第12話



 人間じゃない…?



 何言ってるの?


 どこをどう見たって人間でしょ。


 頭にツノが生えてるわけでも無いし、尻尾だって伸びてない。


 肌の色、目の形。


 見れば見るほど人間だけど、どこが…?



 ジロジロ見すぎてたせいか、彼は気恥ずかしそうに頭をポリポリと掻いた。


 まさか、サイボーグ?


 いやいや、そんなはずない。


 サイボーグは瞬きをしたりしない。


 血管だって浮き出てないし、呼吸の仕方も人間とは違う。


 じゃあ、もしかしてダンピール?


 妖魔?


 それとも、シャーマン?


 

 …うーん



 「な、何だよ」


 「別に」



 頭を傾げていると、教官は言った。


 チョークを片手に持ち、黒板にスラスラと文字を書きながら。



 「『ゾンビ』、って聞いたことはある?」



 聞いたことはある、だって?


 ゾンビくらい知ってますよ。


 映画やゲーム、漫画にだってよく出てくるアレでしょ?


 …ってか、そんなの答えるまでもなくない?


 そう思い、あえて口にはしなかった。


 それくらい知ってます


 と、目では訴えた。


 逆に知らない人がいるんですか?って、聞きたいくらいだったから。



 「ごめんごめん。バカにするつもりはなかったんだ。巷で有名な「ゾンビ」は、“何らかの力で死体のまま蘇った人間の総称”だと思うんだけど、ここで説明する「ゾンビ」は、ホラーやファンタジー作品などに登場する存在とはちょっと違う。僕が言いたいのは、あくまで「屍」っていう意味であって」


 「それがどうかしたんですか?」



 …まさか、彼が「ゾンビ」だって言わないよね?


 ってか、急に何?


 屍がどうとかって、いつものくだらない話が出てくるわけじゃないよね?


 生憎、そんな暇じゃないんですけど。

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