第9話




男が謙遜すると色黒は肩をガシッと掴んで言った。





「いやいや、本当に上手いから自信持てよ。俺達が保証する!」






この発言に対して二人から





「いや、俺達の保証で何の自信になるんだよ。」






「でも本当に上手いから自信持てよ。写真家になったら教えてくれ。俺達がファン1号、2号、3号だ。」






と声が上がった。






男は本当に嬉しかった。






男が涙を堪えながら三人の方を見ると、三人は「ファン1号」の座をかけて争っているらしかった。





暫く眺めているとその論争から一抜けして「3番目のファン」の座に収まったデカが言った。







「東京に帰ってからも偶に遊ぼうぜ!もう友達だろ!」






デカはそう言ってニカッと笑った。






その発言を聞きつけた色黒とロン毛も乗ってきた。






「遊ぼうぜ!湘南の海に行ってビーチバレーしよう!」






「いやいやそこはボウリングでしょ」






再び争いが始まりそうである。






男がヒヤヒヤしていると



「全部やれば良いだろ。お前ら落ち着け」





このグループのまとめ役であろうデカが二人を黙らせた。





デカのその発言に「はーい」と素直に応じる二人を見て男は思わず大笑いをした。







こんなに笑ったのは久しぶりだった。








話すと大学も近く、学校終わりにすぐに遊べるようにと連絡先を交換してグループチャットを作成した。







名前は「函館野郎組」







新幹線の時間が迫っていた三人は連絡先を交換した後、名残惜しそうに「じゃあな!」と言いつつタクシー乗り場へ駈け出していった。












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