第13話
「彼は呪われてるんだ。生きる屍ってやつ」
「はい?」
「ソラ。君から説明してくれる?これから行動を共にするパートナーなわけだしさ?」
「…えーっと」
神妙そうな面持ちで口を開くと、すごくバツの悪そうな口調で、自分のことを説明し始めた。
なんでも、教官の言う「生きる屍」っていうのは、文字通りの意味だそうで。
「ゴホンッ。説明しても信じてくれるやつなんか殆どいないんだけど、真面目な話、俺はある「人間」の生まれ変わりなんだ」
「生まれ変わり?」
「生まれ代わりって言っても、来世とか前世とかって、そういうスピリチュアルな話じゃないぞ?俺は「壁」の向こう側から来たんだ。センターブルーにある、“死海“から」
私は絶句した。
それは彼の、「生まれ変わり」だって言う謎発言に驚いたからじゃない。
センターブルー。
この世界にいる人間なら、誰もが知っている言葉。
それは「言葉」というより、理に近いものだった。
世界の理、世界の秘密。
人々は、その“場所”のことをこう呼ぶ。
神々の住む場所だ、——と。
センターブルーというのは、西と東に分かれる大陸の中央に鎮座する、巨大な島のことだ。
そこは通称『死海』と呼ばれており、この星で唯一の”未開の地”と言われている。
なぜ未開の地なのかと言うと、その島は“見えない壁”で覆われていて、外からの侵入がほぼ不可能であるからだった。
初めてその「存在」が明らかになったのは、今から数百年も前のこと。
伝説の冒険者、ストーン・アーケードが、旅の手記にこう記していた。
『地平線の彼方に、世界の“影”が差し込んでいる。光に追いつけるものはまだ誰もいない。ただ、確かなのは、“全ての”時間に追いつけるだけのスピードが、風の中に吹いていること。空はまだ、雲を運んでいること。運命はまだ壊れていないのだ。そして、それにもかかわらず、星は回っている』
彼は死海に呑み込まれ、何十年も消息を絶っていた。
彼の死体が見つかったのは、消息を経って半世紀が過ぎた頃だった。
死体の見つかった彼の船には、ボロボロに朽ち果てた手記と、一枚の“写真”が。
その写真の向こうに映っていたのは、海の上に浮かぶ巨大な神殿と、緑の覆い茂る美しい島々だった。
写真の裏側には、こう書かれてあった。
“全ての時と空間が、融け合っている場所”、——と。
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