『お前のせいだ』


『ごめんなさい…』


『大切な時に、何をしてくれたんだ…』


『すみません、』


『誤って許されるわけないだろ』



「……っぃ、」

 息の詰まる感覚で目が覚めてしまった。いつまでたってもこの感覚は慣れないし気分が悪い…

「まだ3時、」

 はっきりとは覚えていないが、パソコンにしばらく向かい合った後ベッドに入ったのは1時を過ぎていたはず。2時間も寝られなかったのに、心拍の速度が速すぎて再び寝ることもできなくなってしまった。結局また机に向かい、パソコンを開くか教科書を開くかを選ぶことになってしまう。お母さんは今日は夜勤でいないので、迷惑をかける心配もない。こんな調子を続けていれば、また陸に心配をかけることになってしまうのに…

 まぁ運よくというか今は急ぎで仕上げたいこともあるし、学校までの時間をつぶすことはできそう。気が向けば、机の上で寝ればいいし。


 田中さんから、次の小説の内容をそろそろ決めたいとの話が来ていた。ある程度の構成は決めているけれど、イマイチ凄みが足りないというかなんというか…というところで悩んでいる。



「…あれ?」

 4時を過ぎたあたりで、マナーモードにしてあった携帯に通知があった。何と相手はふーがさん。

”今度食べたいものある?”

 朝起きるの苦手だと前に話していたのに、こんな時間に連絡があるという事は…

”おはようございます。今日はお仕事ですか?”

”食べたいもの考えておきますね!”

 ミュージックビデオの撮影があると、夜中をまたぐことがよくあると前に言っていたので、多分仕事なんだろう。芸能人って大変なお仕事だなぁ…


”なっちゃん起きてたの⁉”


 と返信。まぁそうなりますよね。


”はい、目が覚めてしまったんで…”


 そう返事をすると、すぐさま返事…ではなく電話がかかって来た。


「…もしもし?」

「あ、出た!おはようなっちゃん」

「おはようございますっ」

「前々から聞いてはいたけど、本当に早起きだね…もしかして俺のメッセージで起こしちゃった?」

「あっ、違いますよ?元々起きてたんで大丈夫です!ふーがさんはお仕事でしたか?」

「うん、さっき終わったとこなんだよね」

「お疲れ様です!」

「ありがと。なっちゃん寝なくて大丈夫なの?今日も学校でしょ?」

「そうなんですけど、1回覚醒しちゃったら寝れなくて…それに今日お母さん夜勤で家にいないんで、今寝たら寝坊する気がします」

「そっか…」


 こんなことを言ったらふーがさんが何とも言えない気持ちになってしまう事に気づいて、言った後で後悔した。


「でも、早起きしてたおかげでふーがさんと奇跡的に電話できて嬉しいです!今日1日乗り切れますっ!」

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