「小春さんはどうします?」


この流れだと当然聞きに来るよね!何となく予想できてたよ!

どうしよう断った方がいいのか?でも私にはあの額のお金を払う経済力は......


「お願い......します.....」


神よこの弱い私をお許しください

頼まれた側の奏は何故か知らないけど嬉しそうな顔をしていた


「うぅ...どれもお高いよぉ..」


「気にしないで頼んでいいですよ」


そう言って奏がどんどん板前さんに頼んでいく、中には私の知っている高い寿司ネタが混じっていた

私は何も言えずにそのまま居心地のいいはずの室内で生きた心地のしない時間を過ごした

しばらくして私の前に幾つかのお寿司が出された

私と奏は同じ物が、陽菜ちゃんと渚くんは玉子焼きとイクラとかが並べられた、白にはまた違う物が出されている


「コレ絶対高いやつだぁ...」


今まで見た物とは違ってこう....違う..なんて言うか.....違うんだよ


私達はお寿司を堪能しましたとさ

まぁ、私はそこまで味は分からなかったけど


「お会計はコレで」


そうして奏は何が黒いカードを渡していた、男子達はそれを見てヒソヒソと話している


「オイオイ、想像以上のブツが出てきたぞ」


「黒咲コーポレーションの名は伊達ではないですね」


初めてのお高いお店での食事はあまり味を楽しめずに終わりました

その後は機関に戻ってのんびりしました



防衛機関 参謀部


「火威焔、只今参上しました」


私が会議室に入ると既に三人が来ていた


「そんな面倒くさい感じはいいから、早く座れよ」


面倒くさいが口癖の小早川祐人


「焔さんいつもより早いですね」


落ち着いた声で話す秋山明香里あきやま あかり、悪い人ではないが後輩からは雰囲気のせいか少し怖がられている


「おぉ焔~相変わらずの仏頂面やの。ところでお主はいつになったら生えてくるのかにぁ?」


私の事をイジりながら訳の分からないことを言う楓猫葉かえで ねこは、異能力の影響で猫耳と尻尾が二本付いている


「猫葉、生えるってどういうことです?」


「お主とワシは同じモノを持っていると、ワシの勘が言っておるのだよ」


本当に何を言っているのだろうかこの人


「あれ?焔が居る。もしかして俺遅刻した?」


そう言いながら席に座るのは北崎康介きたざき こうすけ、茶髪にピアスとチャラついてる印象があるが、これでも真面目なやつだ


その後もどんどん人が入ってくる

みんな我を見ると焦ったように席に着いて少し話をすると安心したような表情をしていく


「よし、みんな集まったな。少し早いが始めよう」


モニターの前に立つのは篠田嵐しのだ あらし長官、防衛機関のトップだ


「なんとなく議題は予想できるが、今回は何を話すのじゃ?」


猫葉の言う通りなんとなく今回の議題は予想できる


「みんなも知っての通り、今年から裂け目の発生数が増加している事と本日十五時頃に長野県小川村で発生した大型の裂け目についてだ」


今年から異様に裂け目の発生件数が多い、おかげでこちらも人手が不足しているので地方とかになると迅速に化物を討伐できないことが多くなり、今回もそうだ


「そこにはもう誰か送ったのか?」


「被害の拡大を防ぐために02Eを現地に送りました」


つまりまだ戦力が必要みたいだ


「小早川、四期生の方はどうだ?」


小早川がとても嫌な顔をしながら立ち上がって資料を見ながら話す


「今期はかなり良いです。ほとんどの実力が一定くらいでまとまっていてそこに何人か頭一つ抜けた実力を持っているって感じですね」


先月に04Eの早瀬が化物と戦闘し、時間をしっかり稼いでいた、この事からも今期は期待出来る


「四期生のチームで地方まで行けるのはあるか?」


小早川は少し考えた後にまた口を開いて


「Aは問題ないでしょう。次点でD、Eですかね。Dは討伐できるかはともかく生存率が同期ではトップで特別警戒級の化物想定の仮想訓練では生存率97%を記録しています。Eは全体の攻撃力が高く、一体あたりの討伐速度はAをも超えます。しかし、長期戦となった際の損害率がどのチームよりも高い傾向があります」


なんか攻撃特化と防御特化のチームが候補に上がっている


「DとEで合同チームを組めばいけるか...?」


嵐長官が小さくつぶやくと地獄耳なのか猫葉が言葉を発する


「いいんじゃないそれで」


声のトーンとか態度を見ればとても無責任に思える発言だったがそれを聞いて嵐はしっかりと発言する


「DとEで合同チームを組ませて長野へ行かせる。04Aはまだここにいてもらいたい。小早川、この事を明日にでも伝えてくれ」


「了解っす」


ひとまず遠征組は決定したようだ


「次は異常発生する裂け目について......」

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