第2話 新しい日常

ピピピ...ピピピ...


「うにゅ〜、あと五分だけ.....」


「ダメです!起きてください!陽菜さんも起きましょうね」


奏が大声で起こしてきてくれた

私と陽菜ちゃんでやり方に差がある気がするけど

けどこれが共同生活って感じがする


「おはよぉ〜」


「おはようございます小春さん」


「遅い、朝食もう出来てるぞ」


「ありがとぉ」


テーブルの上に置かれたパンとスープを口に入れる

温かいスープがとても美味しい

オニオンスープのようだ


「食い終わったら食器は台所に置いとけよ。洗っておいてやる」


「ふぁーい」


朝食の後は身支度をする

高校生組は支給されたものを着て

年少組は私服を着させた


「ほら、行くぞ。午前は座学だからな」


「白さん、待って〜」


部屋から出て訓練棟へ途中雑談しながらゆっくり向かった


「そう言えば皆はいつ頃異能力が発現したの?」


「私は半年ほど前ですね」


「俺は去年だっけな」


「僕は先月です」


「陽菜はね少し前かな?」


「そうなんだ皆結構最近なんだね」


「最近って、私達と同じタイミングでここに来ているのですから、発現が最近でもおかしくは.....」


「私は三年前だよ」


「えっ!?」 「は?」


奏と白さんが驚きの声をあげる

ちびっ子達は何が何だか分からないって顔をしている


「ちょっと待ってください。三年前ですか?」


「うん」


「と言うと、あの防衛戦の時なのか?」


「その時よりも少し後だよ」


その後二人からの質問攻めをくらいながら教室まで来た

ここでちびっ子達とは一度別れる

小学生に高校生と同じものを、とはいかないからね

教室に入ると既に何チームか来ているようで各々で雑談をしていた

私達も座席についてさっきの事についてまた質問攻めが始まった


「なぜ三年もの間ここに集められなかったんですか?」


「知らないよ」


「化物ってどんな感じなんだ?」


「だから知らないよ」


私もいまいち分かっていないのに質問をされる

けど分からないものは分からないんだから答えられないよ

しばらくそうしていると部屋が一気にザワつく

さっきまで雑談の声しか聞こえなかったのにいきなり『おぉ』とか『わぁ』とか感嘆の声が溢れる


「あの制服はたしか」


「ちっ、Aチームの奴らだよ」


「Aチーム?」


「私達のチームはBから今回はGまでバランスよくわけられるのですが」


「Aは特別でよ。異能力の強さと技術がどちらも機関から優秀と認められた奴らが入れられるんだよ」


「簡単に言うと?」


「勝ち組ってやつだよ。ちっ!ムカつくぜ。俺達のことを見下すようなあの目」


「へぇー」


Aチームの方を見ていると一人と目が合った

するとそいつが近づいてきて


「何見てんだァ、能無しがよぉ」


顔を近づけて威圧してきたけどそこまで怖くない

こいつ私よりも弱いと分かってしまう

頑張って自分を強く見せようとしてるんだ

そう思うととても面白くて少し笑ってしまった


「何がおかしいんだよぉ!」


「いえ、可愛いなって」


そうしたら相手は顔を真っ赤にして腰につけたホルスターから銃を取り出そうとした

それを見て私も横に置いた刀を取り出そうとしたそのとき


「何をやっているんだ!直ぐに武器をしまえ!」


突然大きな声が聞こえたと思ったらいつの間にか私とあいつの間に一人割り込んできて私の腕を掴もうとしてきたので掴み返してやった

イチャモンつけてきた方は腕を上に挙げられ

いつの間にか武器も取り上げられていた


「これはどういう事だ?華村?」


「あっ、えっと、、白河隊長、これはその」


「この人がいきなりイチャモンつけてきたんですよ」


「ほう...」


「隊長.......」


白河って人が華村って人を強く睨んでいるのだろう

華村の顔がどんどん青ざめていく


「もう行け」


「は、はい」


「ちょっと!まだ謝罪が...」


「申し訳ない。私の監督不行届だ」


白河隊長がいきなり頭を下げて謝りだした

謝るのは貴方ではなくてあの華村ってやつでしょ?


