第11話 土地を買おうと思う。3

 ◆


 ミーアから受け取った手付金を持って土地管理局に戻ると、受付のおじさんが驚いたような嬉しいような複雑な表情でリィトを出迎えてくれた。

「本当に戻って来やがった、まだ昼休憩前だってのに……」

「すみません、休み時間間際に」

 ランチタイム前に大きな仕事が舞い込んでくると、わりとウザい。

 前世でも勤め人としての経験はそれなりにあるため、気持ちはよくわかる。

「……ふん。そういう気遣いをしてもらえるだけで、ありがたいですよ。世の中、受付係はなにを言ってもいい自律式ゴーレムかなにかだと思っているやつが多くて困りますよ。まったく」

 ぽろりと受付業務の闇を垣間見せるおじさんに、土地購入分の硬貨と事務手数料を耳を揃えて渡す。

 リィトが持参したミスリル貨と、ミーアに取引の前金としてもらった大金貨(ゴルゴルド)だ。

 何度も数え直して、受付のおじさんは大きく頷いた。

「これで売買契約に入れますね……まだ若い坊やかと思ってたら、あなたホントに、いったい何者ですか?」

「ははは……まぁ、このとおり帝国出身で」

「見ればわかりますよ、紋章付きは目立ちますから」

「ですよねー……近くに服屋ってあります?」

「服飾ギルドの小売店が二つ隣です」

「あとで行ってみます」

「……あと三十分でタイムセールですよ」

 ぷい、と書類に視線を戻しながら、おじさんが小声で教えてくれる。

 めちゃくちゃ親切なおじさんだった。


 登記と支払いの準備は日没までには完了するらしい。

 迅速な対応だ。おじさん、ありがとう。

 リィトはそれまでの時間潰しに、少し街をぶらついてみることにした。


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