第5話


 「でも、結果として出れて良かったじゃないか。僕の見立てでは、もう少し時間がかかると思っていたんだが」


 「おいおい、今の聞いた!?“教師”としてどうなんだ??今の発言は!」



 うるさいなぁ


 どうって聞かれても回答に困るんだけど。


 遅刻したのは自分のせいじゃないと言いたげだった。


 あなたの身に何が起こったのかなんて知らないし、どうでもいい。


 そんなことより、早く話を終わらせてくれない?


 ここに来たのは、あなたと話をするためじゃなくて、丁重にお断りするためなんだから。



 「君の”特性”を再確認しておきたくてね。君を閉じ込めたあのボックスは、いわば複雑な魔力回路で組み上げられた2段階認証の“檻”だ。魔力を持っていない君は、どう足掻いても出られないはずなんだけど、やはり「噂」は本当だったようだね」


 「だから言ったじゃないですか!試すまでもないって」


 「物は試しというだろ?それに、これから君たちに伝える“仕事”は、ただの生徒に任せられるような代物じゃない。危険が伴うんだ。それも、とびきりのね」



 まるで、これが「決定事項」であるかのように話す。


 話は聞くだけ聞こうと思い、ここに来ていた。


 だけど、元々断る気でここに来ていたのも事実。


 教官の話を遮りたくて、咄嗟に切り出した。



 「あの」


 「ん?」


 「話を折るようで申し訳ないんですが、元々“任意”でしたよね?この話」


 「そうだね」


 「だったら、今この場で言わせていただきますが、今回の仕事はパスさせて頂きます」


 「話を聞くだけ聞いてみるんじゃなかったのかい?」


 「そうですが、気が変わりました。帰ってもいいですか?」



 

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