第四章 ディレッタント、ヤンキーちゃんをプロデュース!?
第20話 遠足の班分け
なんと
普段から、オレは萌々果さんとしゃべっている。だから、ある程度は免疫があるけど。
オレも予想外だったので、呆然としている。
萌々果さんのことだから、なにか狙いが合ってのことだとは思わない。オレをおちょくろうとも、考えていないだろう。
「おっけー。
なんの疑問も持たず、
「ありがとうございます
萌々果さんも、同性の友人ができて楽しそうだ。
「よ、よろしく」
「こちらこそ、よろしくおねがいします。
「そこで、あと一人なわけだが」
オレは、教室の隅にいる、ちょっとヤンキーめの女子に視線を移した。
実はこのクラス、萌々果さんの他に孤高の存在が、もうひとりいる。
ヤンキーと言っても、ギャルのようにはなしかけやすいわけじゃない。見た目が昭和ヤンキーなのだ。「スケバン」っぽいと、いえばいいか。
見た目がちょっと怖いので、誰も
「
萌々果さんは、倉田との接触を試みようとしている。
「おう。そうか。一緒に勧誘してみるか?」
「お願いできますか?」
「わかった。ついていく」
オレも、倉田を誘うのに同行した。
「あの、倉田さん」
「ん?」
窓を見つめていた倉田が、顔だけをこちらに向ける。目を細めているが、刺々しさはない。夕焼けが眩しくて、目が痛いのだろう。すぐに、表情が柔らかくなる。
「洋館めぐりなんですが、一緒に回りませんか?」
「いいよ」
そっけない。だが、同行自体に嫌な印象はない様子だ。
「ありがとうございます。では、ご一緒しましょう」
「うん」
莉子が、「前日に、みんなでお菓子買いに行く?」と話し合う。
倉田も渋っている様子はなく、一緒に買いに行くと言った。
「ウチの近所が駄菓子屋だから、回ろうぜ」
「やった。あそこの百円クレープ好き」
莉子がバンザイする。
「ノブ……八代くん。クレープって百円で食べられるんですか?」
驚きのあまり、萌々果さんは素が出てしまいそうになったようだ。
「行ってみれば、わかるよ。オレもマジかよって思ったから」
数日後、オレたち五人はクレープが食える駄菓子屋へ。
お菓子の品揃えが、もはや懐かしいを通り越して新しい。見たことがないものばかりだ。
オレたちは、一口サイズのガムやラムネなど、予算範囲内で買う。
「ノブローさんノブローさん」
小声でさりげなく、萌々果さんがオレの袖を引っ張る。
「ノブローさん、迷ってしまいます」
何を買おうか、萌々果さんはひたすら凝視していた。
「一通り買ってみて、予算の範囲だけで持っていけばいい」
「チョコレートなどはカバンの中で溶けるから避けろ」とだけ、アドバイスをする。
倉田はカットするめやカルパス、砕いた袋麺などを買い込んでいる。晩酌かな?
で、百円クレープを買う。
「まあ。生クリーム、カスタード、チョコだけではありません。ツナやタマゴなどのおかず系もありますよ」
メニューを見て、萌々果さんが興奮した。
莉子が率先してオーダーし、バナナクレープを焼いてもらう。
萌々果さんに、選ぶ時間をあげているのだ。
焼けるのを待っている間、萌々果さんがクレープを選ぶ。
莉子のクレープが焼けた。春巻きのように、折って包むタイプである。
「本格的ですね。百円とは思えません」
「オーソドックスな生クリームと、おかず系のツナを両方いただきますっ」
「二つ、食べられるか?」
「このサイズなら、なんとか」
オレと賢はカスタードを。
倉田はあんこにした。
「おかずクレープ、初挑戦です」
萌々果さんはまず、ツナのクレープを口にする。ああ、これは絶対にうまい顔だ。
「おいしいです。これで百円とか、採算が取れるんでしょうか」
うっとりしながら、萌々果さんはクレープを頬張る。
「おっ、黄塚さん、ちょっと」
オレは、ポケットティッシュを用意した。
「動くなよ」
萌々果さんの口についた生クリームをとってやる。
「ありがとうございます、八代くんも、動かないで」
今度は萌々果さんが、ハンカチを出した。オレの口についていたカスタードを拭く。
「ありがとう、黄塚さん」
「どういたしいましてぇ」
今でこそ、お互い名字で呼び合っている。が、二人だけだとまた下の名前で呼び合うんだろうな。
「ちょっといいか?」
倉田さんが、口を開く。
「二人は、交際しているのか」
おお。やっぱ、そう思われてしまったか!
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