第9話
教官が何者であれ、信用できない輩であることに違いはない。
犯罪者であろうがなかろうが、あの組織と繋がっている「可能性」がある時点で、私にとっては“国の敵”同然だ。
師匠を殺した黒装束の男も、その周りに蠢く組織の影も、『禁魔法術』を扱う国際的な捜査対象となっている犯罪グループだ。
【禁魔法術】。
それは、人の細胞を分解して錬成する人工的な魔力元素、【ブルーソケット】を体に埋め込み、先天的に備わっている魔法力を強化する禁術として、世の中に広く知れ渡っていた。
近年の重要な社会問題の一つでもあり、国際的な軍事情勢、及び安全保障理事会などでたびたび議題の中心となっている“禁止条例“の一つでもあった。
魔法科学機構が発表した内容によれば、禁魔法術によって強化された生物は肉体的な細胞の強化と魔法量の増大が見込める反面、寿命を大きく縮めてしまう危険性があるということが、自然科学の分野に於いて報告されていた。
そもそも「魔法」っていうのは、遺伝子科学的な研究によって発見された未知の物質、「C粒子」という素粒子から派生された原子構造上の複合物であり、生物の体(及び精神)を構成する化学結合の組織的な“分子間力”であることが、実験研究によって発表されている。
マナフィーブル(魔素)と呼ばれる元素力、及び、あらゆる物質組成上の素子(パーツ)を形作っている細胞ネットワークのことを、——通称、”生体分子ネットワーク”と呼んでいる。
魔法量、つまり『マナ』と呼ばれる魔力の化学的性質には様々な形態が存在し、その種類には限りがない。
元々、私たちには生まれつき“魔子“という細胞エネルギーが内包されていて、この星に住むあらゆる生物や種族の歴史を紐解いていく中で、全ての形や性質が「不可分の小さな粒子からできている」という【原子論】を共有していることに、様々な分野から議論されてきた。
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