第12話 土地を買おうと思う。4
◆
うーん、とリィトは伸びをした。
タスクを終えてぶらつく街。
うん、とても晴れやかな気分だ。
露店で買ったソーセージバゲットをぱくつきながら、ガルトランドの街を歩く。本当に、活気のある街だ。帝国からの旅人を珍しがっても、誰もリィト個人のことなど気に留めない。久しぶりの行楽をリィトは楽しんだ。
「これ、本当に似合ってるかな」
服飾ギルドのタイムセールに行くと、店員のお洒落な女性に取り囲まれてアレコレとコーディネイトしてもらえた。
ざっくりとした素材のシャツとゆったりとしたズボン。
リィトのリクエストもあり、アウトドアに適した素材でできている。
そして、なかなかにお洒落だ。
タイムセールということもあり、かなり安く着替えを手に入れた。
服を着替えてしまえば、すっかりリィトは街の雑踏に溶け込むことができるようになったようで、視線がほとんど気にならない。モブだ、やったね。
「……とはいえ、これ以上は無駄遣いできないな」
土地を買ったあとに残った金は、だいたい三十万円ほどだった。
このあとの生活の準備にかかる金もあるわけだから、ほとんど無一文に近いだろう。
破格の値段で広大な土地を買えた。
明日からは、リィトは開拓者だ。
誰もいない土地、なににも縛られない時間。
好きな植物を思いっきり育てる自給自足の生活が始まる……最高だ。ちょっと考えるだけでも、心が踊る。
ひゃっほぅ、と叫び出したい気分だ。
「そうだ。苗とか種子を仕入れておこう」
リィトの植物魔法はとても強力だ。
けれど、あくまで生長や枯死を司り、品種改良などができる能力なわけで──つまりは、種子や苗がないと始まらない。
逆を言えば、種子は絶対に発芽させられるし不意に枯らしてしまうことはほぼない。種なら数粒、苗もあれば畑いっぱいに繁殖させられる──リィトは自分の能力に感謝した。
手持ちの金で色々な種子を試せそうだ。
戦闘用に持ち歩いている種子はあるが、そんなものを育てたいわけじゃない。そういうのは、もうたくさん。
美味しい野菜に、瑞々しい果物。
それに、ちょっと変わった花なんかを開発するのもいいね。
ただし、あまり魔導魔法に頼りすぎないスローライフが理想だ。
チートを使って楽しいのは、最初だけ。
──上手くいきすぎては、何事もつまらないからね。
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