「いえ、貴方が謝る必要は....」


「いいえ、私のチームメンバーが起こした問題なら私にも責任がある」


「とりあえず頭を上げてください。大丈夫ですから」


そう言うと白河隊長は頭を上げて


「本当にすまなかった」


最後にそう言って座席へ戻って行った

教室が静寂に包まれて物音一つたたなかった

そして教官が教室に入ってきた


「今年の新入隊員は皆静かね。

私は座学担当の柊夏也ひいらぎ かやです。よろしくお願いします。それでは白河号令を頼みます」


「起立、礼、着席」


そうして午前中の座学の時間が始まった

世界防衛機関のちょっとした歴史や化物の特徴、異能力の種類、戦い方等を教えこまれた


「今から三年、正確には四年前ですが、世界各地に突然次元の裂け目が発生し、そこから化物と呼ばれる超生物が出現しました。当時の兵器では歯が立たず人類滅亡の危機かと思われた時、次元の裂け目の影響で超能力を発現する人間が現れ、化物を撃退しました。この出来事が『第一次防衛戦』です」


学校で習わなくても知っていることをまたちゃんと教えられた

場所が場所だから成り立ちとかはしっかりしないといけないんだろうけど退屈だ

そしてなんとも退屈な時間を過ごして


「今日はここまで、白河」


「起立、礼、着席」


「昼休憩のあとは仮想訓練室に集まるように」


特になんてことなのない座学の時間が終わってお昼休憩が始まった

私達は食堂へちびっ子達と合流して向かった


「へぇ〜結構色んなメニューがあるんだね。どれも美味しい!」


「全て一級品ですが、ちゃんと栄養を考えて作られていますね」


「美味い、これが毎日食えるのかよ」


「本当に美味しいですね」


「陽菜のもおいしい」


各々頼んだものを舌鼓を打つ

どれも美味しくてこれか毎日、無料で食べれるとかここは天国か?

チームで食卓を囲んでいると


「ん?君達は」


「あっ白河隊長!」


「やぁ、先程はすまなかったな。ちょうど君を探していたんだ、華村お前も頭冷やしただろちゃんと謝罪しろ」


「さっきはすまなかったな」


「別にもういいのに」


「寛大な対応、感謝する」


オムライスを頬張りながら我ながら名案を思いついた


「白河隊長!良かったら一緒にお昼たべませんか?」


「あぁ!誰が...」


「いいのか?私達と一緒なんて」


白河隊長が不思議そうに聞いてくる

別に私はAチームの人と敵対したい訳では無いし

仲間なんだから仲良くしたい

笑顔で頷くと白河隊長は少し顔をゆるめて


「それでは私達もご一緒させていただこう」


Aチームの人達が私達のテーブルに食事を持ってきた

五人だと少し広かったからこれくらいがちょうどいい


「小春って凄いですね」


「アイツはコミュ力お化けだな」


「早瀬さん、友達になるまでが早すぎて..」


「小春ねぇすご〜い」


「ん?皆なんか言った?」


皆が一斉に目を逸らす

陽菜ちゃんだけがこっちに笑顔を向けてくれた


「改めて礼を言おう、私達を食事に誘ってくれて」


「いいよ、私達も仲良くしたいし」


見渡すと皆楽しそうに話しながら食事をしている

皆本当に楽しそうだ

奏はお淑やかそうな清楚系の女の子と優雅に話し

白さんは華村と悪い顔しながらなんか企んでる

渚くんは中学生くらいの男の子が得意げに話しているのを目を輝かせながら聞いて

陽菜ちゃんは汚れた口を私と同じ年くらいの女の子拭いてもらっている


「いいですね。この景色」


「そうだな」


(こんな日がずっと続けばいいな)


昼食を食べ終わって私達は仮想訓練室に来ていた


「はい、俺がお前らの担当になった小早川祐斗こはやかわ ゆうとだ。よろしく」


銀髪を後ろで結った緑眼の人が私達の前で訓練について話している


「ここは今まで集めたデータを基に仮想の化物を創って戦う。まず君達には雑魚を一人で一分以内に倒せるようにするのが目標だ」


小早川先生の後ろに虫型の化物が現れる


「こいつの詳しい弱点と注意点は座学で習っただろ。説明するのめんどくさいから手短に言うぞ。弱点は目と腹だ、それと鋭い前足と歯には注意しろ、うっかり身体に穴があかねぇようにな」


