No.1ホスト、邂逅する

やばいやばいやばい…落ち着け…俺は百戦錬磨のNo. 1ホストなんだ。そう、Sランクの痛客にだって完璧に対応できるホストなんだ。客の自殺未遂も、刺されそうになった時も俺のこの磨き上げたホストスキルで乗り越えたんだ…今回も同じだろ?朱音…。


「えっと〜こ、これは…」

「ちょ、何やってんだよ!スカーレットっ!いくら俺が、今度の社交会で女性との接し方について教えてほしいって頼んだからって今やる必要ないだろ〜あははは…」


俺の言葉に食い入るように、右側に座っている男が助け舟を出してくれた。見たところ、恐らく俺の兄ってところか。顔は母親似で女受け抜群の優しい隣のお兄さん、みたいな顔。なんで俺に助け舟を…?まぁ、とにかく今はこの助け舟に乗るしかない。


「そ、そうなの。お兄様にどうしてもって言われて気持ちが先走ってしまったわ…」

「そ、そう?次からは場所と時を考えてね。…それにしてもカーマイン、貴方が妹に頼み事をするなんて珍しいわね。」

「まぁ、たまにはね…」

ぎこちない兄の演技だったが、なんとか母親(仮)は納得してくれたようだけど、なんだ…?俺とカーマインだっけ、兄は仲良くないのか?それならどうして俺を助けたんだ…。

その後は特に問題もなく家族団欒とはいかないが、平和に食事を終えた。誰も喋る事はなく居心地は非常に悪かったが。

俺はというと、自分の部屋の場所がまだ分からないので、適当に嘘をついてまたあのメイドに付き添ってもらった。


「ふぅ〜…やっと着いた。この屋敷無駄に広すぎんだろ…絶対いらない部屋とかあるじゃん…」

「お、お嬢様?」

「あ、いや、なんでもない…わ。」


俺が抜けすぎてるのもあるけど、やはりこのメイド俺の専属(かは知らんが多分そう)だけあってなかなか鋭い。


コンコンッ!

「どなたでしょう?」

「俺だ、カーマインだ。」


カーマインだと!?…って誰だっけ?俺、女の子の名前はすぐに覚えられるけど、どうも男は流石にすぐには覚えらんないんだよな〜。まぁ、いいか。知らんけどとりあえず部屋に入れよ。なんか俺の転生先について知れるかもしれないしな。


「どうぞ、お入りになって。」


入ってきたのは、先程俺に助け舟を出してくれた俺の兄だった。なんだか様子がおかしい。俺のメイドの方をチラチラと見ているが、何か俺にだけ話したい事でもあるのだろうか。


「あ、お兄様と2人きりにして下さる?」

「かしこまりました。では、また何かあればいつでもお呼び下さい、お嬢様。」


パタン…

こうして俺は、兄(仮)と2人きりになってしまった…。野郎と二人きりなんてどうしたらいいか分かんねぇよ。でも、とりあえず食事の時の礼は言っておくか。家族だし、これからも付き合いは多分…あるだろうから。


「「あ、あのっ!」」

「「えっ!?」」

会話開始早々、兄とハモってしまった。これには兄も驚いた様子だ。これが姉ならどんなに良かったか…!野郎とハモってもクソほど…おっと少しも嬉しくない。

「お、お兄様、先にどうぞ…」

「あぁ、すまないな。それなら聞くが…変な事を言ってしまったらすまない…もしかして、スカーレットは…朱音、なのか?」

「な、な、なんでそれを!?!?」


ま、まずい。驚きすぎて変な声を出してしまった。ってか、なんでこいつ俺の正体、いや転生前を知っているんだ…?


「ンッウンッ!失礼…。それは、一体どういう事ですの?お兄様…。」

「………プッ!も、もう無理だ我慢できないっ!アハッハッハハハ!!ですの?ってお前、笑わすなよ〜。忘れちゃったのか?朱音ちゃんの美人で優しいお姉様の紅よ。」

「…え?こうねぇちゃん…?」

「アハッハハ!さっきから何?こうねぇちゃんなんて、久しぶりに聞いたわ〜。だからそうだって言ってるじゃない。私もこの世界に転生しちゃったの。

知ってる?この世界は乙女ゲーの世界で〜ってありゃ、ダメだ屍になってる。」


クソ姉貴もこの世界に転生してるだと…!?しかもまた、俺たちは姉弟なのかよっ!いや、正確には兄妹だけど…ってそんな事どうでもいい。これだけは言いたい。


何なんだよこれはぁぁぁぁ!!!

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