第7話

最近、進藤がこのクラスの中心人物に見える時がある。ほぼ、いやクラスの全員と自由気ままに話している。わたしの前の席の人気者の河野さんはともかく、進藤が?なんだこの現実、わたしだってみんなと話したい、と、恨めしく思っていたのだが、それはどうやら、この部活動新設という目標を達成するために、進藤があらかじめ動いていた結果らしい。聞くと、とりあえずクラスメート全員に、入部しないか、入部しなくとも協力してくれそうな人を紹介してくれないか、と声をかけたらしい。そしてその内2人が協力してもいいよと言ってくれたそうだ。和倉さんと藍さん。これを聞いた時、わたしは進藤の本気を感じた、いや、短い期間だがこの男についてわかったことがある、進藤佐一は、やると決めたことにフルスイングができる男なのだ。わたしはそうではなかったから、無意識下で部活動新設を本気で実現しようとしていなかった、わたしはいつも気がつくのが遅い。内観、内省した。

よし、反省は終わった、あとは実現に向けて勇気凛々執行するのみ。明日は手始めに、他クラスに話を持ちかけに行ってみよう。今日の議論は終幕。

なんだか気張って決意を胸に押し込めたせいで、眠気を蹴散らしてしまった。時刻は23時頃、そういえば地震があったな。ニュースでも見よう。スマホで検索。

(スキャンダル、国会、為替、地震、田舎特集、流行、米の大統領選挙、戦争)

ふん。地震の震央は都で被害はなし、どうやら停電もしていない、しかし規模がM3で最大震度4。都はこの国の首都だ、被害がない方が不自然じゃないだろうか。

何はともあれ明日だ、明日。進藤の意見も聞いてみよう。おやすみ。


おはよう。朝からクラスのオカルティズムが昨日の地震について議論を交わしている。詳細な震源地が露わになっていないこと、震央が沖ではないこと、まあ色々おかしな点があるらしく、わたしはこういう話を聞くといつも思ってしまう、どうせ人の犯したミステイクが誤解を産んでいるだけだ。やれUMAだの妖怪だの、どうせ平凡なアニマルズや人が正体なのだ。わたしたちより遥かに聡明な人らが親切心でそれを言っていないだけなのだ。本当は何もかも科学で解明できているだろう。真実を隠すことで人の想像力や好奇心を掻き立てるというのは、心理テクニックの1つである。

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