煌めきひろがるこの“異世界”で
宮野迷子
#Ⅰ “生きる”を逃げたその先は
「レン〜お母さん、仕事行ってくるわね!」
「は〜い、いってらっしゃい〜」
俺は
“逃げる”ー
そんなことを考えていたらいつのまにか窓の近くにいた。自分に「まだだろ?」と、問いかけても効かない。ただ体と心が望んでいたことを“やらせている”だけ。だんだん「もうどうでもいいや」と思ってきた。
「あとは体と心に任せよう。」
いつのまにか口にしていた。「これが“最期の言葉”か…」俺はすこし呆れた。でもそのあとはしばらく何も考えなかった。ただただ窓に乗り掛かる。何故か開放感が止まらない。「俺がしたかったことって“これ”だったんだ笑」瞳のない半笑いの顔で窓をくぐるように体を縮める。いつも睨んで見ていた景色が目に映る。何故か輝いて見えた。
「なんでだろうな」
掠れた声の後、窓の縁から手を外した。マンションに住んでいてよかった。8階に住んでいてよかった。落ちながら思うと同時に一瞬にしか目に映らない景色をぼんやり眺めていた。もうそろそろ4階かの感覚で落ち続けていた時、視界が急に真っ白になった。「もう“着いたのか…?”」とぼんやり思った瞬間、あたりが眩しくなって俺は気を失った。
「…すか?…ですか?…丈夫ですか?」
なんだなんだ…?
「大丈夫ですか?」
目を開けたら見知らぬ女が俺の顔を心配そうに見ていた。
「イッ…」
びっくりしたのか一歩後ろに下がる。
「あっ、びっくりしちゃったか!ごめんねっ☆」
は?なんやコイツ
「えへへ〜、自己紹介遅れたね!あたしは
え、?自己紹介?まったく状況が追いつけない。逃げれたはずの俺はヒナと言う女に会って…これから何されんだ?でもせっかく相手から自己紹介されたため、俺も言うことにした。
「俺は、金宮 廉。あの、ひなさん…ここは…?」
あたり一面木だらけ。でもあそこに小屋なのか家なのかわからないやつがあった。
「ここは
と、ひなさんは苦笑いをする。「え、?ソラフリヤマ?聞いたことねぇよ」と心の中で言いながらぽかーんとしている。するとひなさんは心配そうな顔で、
「それにしてもレンくん、もしかして迷子…?」
迷子か…もしかしたらそうなのかも。帰り方もわからないし…迷子…だな。
「迷子かもしれません。俺はマンションから落ちていたはずなんですけど…」
と言った瞬間、ひなさんは顔を青ざめて
「え…落ちていたらここへ…?」
「はい」
余計なことを言ってしまったな。と申し訳なく顔を上げたらひなさんは俺に泣きながら飛びついてきた。
「よかった…生きていてよかった…」
ひなさんの涙は“嘘偽りのない本当の”涙だった。ぐすんと鼻を鳴らした後、ひなさんは真剣な顔で
「ねぇ、レンくん。迷子でしょう?あたしが面倒見るよ!だから、道がわかるまで一緒に“仕事しない?”」
「え…仕事…?」
俺の心の声がいつのまにか口に出ていた。するとひなさんはにっこりとして、
「じゃあ、仕事について言うね」
ひなさんの笑顔はにっこりとした少し怪しげな笑顔だった。
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