第31話 自由研究『謎の種子X』2
◆
農作業というのは、朝一番から昼過ぎまでが一番忙しい。
昼食後に昼寝と日光浴(たぶん、光合成的なのをしている)をする花人族にならって、リィトもベッドに横になろうと自室に戻っていた。
フラウは仲間と一緒に、畑のそばにコロンと横になって昼寝中だ。
花人族はみんなピンク色や緑色のファンタジーな髪色で、さらには体のどこかから植物を生やしている。
集団で寝転がっているのを遠目に見ると、花畑ができているようで綺麗だ。
なかでも、フラウは髪色も頭に咲いている花も、かなり美しいほうだ。
窓の外に見える、花人族の集団昼寝を眺めていると自然にあくびが出てきた。
「Hey、ナビ! 一時間後に起こして」
「一時間後のアラームをセットしました……。質問。マスター、こういったご用件の際だけノリがアレなのはなぜなのでしょうか」
「いや、癖というか、なんとなく落ち着くというか……」
スマホ世代の最古参なもので。
ベッドに体を預けたリィトは、ふとあることに気がついた。
「あっ!」
思わず、飛び起きる。
「見てくれ、ナビ!」
「どうしましたか、マスター」
「芽が出てる!」
ベッドサイド、日当たりのよい場所に置いていた鉢植え。
宮廷魔導師団の物置から発掘した、謎の種子X。
植物魔導に人生を捧げてきたリィトでさえも、なんの種子だかわからない青く光る種子を植えて置いた鉢植えに小さな芽が出ていた。
ぴょこんと土から顔を出している、一枚の葉っぱ。
(謎の種X、単子葉植物だったんだ……)
まず思ったのが、それ。
まじまじと観察をしてみる。
若緑色の葉から、ほんのりの青い光が放たれている。
いや、よく見てみると、青から紫に、赤から橙色に……少しずつ光の色合いを変えながら美しく輝いている。
魔力の光だ。
発芽した葉をよく観察してみるけれど、今まで目にしたどんな植物とも似ていない……でも、とても美しい。
そっと、芽に触れてみる。
毎日じっと様子を見て、手塩にかけて世話をしていたのが報われた。
ちょん、と葉に指先で触れる。
「か、か、可愛い……っ」
これこれ、この感じ。
リィトは悶えた。
「マスター、この植物はデータベースにありません」
「うん、わかってる」
ナビのデータベースは、基本的にはリィトが見聞きした情報によって構成されているのだ。だから、料理のレシピ検索などはできないというわけだ。
「成長が楽しみだね……どんな植物なんだろう」
種子の大きさからして、おそらくは樹木。
ある程度育ってきたら、地植えしてみよう。
「しかし、本当に神々しいなぁ……」
もっと育っていくのが、楽しみだ。
発芽までは成長が目に見えないけれど、これからは目に見えてスクスク育つ。楽しみが増えた。
謎の種子Xは、謎の芽Xに進化した!
マンマが色々と情報を探ってくれているようだから、そちらも楽しみにしておこう。
「いい夢が見られそうだ」
満ち足りた気分で、リィトは昼の日差しのなかで微睡むことにした。
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