第6話 ギルド自治区ガルトランド

 ギルド自治区の中心都市、ガルトランド。

 断崖絶壁を利用した高い外壁に囲まれた、南大陸の一大都市だ。

 一応は、南大陸の土地はすべてギルド連合の管轄ということになっているが、ガルトランドがほぼ唯一にして最大の都市といえる。他の街とは比べものにならない栄えっぷりだ。

 ロマンシア帝国の都とは、まったく異なる街並みである。

「おー」

 迫力ある街並みに思わず、リィトは感嘆する。

 ロマンシア帝都は背の高い石造りで、とんがり屋根の建物が多くてメルヘンチックだった。

 こちらはもう少し都会的だ。

 真四角のビルっぽい建物が建ち並び、各分野のギルド本部がものものしい建物を構えている。すこし無機質な感じといい、街というより要塞っていう感じだな。

 道ばたに止めてある牛車から興味深く街並みを眺めていると、道の向こうの建物からメルが走ってきた。

「坊ちゃんのおかげで荷物もしっかり届けられましたぁ~っ!」

 いぇい、とメルがダブルピースした。

「それはよかった」

「いやぁ、商人ギルド『黄金の道』は特に遅配にうるさいですからねー。もう、本当に助かりましたよ。はー、発掘ギルドや情報ギルドの大らかさを見習ってほしいですよ」

「さすが、色々なギルドがあるんだなぁ」

「ええ、なんせギルド自治区の中心街ですから」

「帝国では冒険者も国が管理してランク付けしてたから、ビックリだよ」

 ついに外国に来たって感じがする。

 異国情緒を胸いっぱいに感じて、ウキウキするぞ。

「へっへへ、配達優先にさせてもらったんで改めて──ギルド自治区〈ガルトランド〉へようこそ!」

 メルが満面の笑顔を浮かべた。

「ロマンシア帝国の領土である北大陸から独立した、自由の国です! あ、帝都の旦那から見ると、まだまだ未開の地が多い南大陸への入り口ってことになりますかね……とにかく、超いいところです!」

「故郷の説明が雑だね」

「えっへへ、習うより慣れろって言いますから、オススメスポットとか色々教えますよ~」

「あ、それはありがたいな」

 知らない町に来たら、住民に話を聞くのが一番いい。

 特に、美味い店を探すのは。

 オススメの居酒屋をメルから教えてもらうことにした。

 メルが一緒に飲みたがったが、自由を祝して独り飲みがしたいので丁重にお断りした。ごめんよ。

「それじゃ、僕はここで」

「はい! 今後とも、運送ギルド『ねずみの隊列』をご贔屓(ひいき)に!」

「ああ、ありがとう」

「ガルトランドには百を超えるギルドがあります。たーのしーんでー!」

 メルと別れて、今後の予定を考える。

 帝都を追い出されて、行く先の候補はいくつかあった。

 リィトがここギルド自治区〈ガルトランド〉に来たのは、あ(・)る(・)目(・)的(・)のためなのだが──もう日が傾き始めている。

 まず、向かうのは居酒屋だ。

 この世界にはアイスはないが──ビールならある。


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