第8話


 「情報をくれるっていう保証は?」


 「この前話した通りだよ」


 「あれじゃ信用できませんね。第一、あなたが“味方”である可能性ですら、怪しいですし」


 「ははっ。参ったな」



 あの組織とどんな関わりがあるにせよ、教官が一介の「教員」じゃないことはわかっていた。


 私が調べた情報では、彼は世界環境保安機構(WES)が掲載する「10大最重要指名手配犯(ブラックリスト)」の第4位である“ウィリアム・トッド”を父に持ち、暗殺を家業とするトッド家の一員として、生まれた時から暗殺者として育てられた経歴があった。


 そして、“彼は自分の兄弟を手にかけた”、という噂も。



 「…なあ、味方じゃないって、どういう…」



 ポカンとした表情で、ソラはこっちを見てくる。


 この人は何も聞かされてないんだろうか?


 教官がどういう人なのか、どんな経歴を持っている人か、学園でもよく話題に挙がっている。


 女子たちの間では、端正な容姿に、長身かつスタイル抜群の外見からか、“闇社会の貴公子”というダークヒーロー的な側面で人気を博しており、ニッチなファンクラブもあるっぽい。


 私はそういうのに興味はないけれど、教官が“ただの一般人”じゃないということは、さまざまな方面からも話題になっていた。


 この学園にいれば、少なからずそういう“声”を耳にするはず。


 3年も在籍してるなら、尚更。



 「君も、僕が“犯罪者”だと思うのかい?」


 「あなたが犯罪者かどうかには興味はないですが」


 「じゃあ、どうして?」


 「何がです?」


 「僕のことを信用できないっていうのは、そういう意味じゃないのかい?」


 「私はあなたが、この「国」の敵である可能性を考えてるんですよ。犯罪者であるという以前に」

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