”映画めっちゃよかった!今外出て来てんけど、どうしたらいい?”
”エントランスの左に非常階段あるから、そこから入ってきて!”
映画の上演が終わった後、なっつんを関係者室まで誘導した。そして俺の隣ではソワソワしている奴が1人いる。
「あ、来たで。なっつん…」
「なっちゃんー!久しぶりー!」
俺が呼ぶよりも先に、隣にいた咲がなっつんに飛び込んでいった。
「うげっ苦しっ…咲久しぶりやなぁ。またデカなった?」
「うん!5センチ伸びた!」
「成長期凄っ…あ、陸~」
咲に絡みつかれながらこちらに手を振ってくる。咲は昔から彼女のことが大好きすぎる。周りに人が居るときは誤解されるのを防ぐために自制させているが、この状況になると普段の歯止めが利かなくなる。まぁ確かに、彼女は可愛いうえに優しいからなぁ。しょうがない。
「はいはい咲いったん離れろ~。なっちゃん久しぶりやね、またどんどん可愛くなってんちゃう?」
「お久しぶりです!尚君おじさんみたいなこと言わないでくださいよ~」
今回の映画では、メンバー3人での出演。俺たちのグループは6人いるのだが、全員彼女とは仲が良いのだ。
「映画めっちゃ面白かったで!陸があんなにさわやかイケメンの役が似合うとか知らんかってんけど…」
「俺毎日さわやかイケメンのつもりで過ごしてたんやけど、ちゃうかったん…?まぁ、ありがとう」
「お前なっちゃんに褒められて照れんなよ!」
「いや、幼馴染に褒められたらこっぱずかしいっすよ…」
運よくなっつんは咲に埋もれてこっちの話など聞こえてないようだった。彼女はいつも人を褒めるときだけ恥ずかしげなく馬鹿正直になるので、毎回反応に困らされるのである。この性格のせいで、何人の男が沼にはまって来たのか…
「ちょちょ、1回咲離れる!これ、お土産。3人ともチーズケーキ好きやったよね?」
「えっ、もしかしてなっちゃんの手作り?」
「はい、美味しいとは思うんですけど…」
「やったぁ!僕なっちゃんの作るお菓子めっちゃ好き。ありがとう~」
離れていたはずの咲がまた彼女にへばりついていた。
「ありがとうなっつん、美味しくいただくわ」
「うんっ。あと、陸にはこれね」
渡された紙袋の中には、ノートと本が何冊か入っていた。
「私は別のノートにまとめてるから、提出する日までに返してくれたらいいよ?」
「…マジで助かる。ありがとう」
テスト範囲であるノートが足りていなかったので、その分を彼女から見せてもらう事になっていたのだ。字がきれいなので男子友達から借りるより遥かに分かりやすく見やすい。仕事で出られなかった分の授業はいつも彼女のノートで埋めさせてもらっている。
そして一緒に入っている本は、なっつんおすすめの本だ。読書家なので、読みたい本の系統を言ったらすぐにチョイスしてくれる。これも昔からの恒例行事だ。
「…お前ら付き合ってないのが俺的には不思議なんやけど?」
「何でっすか。仲良すぎる幼馴染ですよ」
咲に絡まれている彼女の耳には届いていない。まぁ別に聞かれててもいいんやけど。
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