第37話 変化する夢(3)


「!!――」


 無意識のまま、勢いよく布団を跳ね除けた。


 荒れた呼吸も、全身にじんわりと浮かぶ嫌な汗も、先程までの夢が、正しく確かに夢だった事を教えてくれた。


 真は目を見開いたまま暫くそうしていた。


 指一本動かせない程の倦怠感があり、そのまま静かに瞬きを繰り返す。

 汗と一緒に、意識の外で涙が一粒溢れた。


 咄嗟に時計を見ると、五時を過ぎた所だった。窓の外から朝日が入り、部屋の中は薄ら明るい。


(入って、きた……)


 あの女が。


 瞬間、ゾッと背筋が粟立ち、胃の中の物を全て吐き戻しそうになった。最後に聞いた気味の悪い声が耳について離れない。


 真は寒くもないのに布団を手繰り寄せ、膝を抱えて顔を伏せる。声を上げて泣きたかったけれど、涙は出なかった。


 もう、『ただの夢だ』とは思えなかった。

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