各チームに別れて一人ずつ化物と戦う

最初に参加者を驚かせたのは白河隊長だった

全員『おお!』や『流石!』等の感心の声をあげる

それも当たり前白河隊長はあの化物を二秒で倒したようだ

それだけではなくAチームの人達は皆三十秒以内に倒していた

それなのに私達のチームは...


「コイツ!硬ぇ!」


「弱点に攻撃が当たりません!」


「ひぃー!ごめんなさいごめんなさい」


「陽菜もうねる」


誰一人一分で倒すどころか倒せすらしないという

そんなに強い訳では無いのにまったく倒せない


「次、早瀬小春、やってみなさい」


「は〜い」


訓練用の刀を貸してもらって構えると私の目の前に化物が現れる


「はじめ!」


即座に距離を詰め刀を振る体勢をとる


(こいつをくらいな!)


『炎撃!』


歓迎会をみて得たヒントを元に私なりに使えるようにした新技だ、試すにはこの機会がちょうどいい

刀身が溶けないように少しだけ炎が出して赤い軌跡ををつくりそしてそのまま化物の外殻ごと切り裂いた

タイムは、と見た瞬間『おおー!』と訓練室に響き渡る


「五秒....か...」


「小春さん!すごいです!」


奏が走り寄ってきて私の手を握る

他の人達もあとから私を囲んで話しかけてくる

違うチームの人も私に色々聞いてくる


「ほら散れ散れ!」


小早川先生が群がりを割って入ってきた

そして、知らない人達は元の場所へ戻って行った


「雑魚相手とはいえ十秒以内で倒すのはお前と白河だけか。だが、刀身を少し見せろ」


言われた通りに刀を差し出す

小早川先生はそれを受け取って観察する


「あの火力なら.....ほら、この部分とか少し融解しているだろ。こうなるともうこの刀は使えないな」


そう言って刀身を指差しながら指摘する

溶けないように調節したけど少し加減を間違えたようだ

自分の刀だったら解けてないもん!


「だが、火力に対して刀身の損傷は抑えられている。これは刀の方に理由がありそうだな」


そうして小早川先生は壊れた刀を持って行ってしまった


「よし、次は対人戦闘だ。使う分からねぇが必要なんだってよ。すげぇめんどくせぇ」


先生が悪態をつくのも慣れてきたかも


「そうだな...白河、私と今からやれるか?」


白河隊長が先生から指名されてるやっぱあの人強いんだ


「はい、問題ありません。ですが、私から提案をしてもいいですか?」


「なんだ?言ってみろ」


「私の相手は小早川さんではなく、早瀬小春にしてください」


白河隊長が私の方を指差しながらそう言ったように聞こえた

気のせいだよね

周りの人が私を見ているけどそれは白河隊長がこっちの方向に指さしてるからだよね


「理由を聞こうか」


「貴方と私では圧倒的に私の方が劣っていて勝負になりません。見る側も一方的な試合を見ても何も理解出来ないと思います。ならば実力が互角の者同士で戦うのが良いと思いました」


はっきりとした白河隊長の回答にまた周りからヒソヒソと様々な声が出る


「あいつと白河が互角?」


「確かにあいつも早かったけど」


「じゃあなんでAチームにいないんだよ」


大体私への熱いメッセージらしい


「お前が自分と互角と評価するのか、別に疑う訳では無いが、その根拠を示してもらおう」


「確定的な根拠はありませんが、やれば分かります」


そんなんで先生が納得するわけないでょ

白河隊長って思っていたよりも脳筋?


「分かったわかったよ、お前がそこまで言うならいいだろう、おい!早瀬!やれるか?」


「先生!納得しないでください!」


皆の視線が私に集まる

この状況だと聞かなくても断れないでょ


「私でいいなら...」


そうして私は白河隊長と戦うことになりました

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