第3話 私!何もしてないのに!

「ルールは変更なし、寸止め勝利で行う。しかし、お前らはまだ訓練用の武器でも危ないので木刀でやってもらう」


「えー!」


冗談じゃない!

木刀なんかじゃ私の炎で灰にしちゃうよ


「私もそのような評価を受けるのは不服です」


白河隊長も異議を申し立てる

私もそんな評価されるのは癇に障るけど

そんな事より圧倒的不利を押し付けられる方が嫌だ

二人で少し言ってみたが


「ダメなものはダメだ。第一お前らの目的は化物の討伐であって今ここで戦うことではない。万が一にも俺が真剣を許してお前らに何かあったらどうすんだよ。怒られるの俺なんだよめんどくせぇ事によ」


小早川先生から地味に気迫のこもった調子で言われてしまった

その気迫に負けて私達は木刀でやることになった


「双方、構え!」


私も白河隊長も構える

私は刀を前に正面から白河隊長に向かって

白河隊長は少し半身で木刀を身体の後ろの方に置く


「はじめ!」


開始の合図がおろされ試合が始まった

勝負は一瞬、白河隊長の一撃を耐えるか、それで終わりになるか


『炎壁』!


私と白河隊長の間の地面から炎が噴き出す

私の炎の壁だ、私が出せる最大火力をつぎ込んだ

これで白河隊長も私に攻撃がしにくいはず...


異能力【光速移動】


私の炎に近づいてくるものが一つ感知した瞬間、壁の一部に穴があいた

そして白河隊長が一直線に私に向かってくる

私は少し油断していた為反応が少し遅れた

白河隊長の攻撃を受けきれずに私は後ろに大きく飛んだ

素早く受身をとって木刀を構え直す

また白河隊長が一直線に向かってきた

速さこそあるが、一直線に来るなら防御は出来る

そこから一撃、また一撃と攻撃をいなす


(反撃ができない、速すぎる)


攻撃はどんどん激化し、様々な方向から攻撃が繰り出されるようになった

そして


「うぐっ!」


私の腹部に木刀が入り込んだ

激痛が私を襲う、意識が飛びそうだ

けれどもこれで捕まえた


「なっ!」


私は白河隊長の腕を掴んでいたそれでこれなら反撃が出来る


「掴まえ....ましたよ」


異能力【火炎】 『滅却』!


異能力【光速移動】!


私の炎が発生するよりも先に移動して燃やされないようにされた

けど、その能力って直線かつ短距離にしか移動できないとみた

次に止まった時、私の炎がちゃんと捉えてみせる

わたしが思った通り速度が落ちたそれと同時に白河隊長を炎が包む


(よし、これで!)


「ハイハイ、ストップストップ」


いきなり体が浮いて手を離してしまった

炎も白河隊長から離れて散り散りになっている


「やりすぎだお前ら相手を殺す気か?」


小早川先生ゆっくり歩いてきた

私はゆっくり地面に下ろされ炎も完全に消された


「確かにお前らはすごいよ。あのレベルの戦闘は新人にしちゃよく出来てる。最終的な状況でみれば早瀬の勝ちだが、今回は白河の勝ちだな」


何も言い返せない

あの時私が腕を掴めたのは武器が木刀だったからだ

本来なら私はあの時体が二つになっていた

それを考えるとその後の攻撃もなんの意味も無い


「でも、状況を冷静に判断し行動するのはいい事だ。わざと攻撃を受ける度胸も今回は良い。けどな、実戦で死ぬ事を前提とした行動はするなよ。

ってのは自己満足でしかないんだからな」


「はい、先生」


軽くお説教をされていると寝ていた白河隊長がゆっくり立ち上がった

炎は発火してすぐに消されたためそこまで火傷とかは無いはずだけど


「ふふふ...はーっはっはっは」


突然笑いだした白河隊長が壊れたかもしれない

これは私のせいなのかな?


「いや〜、久しぶりにこんな戦いをしたよ。これほど興奮するのはいつぶりだろうか」


ルンルンで立ち上がって私の方へ来る

目の前まで来ると手を差し出しながら


「私の予感が当たったよ、早瀬さんいいね!」


私は手をとって


「白河隊長も強いですね、私も初めての体験でした。あと私の事は小春でいいですよ」


「それでは小春、これこら同期として友として互いに成長しようか」


「はい!白河隊長!」


立ち上がって見つめ合うと白河隊長の顔が少し赤くなってきた


「その、だな...私も名前で呼んでくれないか?

