#Ⅳ 居場所感じる“団欒会”
「さ!ここが家よ〜!!!」
木でできた綺麗な焦茶色の家。ここがひなさんの家。
「さぁさぁ!!今日からレンくんの家でもあるんだからもう自分の家だと思って〜!!」
ここが…今日から俺の家…俺の“新しい家”…!
「お、お邪魔しますっ!」
するとひなさんは
「そんな堅くならなくていーのっ!もうただいま〜っ!!ってさ!」
と、明るくニコニコすぎる笑顔で言った。なんか人が家に入るのが嬉しいのかひなさんは先程からテンションがバカ高め。
「あ、じゃあ…ただいま〜」
「レンくん!“おかえり”!!」
“おかえり”か…俺の新しいホントの“居場所”…中に入ると綺麗なロビー(?)が広がっていた。どうやら階段もある。
「レンくんの部屋は2階!こっちこっち〜!!」
ひなさんが2階の階段から手を振っている。俺は階段を登った。着いてあたりを見回す。部屋ばかりだった。するとひなさんは
「ここは昔ね、お父さんとお母さんが経営していた民宿だったの。だけど人が来なくなったから民宿やめてあたしにくれたの。18歳の誕生日プレゼントとして」
誕プレかぁ…ってデカすぎない!?するとひなさんは急に瞳を失いつつも笑顔で語り続けた。
「でもね〜、これが最後の誕プレだったんだ〜。お母さんは2ヶ月後に病気のため他界してお父さんはお母さんが他界したことに耐えられなくてあたしを残して森の崖から自分で落ちたんだ〜。」
ひなさんの笑顔の裏には何があるんだろう…大切な人を失って悲しい気持ち、何もできない悔しさ…裏ではぐちゃぐちゃした感情に耐えられずに泣いているのかな…?どこかわかるような感情……するとひなさんは我に帰ったのか
「あっ!ごめん!!レンくんの部屋紹介するからついてきて〜!!」
キョロキョロあたりを歩きながら見ているとすぐ着いた。
「はい!ど〜ぞ〜!あ、鍵も!」
「あ、ありがとうございます、」
鍵を受け取って中に入る。
「これからご飯作るから食堂にいるね!ご飯になったら呼ぶね〜!!それまでゆっくり休んでて!」
「は〜い」
返事をして部屋のドアを閉めた。電気をつけると広い畳があった。テレビもあり、和風ライトもあった。窓からは森の景色が広がっていて綺麗だった。早速棚から布団を出して敷いた。
「ホントに…“異世界”にいるんだな…」
布団に寝転び、頭の後ろで手を組んだ。天井も木でできている。俺はクローゼットが気になって布団から起き上がり、開けてみる。すると浴衣があった。ちゃんと説明の紙もあったので着てみることにした。
「どれどれ?これをこうして??なんだよこれ、イミワカンネェ!」
ぶつくさ呟きながらなんとか着れた。シンプルで落ち着くような柄。しばらく自分を鏡で見つめた後、布団に戻った。眠くなってきた…俺はいつのまにか眠りについていた。
ーひなサイドではー
「完ッッッ成!!!」
レンくん歓迎祝いのお食事!!あたしにしては凄くいい出来栄え。気合い入れるために女将さんらしい服装に着替えたし!レンくん喜ぶかな??美味しく食べてくれるかな??そんなことを考えながら階段を上り、レンくんの部屋へ行きノックをした。
「レンく〜ん!!!ご飯できましたぁ〜!!」
返事が返ってこない。もう一回ノックした。
「レンく〜ん?ご飯!できたよ??」
何回読んでも返事が返ってこない…ま、まさか!?窓から……飛び降りた…? ま、まさか!?
「レンくん!入るよ!!?」
不安になってレンくんの部屋のドアを開けて中に入る。すると、布団にレンくんが寝ていた。安心したのか安堵のため息が出てきた。あたしはレンくんを揺さぶる。
「レンく〜ん!ご飯できましたよ〜!!」
するとレンくんは目をこすりながら
「おはようございます…」
と、言った。かわいいな〜と思いながら
「できたから食堂に行こ!!」
と、レンくんの手を引いて食堂へ連れて行った。
ー
いい匂いが漂う食堂へ来た。食堂は広く、旅館にいる気分だった。それにしてもひなさん…旅館の人みたいな着物着てるな〜…俺は
「とてもきれい」
と、いつのまにか口にしていた。するとひなさんは
「えっ!?きれいって…え??」
顔を真っ赤にしながら席に座っている。俺はごまかすように
「冷めないうちに食べましょ?」
ひなさんは
「わ!わかった!!じゃあいただきますっ!」
と、手を合わせた。俺もいただきますと言って食べ始めた。
まずは魚。大きくて白身の魚だ。パリッと音をたてた。ふわっとした白身。
「う、うまい!?」
美味すぎて興奮した。他にもふっくらとした白米や新鮮でとりたてのサラダ、しっかりとした味のお味噌もすべて美味しい。
「ごちそうさまでした…」
幸せすぎる夕飯。ひなさんにお礼を伝えて一緒に食器洗いをした。たくさん雑談して笑いあった。そして俺たちはお風呂に入った。あがったらロビー集合。
「おまたせ」
ひなさんがあがってきた。ひなさんは牛乳瓶を2本持っている。
「はい!お風呂あがりの牛乳!!モゥモゥ農場のとっくべつな牛乳!!」
モゥモゥ農場?なんか珍しい名前だな。俺は牛乳瓶を貰い、牛乳を飲む。何よりも新鮮って感じですごく美味しかった。瓶を片付けて消灯する。
「レンくん!おやすみね!また明日!あ、飛び降りたりしないでね??」
「満足しているんですからさすがにしませんよ笑」
と、お互い笑い、それぞれの部屋に戻った。部屋のドアを閉じ、布団の中に入って今日1日を振り返った。マンションから落ちていたら異世界にいてひなさんと出会って、泣いて笑って…俺の心がとても軽くなったんだな。
「明日消えるとしても俺は1秒でも長く此処にいたい…」
そう呟いた後、俺は眠りついていた。
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