第6話 決着

香織と涼介は、コミュニティセンターの薄暗い廊下に潜んでいた。静寂の中で聞こえるのは、二人の緊張した呼吸音だけだった。香織は涼介に目をやり、心の中で呟いた。

「絶対に成功させる。これ以上、誰も傷つけさせない。」


涼介も同じように自分を奮い立たせた。

「これで全てを終わらせるんだ。祖父の無念を晴らすために。」


やがて、詐欺グループのメンバーが高齢者を装ってセンターに現れた。彼らは落ち着いた様子で内部に入り、次々に被害者を騙そうとしていた。


「見て、あいつらだ。」

涼介は遠くからその様子を見つめ、香織に囁いた。


香織の心臓は早鐘のように打ち、手のひらは汗で湿っていた。

「今しかない。これを逃せば、また誰かが被害に遭う。」


詐欺グループが犯行を実行しようとする瞬間、香織と涼介は警察の指示に従い、一斉に行動を開始した。捜査員たちは詐欺グループを取り囲み、確保に向かった。


香織は詐欺グループのリーダーに向かって叫んだ。

「あなたたちの悪事はもう終わりだ!」


リーダーは一瞬動揺したが、すぐに冷静を取り戻し、逃走を試みた。涼介はすかさず追いかけた。廊下を全力で駆け抜け、リーダーの背後に迫った。


リーダーが非常階段に差しかかると、涼介は飛びかかり、リーダーの腕を掴んだ。リーダーは驚き、激しく抵抗した。二人は廊下に倒れ込み、もみ合いが始まった。


「ここで終わらせるんだ!」

涼介は叫び、リーダーの手から逃れようとする。


リーダーは冷笑を浮かべ、

「お前に何ができる?」と言いながら涼介を殴りつけた。涼介は顔に痛みを感じながらも、諦めなかった。彼は全力でリーダーを押さえ込もうとする。


リーダーは再び涼介を突き飛ばし、立ち上がろうとした。だが、涼介はすかさずリーダーの足を引っ掛け、再び倒れさせた。二人は再びもみ合い、床を転がりながら激しく殴り合った。


涼介はリーダーの顔を見据え、

「お前を逃がすわけにはいかない!」

と言い放った。そして、力を込めてリーダーの腕を捻り上げた。リーダーは苦痛の声を上げ、動きを止めた。


「もう逃げられないぞ。」

涼介はリーダーを押さえ込みながら、警察に向かって叫んだ。

「ここにいる!確保してくれ!」


警察官たちが駆け寄り、リーダーを拘束した。涼介は息を切らしながらも、リーダーを見下ろし、静かに言った。「もう逃げ場はない。」


---


翌日、警察署にて、香織と涼介は、逮捕された詐欺グループのメンバーを見つめていた。田中刑事が近づいてきて、彼らに言った。

「よくやった、二人とも。しかし、これで全てが終わったわけではない。」


「どういうことですか?」

香織は眉をひそめた。


田中刑事は深刻な表情で続けた。

「今回の詐欺グループの背後には、さらに大きな組織が存在することが判明したんだ。彼らの目的は、単なる詐欺ではない。」


涼介は驚きを隠せなかった。

「その組織は一体何を狙っているんですか?」


田中刑事は資料を手渡しながら言った。

「国際的な犯罪組織で、金融詐欺から人身売買、武器密輸までさまざまな犯罪活動を行っている。次のターゲットは日本全体かもしれない。」


香織は資料を読みながら、冷や汗が背中を流れた。

「こんな規模の犯罪にどう立ち向かえばいいのか…」


田中刑事は続けた。

「さらに悪いニュースがある。信用金庫の内部に、この組織と繋がっている裏切り者がいる可能性が高い。証拠が改ざんされていることに気づいたんだ。」


涼介はショックを受けた。

「内部に裏切り者が…?誰を信じればいいのか分からない。」


香織は決意を新たにしながら言った。

「どんな困難があっても、私たちは必ずこの組織を追い詰める。内部の裏切り者を見つけ出し、真実を暴きましょう。」


---


数日後、香織と涼介は、信用金庫の会議室で新たな作戦会議を開いていた。彼らは警察やサイバーセキュリティの専門家と協力し、内部の裏切り者を見つけ出すための準備を進めていた。


「この組織を追うためには、内部の裏切り者をまず突き止めなければならない。」

涼介は決意を込めて言った。


香織は頷き、

「私たちの仲間が裏切っているかもしれない。でも、真実を見つけ出すために全力を尽くすわ。」と答えた。


田中刑事もその場にいて、

「内部調査を進める中で、必ず真実を突き止める。そして、国際的な犯罪組織に立ち向かう準備を整えよう。」

と力強く言った。


---


数日後、香織と涼介は門司港のカフェ「エトワール」にいた。カフェの落ち着いた雰囲気と、窓から見える静かな港の風景が二人の心を和ませた。カフェの内装は、アンティークな家具と柔らかな照明が調和し、居心地の良い空間を作り出していた。


香織はカップを手に取り、静かに言った。

「ここに来ると、少し落ち着くわ。」


涼介もカップを持ち上げ、

「本当にそうだな。こんな時こそ、少しリラックスしないとな。」と答えた。


二人はカフェの窓越しに港を眺めながら、静かな時間を過ごしていた。涼介はふと、祖父のことを思い出し、心の中で呟いた。

「おじいちゃん、俺はここまで来たよ。でも、まだ終わっていないんだ。」


香織もまた、自分の家族やこれまでの出来事を思い返し、決意を新たにした。

「涼介、これからも共に戦おう。どんな困難が待ち受けていても、私たちなら乗り越えられる。」


涼介は微笑み、

「もちろんだ。全てを終わらせるために、最後まで戦おう。」と言った。


カフェ「エトワール」の静かな雰囲気の中で、二人は新たな挑戦に向けて心を一つにした。そして、物語は次のステージへと進んでいく。

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