私の名前は白河燈しらかわ ともりと言うのだが..」


恥ずかしがっているのかいつもり小さな声でそう言う燈はAチームの隊長ではなく普通の女の子に見えた


「わかったよ!燈!」


名前で呼ぶと少し嬉しそうに笑った

そのまましばらくその状態から動かずにいると


「終わったか?早く訓練を終わりにしたいんだけど」


小早川先生が横から顔を近づけてきた

私達は驚いて先生から距離をとる


「そんな離れなくても.......」


先生が分かりやすくヘコむ


「あー!すみません!そんなつもりはなかったのですが....」


「申し訳ない、少々驚いてしまって」


「別にいいけど....」


私達はまた集められた


「これが対人戦闘訓練の例だ。あぁ何も言うな。お前たちが言いたいことは解る。だが言うなよ。アレはお前たちには出来ないから安心しろ。思いっきりやっていいぞ」


先生がとても疲れた様子で話す

それを聞いた人も納得というかそうだよなって雰囲気だ

私達そんな変な事はしてないのに


「それじゃあ解散していいぞ。でも白河と早瀬は残れ」


皆がそれぞれ解散していくそして私達だけになった

先生が1.5mくらいの棒を持ってきて私達に


「これからお前らに罰を与える!」


とか叫び出した

いきなりの宣言に私達が硬直していると


「どうした?早く自分の武器をとってこい」


さもこの状況で武器を持ってくるのが当たり前かのような口調で言ってくるが当然私達にそんな常識は無い


「聞きたいことは沢山ありますがまず、罰とはなんですか?」


燈がそう聞くと


「ん?一応お前らは対人戦闘訓練でやり過ぎレベルまでやったんだ当たり前だろ。許可した俺にも責任があるがここでお前らを処罰すれば何も面倒くさい事無くこの件は終わる」


「つまり私達は貴方の事後処理のお手伝いって事ですね」


「そうだ」


「それってつまり、私達は今から貴方が楽したいが故に何かやらされるんですか!職権乱用だ〜!」


私が騒ぎ立てると


「うるさい黙れ。元々はお前があのアホみたいな炎を出すからだろ」


と私の文句は切り倒された


「それで私達は何をすれば?」


「別になんてことは無いただ俺と打ち合うだけだ。分かったら早くそこの武器を持ってこい」


私達は武器を持って先生と向かい合った

私達は自分の武器を先生は棒を持って構える

この時に気付いたけど燈の武器って私の刀と似ているけど少し違うとこがあって先端が両刃になって刺突しやすそうな形になっていた


「双方、構え、はじめ!」


合図と共に動いたのは燈で光速移動で距離を詰める

相変わらず速い、私も目で追うのが精一杯

しかし先生は余裕で躱す身体を少し動かして燈の進行方向から外れる

そこに遅れてきた私が切りかかる

実践用の武器だから少し躊躇ってしまったがコレは当たる寸止めをしようとしたその時

私の腹部に何かが勢いよく突かれた


「ゔっ...」


そのまま私は後ろに突き飛ばされてしまった

先生の方を見ると棒を突き立てていた

なるほどさっきのやつは棒か

私が反省していると今度は燈がまた先生に向かっていった

先生の背後から光速で近づく

しかし、先生は棒を振り回して燈を叩く

二人とも一撃で動けなくなってしまった


「おいおい、これくらいで休んでんじゃねぇぞ。お前らの本気はこの程度か!」


「なんの、これしきのことで!」


異能力【火炎】『炎撃』


刀身から炎を纏わせながら刀を振る

しかし、それも燈の速さを見切る先生には簡単に避けられる


異能力【光速移動】


光速で連撃を加えても全てあの棒で防がれるか、避けられる


「そんな速いだけの攻撃も、火力だけの攻撃も私には届かないよ」


先生に一撃も与えられないまま時間だけが経過する

私達は結構異能力を使ったせいでどんどん疲弊していった


「だから言ってるだろ、速いだけの攻撃も火力だけの攻撃も届かないって」


「そんな...事...言われても」


「私達にはそれしか無いので」


そしたら先生は少し困った顔をしてこう言った


「だから!速い!火力は当たらないって言ってるだろ!」


さっきからずっと言ってるけどなんの意味があるんだろう

私が少し考えていると燈が私に近づいてきた


「小春、理解したよ」


「何を?」


「小早川さんは速い、火力と言った。つまり速くて火力のあるものなら」


「いけるかもって?でもどうやってやるのさ。私の異能力は燈みたいに速くは出来ないし、燈だって私みたいに火力は出せないでしょ」


「でも二人でやればいけるって」


「ほんと?」


「やる価値はある。とりあえず小春は最高火力で、私が小早川さんを誘導するから」


「やってみるよ」


「私を信じてね」


そうしてまた武器を構える


「作戦は決まったか?じゃあ今度はこっちからも!」


先生が私の方へ向かってくる

けど私は刀で防御する姿勢はとらずに刀を後ろに回して攻撃する構えをする

そして視界を真っ暗にして体に流れる力を感じる


「戦場で目を閉じるな!」


そんな声が聞こえた気がしたが、気にしない

感じろ........私の力を


「小早川さん!貴方の相手は私です!」


燈が先生と交戦を始めた

まだ..........これじゃ足りない

もっと...もっと.........もっと!


「汝、我の力を欲すか?」


誰だ?知らない声がするけど知っているような気がする

そんな事はどうでもいいか、今はもっと力が必要だ


「えぇ、力を貸してくれる?」


「当然だ、我は汝、汝は我、汝が力を欲するならば我は応えるのみ」


「それじゃあ、お前の力を借りるぞ」



異能力【獄炎】 炎縛


地面から炎の鎖が出て先生を拘束する

その炎の色は禍々しい色を放ち

温度も今までとは比べ物にならない


「熱っ!?なんだこれ!」


「これは一体?」


目を開くとそこには拘束された先生とそこから少し距離をおいたところに燈がいた

これならキツいの一発いけそう!

けど速さがないと防がれるかも


「私と来い!」


異能力【光速移動】 【獄炎】 『煉獄一閃』


燈と一緒に光速で移動し、私の一撃が放たれた

私達が通ったところは黒くなって焼かれていて先生の姿もない

まさか、灰にしちゃったかな?


「いや〜、危なかった。死ぬかと思ったぜ」


後ろから先生がアフロヘアーになって歩いてきた


「よし!これで終わり!帰っていいよ」


そうして私の長い一日は終わったのでした

帰った後はチームメイトに質問攻めをされました


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部屋に戻ったらどっと疲れがきた

俺はそのままベッドに倒れ込んだ


「早瀬小春か、てっきり白河燈だと思っていたが、そっちだったか」


今日アイツらと手合わせして分かった

三年前のあの時、異能力が発現したが、危険すぎるが故に機関に入る事を審議されたとか言う奴


「まるで化者だな.....」


そして俺はそのまま寝てしまった

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