No.1ホスト、サスティナブル(笑)な悪役令嬢になる

俺はどうやら、泡を吹いたまま意識を失っていたらしかった。

目を開けると、俺の横には俺の事を心配そうに見つめる母がいた。目にいっぱいに涙をためてこちらを見ていた‥。父親はというと、母親ほど顔には出ていないもののずっと俺のベッドの周りをうろうろと徘徊してなんだか落ち着かない様子だった。


「‥お父‥様、お母様‥?どうしてこちらに?」

「あぁっ!!大丈夫なの?スカーレット?お父様も私も、貴女が泡を吹いて倒れただなんて聞いたからっ‥本当に心配したのよっ!!」


そう言うやいなや、母親は俺に抱きついてきた。余程心配だったらしく、めちゃくちゃに力を込められたものだから、こんな綺麗で、か弱そうなご婦人でもこんな力が出るのかと驚いた。あと、優しい石鹸みたいないい香りがした。


「心配かけてごめんなさい。でも、もう大丈夫なので‥」

「そうか、ならいい。腐ってもお前はルイス家の長女だ、体調管理は怠るな。」

「‥‥あなた、そんな言い方はないんじゃないの?」


今までの優しい聖母のような雰囲気とは打って変わって、いきなり母親は父親をキッと睨みつけた。父親の方は、面白いほどに様子が変わり、蛇に睨まれた蛙のようになった。なるほど‥これがこの夫婦の序列関係ってやつか。威厳のある風貌でいかにも亭主関白そうな感じだと思ってたけど、手綱を握っているのは母親の方らしい。


「ウッヴンッ!ま、まぁとにかく数日は大事をとって休みなさい。」

「ありがとうございます。お父様、お母様。」


姉が俺の事を悪役令嬢だとかなんとか言っていたが、やはり家族にはかなり大切にされていそうだ。

昔から、家族に心配されるのだけは苦手だったんだけどなぁ‥‥。

でも、あったかくて羨ましいと俺は思ってしまった。


それから数日後再び姉がいや、これからは流石に兄と言うべきだな、うん。兄貴が俺の元へ訪ねてきた。


「体調はどうなの‥?あれからこっちはとんだとばっちりを受けたんだけどぉ〜?お前が妹に無理をさせたんじゃないかって、母さんに叱られたじゃないか!あの人怒るとバチくそに怖いんだぞ‥」

余程母親が怖かったらしい。兄貴は俺の事をジトっと睨みながら恨みがましく言った。


「ご、ごめんって。それより、ここに訪ねてきた理由は何?」

「前回の続きっ!この世界について話そうと思ってさ〜。お前も気になるだろ?」

「もちろんだ!悪役令嬢がどうとか言ってたけどあれは一体どういうことだ?」


姉から聞いた内容は正直最悪すぎて、ヤケ酒を起こしそうになった。


要約すると、俺はまず「カラフル学園〜恋の彩りは突然に!?〜」というもう、名前からして地雷臭しかしない乙女ゲームのサスティナブル(笑)な悪役令嬢となってしまったらしい。

サスティナブルな悪役令嬢っていうのは何でも、どのキャラのルートを選んでも俺が転生した、このスカーレットってキャラが悪役として主人公の前に立ちはだかる事から来てるらしい…。持続可能な悪役令嬢、つまりはどんなルートでも主人公の恋路を必ず邪魔し続ける悪役令嬢ってわけ。いくらキャラ設定とかキャラデザとか考えるの面倒だからって、悪役を1人に集結するのはクソゲーすぎるだろ。スカーレット、一馬力とか流石に労働基準法違反レベルだろ。まぁ、この世界に労働基準法もクソもないんどけども。


これだけならまだマシなもんだった。この「カラフル学園〜恋の彩りは突然に!?〜」のクソゲー度はこんなもんじゃなかった。


勘弁してくれよ…俺はノンストレススローライフ系に転生したかったよ…。

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