第8話
誰かがこちらに近づいてくる。1限の準備をしながら身構えた。「佐藤さん、藍です。部活動の件なんだけど、やるからには、1番でないとね」そう言ってはにかむ一見好青年に見えるこの藍という男は、出席番号1番、新入生代表、うちのクラスの委員長、毎日1番最初に登校、幼い時からやっているテニスは最近では負け無しの全国1等賞、それにイケメンという文武両道、金声玉振で、わたしのような何者でもない有象無象の1からすると、眩しい存在である。
「そうだね。藍くんが手伝ってくれるなら、最高の部活ができそうだよ、ありがとう」わたしは不細工な笑顔をした。「気にしないで、協力と言っても知り合いに入ってくれないかと促すだけだから、大したことじゃないし。しかし人助けをする部活なんて、進藤と佐藤さんは人格者だね」眩しい笑顔にクラス中の女子が色気づく雰囲気がする。そんなことより。「はあ、え?、ひとだすけ?」「ぇえ?、まだ聞いてなかったの?、だいじょぶかな、、はは」困ったように、先行きが不安だと言わんばかりの渇いた笑いをする藍くん。「おはよう。おお!もう話しているじゃないか!真、昨日言っていた協力してくれる藍だぁ」そうじゃない、そうじゃないだろぉ..!、どうしてわたしも気づかなかったんだ..馬鹿すぎる。「進藤。今藍くんが教えてくれなければ、わたしは他クラスに目標も内容も決まっていない白紙の提案しに行くところだったぞ、気づかなかったわたしも馬鹿だけど、言えよぉ」「あぁ、ごめんごめん、それはそうと、お前がそんなに動こうとしてくれることが嬉しいぞぉ!、我が支援部は邁進する!」こいつ、勘違いしているんだな。「進藤聞け、その支援部はお前だけのものじゃない、わたしもいる。お前は何もかも自分で完結までもっていこうとしているようだけど、この部活に関しちゃわたしの意志に反することをしようとしたら止める。報連相をわたしとし合って邁進していかなきゃならない、だから、LINEを交換しないか、」こういう線引きはしておかなくてはいけない、わたしの中にもこの部活に対して責任感が生まれているのだから、進藤に任せ切りでは、わたしがわたしを許せない。それをわかって欲しかった。「そうだな。頼りにするぞ、これから。」進藤は、深い声で、覚悟を決めるように、そう言った。きっと、わたしを信頼するに努めることを心に決めたのだ。人が人を信じることは、難しい。「良いチームになりそうだ。このチームに置いても遜色ないような個性君に声かけてみるよ」藍くんがまとめにかかるように言った、もうすぐ1限が始まるから。邪魔するなよ、エデュケーション。
本日の音楽の授業、合唱。「緊張するよぉおお」そう言って震えてビビっているのは、バレちゃんだ。河野 アルバ ヴァレリア。わたしの1つ前の席にいる綺麗な子、露とのハーフらしく、肌が白い、こいつも眩しい。音楽の時間は大抵この子と隣どうしで受ける。そして後ろの席には、ドヴォルザーク、もとい、和倉千登勢。この子はオーラがすごい、背中が痒い、つまらなそうに授業を受けている。協力者の1人だと聞いたけど、未だその話はしていない、授業が終わったら聞いてみよう。
授業終了。今日の合唱は、「信じる」を歌ったが、ドヴォルザークの歌声は、迦陵頻伽であった。素晴らしかった。歌声が綺麗だと感動したのは、初めての経験だった。皆に持て囃される彼女はバツが悪そうにしていたが、もっと誇ってもいいと思う。それくらいに、彼女は美しかった。しかし、彼女は授業が終わって間もなくスタスタと教室を出てしまう、絡み難い、もっと愛想を良くしてくれ、カタブツめ。
追いかけた。追いかけて話かけた。すると、「協力というか、私は入れないけど、そういう提案に乗ってきそうな人知ってるから、変なやつだけど、今度そいつ紹介する」どんだけ変なやつが来るんだ。楽しみじゃないか。ドヴォルザークより1人、藍くんが最低1人獲得してくれれば設立可能人数に達するのだけれど、不安なのでとりあえず昼、軽いプレゼンを他クラスで行うことにする。勇気は充分、人は確固たる目標のためならば、奮い立つことができる。やってやるさ。
真 -進化- @Amanoru
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