#Ⅱ やっぱり俺は…

「さぁ、説明していくからよく聞くんだよ!?」

「聞かない人とかいるんですか…」

俺は呆れながらツッコむ。

「さ!それでは説明します!まず、レンくんは技法スキルってわかるカナ!?」

なんだその厨二病みたいなやつでも勢いを抑えて…

「…知りません」

と、ポーカーフェイスと共に言う。ってか言えるわけねーだろ「厨二病ですか?」とか!せっかく助けてもらったのに失礼すぎるだろ…するとひなさんは少し難しい顔をした後、「あっ!」と柔らかい顔をした。

「レンくん迷子だし、わかるわけないっか☆」

「ズコーッ」

じゃあ聞くなよ!?大丈夫なのか〜?コイツ??ふにゃふにゃしていて、「てへっ☆」っとした顔。何故か心が軽くなってきた。この俺が…?今までいじめられて窓から飛び降りたのに…?もしかしてひなさんって…異常人すげぇやつなのか…?と、考えていたらひなさんが、

「“聞かない人とかいるんですか…”って言った子だーれだっ?☆」

と、明るくリズムよく言ってきた。あ、やべぇ…自分で言ったくせに考え事してた…

「ご、ごめんなさい…」

こういう時は素直な謝罪が1番。って言いたいけど…学校ではもっと殴られる言葉だったな…だんだん表情が緩くなってきた自分の顔も軽くなってきた心も曇ってくのがわかる。でも殴られたくないから慌てて言い直そうとすると、ひなさんは俺を抱きしめ、少しずつ冷めてきた俺の心を温めるかのように言った。

「固くならないで、ここ来る前はとーってもイヤな目にあったのでしょ?窓から飛び降りたって聞いたし、だから固くならないで…!素敵な笑顔が曇り空になってきているよ?もう怖くないからね…」

なんで…なんで…なんでだよ…?なんでこんな俺を受け止めてくれているの…?なんか

目が濡れてきている…?あぁ…俺は…泣いているんだ…

「うぅっ……あああああん………!!!」

何故か声をあげて泣いていた。

「ええっ!?あえっ!?れ、レンくん!?大丈夫!?な、なんかごめんね!?」

さすがにひなさんも慌てるか…でも今は甘えていたい…少しでもここにいたい…少しでもこの時間が長くあってほしい…ああ…やっぱり俺は…

「ここにいていいんだな…」

冷えきっていた俺の心はひなさんによって温かく、ゆっくりと解凍された。固まっていた表情もゆるくなり、久しぶりにちゃんと泣けていた。

「うん…いてほしいな…レンくん…」

ひなさんも少し泣いていた。いつまで抱きつきながら泣いていたのだろう。さっきまでは快晴だった空も優しい赤色に染まっていた。

「いつまで泣いていたんだろ?笑」

ひなさんが少し笑いながら言う。俺も

「そうですね笑」

と、笑った。ホントに笑ったのは何年ぶりだったのだろうか。心からお礼をする。ありがとう、ひなさん。

「あのさ、あたし達泣き崩れて全く技法スキルの話できてないね笑だから今日は遅いし夕飯にしよっか?」

「ですね〜」

って夕飯っつった!?こんなあたり一面木しかねぇところで!?どう食材をゲットするんだよ!?するとひなさんは自慢げな顔をして言った。

「レンく〜ん!山の恵みに感謝しなぁ!!☆山の食べ物は体が溶けるほど美味しいわよ!!」

イヤ、ほっぺ通り越して体!?俺は驚きを隠せず、

「結構オーバーな表現ですね〜笑」

苦笑いしつつもツッコむ。でもひなさんはキラキラした目で

「ここの食材は美味しいんだよ!?だからさ!!一緒に食べ物探ししよ!!」

と、俺を誘う。泣き崩れで技法スキルの話はまた明日になったが、今は今でこの時間を楽しみたい。だから俺は

「断る理由なんてないじゃないですか、もちろんはいですよ!」

と、明るい声で言う。俺とひなさんは“食べ物狩り”の準備をして早速出かけた。この日、俺は久々に“本物の感情”を取り戻した。



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