第21話 住民を受け入れようと思う。3


 その夜。

 花人族たちの宴を抜け出して小屋に帰ったリィトは、ぼんやりと考え事をしていた。

 窓からは満天の星空が見える。

 ナビを起動すると、涼やかな声がリィトに問いかけた。

「質問。マスターは花人族を配下にするのですか?」

「配下じゃないよ、この畑の……小作人?」

「どっちもどっち、では?」

「……それはそうかも」

「誰にも干渉されずに好きなことをして自由に生きる、とマスターはおっしゃっていました。彼らをこの畑に関わらせることは、その目標と矛盾しませんか?」

 リィトは肩をすくめる。

 もちろん、誰にも干渉されずたったひとりで生きるなんて不可能だ。

 衣食住は植物魔導で最低限はどうにかなるけれど、たとえば本物の肉は店で買わないと手に入らない。大豆が育てば、肉っぽいものは手に入るだろうけれど。

「……せっかく買った土地の開墾には人手がいるし、彼らは春ベリーを安定して栽培したい。それに、ちょっと春ベリーの他にもベリー類の栽培をしないといけないからね。無料の労働力が手に入るなんて、願ってもないさ。Win-Winってやつだと思う」

「労働力ですか」

「ああ。自治区の商人さんに、赤ベリーの安定供給も約束しちゃったからね。労働力はいくらあってもいいさ。使えるものは使わないと」

 精一杯、悪ぶった。

 無表情無感情を気取るナビが、ふと笑った気がする。

「マスターはお優しいですね、相変わらず」

「優しくないよ、せいぜいお人好し」

「自分で言ってしまうと、少しアレです」

「だから、アレってなにさ」

「マスターは偉大で優秀な反面、おひとりですべてを背負い込みすぎるきらいがあります……使えるものは使うというのならば、ナビのこともご活用ください」

「今日は素直じゃないか、ナビ」

「……。マスターのそういった言動は、本当にアレでアレです」

「ナビも照れたりするんだね」

「……マスター」

「ごめん、揶揄いすぎた」

 いつも言葉を濁す相棒と笑い合って、眠りについた。

 翌日、フラウを通してリィトの畑に花人族を招き入れることを伝えた。

 盛大な宴theセカンドシーズンが始まって、リィトは花人族秘蔵のベリー酒をしこたま飲まされることになったのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る